亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

Archive for the ‘ドイツ語’ Category

デーテの言い訳

07.27.2015 · Posted in ドイツ語

Sie besann sich also nicht lange, sondern sagte mit großer Beredsamkeit, heute wäre es ihr leider völlig unmöglich, die Reise anzutreten, und morgen könnte sie noch weniger daran denken, und die Tage darauf wäre es am allerunmöglichsten, um der darauf folgenden Geschäfte willen, und nachher könnte sie dann gar nicht mehr.

直訳するならば、

彼女は長く熟考するのでなく、すぐに雄弁に話した、今日は旅行を始めるには、 残念ながらまったく不可能です。明日もやはりそうとは思いません。そしてその翌日も、 次の仕事のおかげでますます不可能です。そしてその後もまったくよけいにダメです。

矢川澄子訳だと

デーテはそこで、たいして考えるひまもなく、さかんにまくしたて始めました。「ざんねんながら、きょうはとても旅行には出られませんし、あしたとなると、なおのこと都合がつきかねます。あさってはまた、のっぴきならない用事で全然見込みがありませんし、そのあとはもう、どうにもなりませんのでね。」

まあ、自由自在に訳しているということもできるし、 独自の文体に翻案しているともいえる。 der darauf folgenden Geschäfte を「のっぴきならない用事」 と訳すのは、かなり脚色されているとは言えまいか。 「のっぴきならない」とか「緊急の」という意味のことはどこにも書いてないのだから。

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Heidis Lehr- und Wanderjahre

07.27.2015 · Posted in ドイツ語

Herr Sesemann verstand die Sprache und entließ die Base ohne weiteres.

直訳すれば、

ゼーゼマン氏はその言葉を理解し、その叔母をあっさりと解放した。

矢川澄子訳だと

ゼーゼマン氏は、デーテの本心をさっして、そのままひきとらせてやりました。

となる。 なるほど流暢な訳ではあるが、 原文の雰囲気を伝えているとは思えないなあ。

ohne weiteres 簡単に。

デーテのことを原文では Dete、die Dete、die Base Dete、die Base などと書いている。 Base は南ドイツで叔母、もしくは女のいとこを言う。

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Johanna Spyri

04.02.2015 · Posted in ドイツ語

ハイジは

1880年に出版された前半部分 Heidi’s Lehr und Wanderjahre (元祖ハイジ)

1881年に出版された後半部分 Heidi kann brauchen,was es gelernt hat (ハイジ続編)

に分かれており、 元祖ハイジの著者は

Von der Verfasserin von “Ein Blätt auf Vrony’s Grab”

つまり、「フローニの墓に一言」の作者としか記されていないのに、 ハイジ続編は Johanna Spyri という実名で書かれている。 普通は元祖ハイジが非常に売れて人気が出たので匿名をやめてハイジ続編から実名を使ったのだと考えられている。 あるいはこの時点でシュピリは商業主義に転向したのだと。

しかし実はそうではない。 最初に実名で書いたのは 1880年の Im Rhonethal (ローヌの谷で)である。 Im Rhonthal で Johanna Spyri は

Verfasserin von “Verschollen, nicht vergessen”

つまり、1879年に出版された Verschollen, nicht vergessen(失踪したが忘れられてはいない人)の作者であると紹介されている。

また、1880年に出版された Aus unserem Lande (私たちの土地から。Daheim und wieder draussen と Wie es in Wildhausen zugehtの2編を収録)では、単に Johanna Spyri と著者名が記されているだけである。

Im Rhonethal はチラ見しただけだが、やはり病気の子供が死ぬ話である。 なぜこの作品からシュピリは実名を明かしたのだろうか。

Verschollen, nicht vergessen には、

Ein Erlebniß, meinen guten Freundinnen, den jungen Mädchen

と副題がある。 「meinen guten Freundinnen」「den jungen Mädchen」いずれも明らかに3格であるから、 「私の良き友に、また若い娘たちに語りたい一つの経験」 というような意味だろう。 おそらくこれも童話ではなさそうだ。 いや小説ですらなく、実話かドキュメンタリーだったはずだ。

1878年に書いた Heimatlos は明らかに童話である。 しかし、1879年に書いた Verschollen, nicht vergessen や、1880年に書いた Im Rhonetal は童話ではなかった。 もし童話であれば誰かが邦訳したにちがいない。

シュピリがほぼ完全な童話作家となったのは1881年からということになり、 それ以前から実名で作品を書いていた、 ということについては少し考察が必要だ。

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Erde der Hand

04.02.2015 · Posted in ドイツ語

Wie ein zarter Fremdling stand sie unter den übrigen Bergblumen, als gehöre sie einem andern Lande an und harre still und blaß auf fremder Erde der Hand, die sie versetzen würde nach dem heimatlichen Boden.

auf fremder Erde der Hand とは何かと思うではないか。 手の土地? そんな言い回しがあるのか? 違うのだ。

sie harre der Hand, die sie versetzen würde

でひとかたまり、つまり、「それはそれを移し替えてくれるような手を待ち望んでいる」と訳すのだ。 harren は2格支配なので、der Hand は2格ということになる。Hand は女性名詞なのでこれを die で受けているのだ。

still und blaß auf fremder Erde

でひとかたまり。「見知らぬ土地の上で静かにひっそりと」と訳すべきなのだ。

gehöre sie einem andern Lande an

これはつまり

sie angehöre einem andern Lande

という意味だ。

als という接続詞の訳も難しいけど、als ob (as if)のように訳しておけばよかろう。 でまあ全体としては、

一人のよそもののように、それは他の山の花たちのなかに立っていた。まるで、それはよその土地に属しており、見知らぬ土地の上で静かにひっそりと、それを移し替えてくれるような手を待ち望んでいるかのように。

とでも訳せば良いのだろうが、これではくどすぎるから、もう少し滑らかに意訳するべきだろう。 ちなみにgoogle翻訳で英訳すると

Like a delicate stranger she stood among the other mountain flowers, as they belong to another country and wait for still and pale on foreign soil by hand, which would enable them after the native soil.

となるのだが、やはり der Hand 以下がうまく訳せてない。 シュピリがわざとそういうややこしい言い回しをしたからだ。

こうやって一個一個理詰めで訳しているときりがない。 しかもほんとにそれであっているのかどうか、確証も持てない。

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Ihrer Keines vergessen

04.02.2015 · Posted in ドイツ語

ドイツ語が異様に難しいのだが、例えばヨハンナシュピリの小説のタイトル、

Ihrer Keines vergessen

高橋健二というドイツ研究者はこれを「彼らの一人をも忘れず」と訳している。

たぶん、Ihrer = Keines vergessen なのだと思う。 あなたたちのこと。すなわち、何も忘れないこと、なのだ。 他に文法的に解釈のしようがあるだろうか。

Ihrer は2格であろう。だから名詞としては「あなたたちのこと」。

Keines も2格であろう。

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