日本の電子書籍

[マンガ抜きに、電子書籍は制覇できない](http://toyokeizai.net/articles/-/11724?page=5)

> おそらく、ベゾス氏が期待しているのは、出版社提供の電子書籍の売り上げからマージンを得るビジネスではない。本命は、アメリカで成功した「キンドル・ダイレクト・パブリッシング」だろう。すでに、アメリカではここからミリオンセラーを出す作家が誕生している。

今、kindleがどうしたこうしたと言っている人のほとんどは、ずっと昔から出版業界にいる人だと思うのだが、
既存業界が、アマゾンにマージンを取られつつ、収益を上げられるとはとても思えない。
既存の紙媒体のコンテンツを電子化する手間。
けっこうやばいと思う。

たとえば私はできるだけ本は買いたくないから図書館で借りてくる。
しかし中には、電子書籍として新たに金を払っても買いたいものもある。
たとえば岩波文庫『日本外史』とか。
丸谷才一『後鳥羽院』とか。

『後鳥羽院』文庫化されたよね。
丸谷才一が死んだからかな。
でも kindle 版が出ない。
kindle 版で丸谷才一検索してもほとんどみつからない。

既存の出版社がまるごと kindleに本を出せば多少賑わうだろうね。
それは kindleにとっては良いことだ。
でもそういうことは今後もないんじゃないか。
kindle だけだと誰も幸せになれない。
kdp で個人が直接出版する時代が来ないと。
長い年月と、ノウハウの蓄積が必要だ。

出版業界以外の人で kindle が、といっているのは一部のプロの作家と一部の同人作家。
私はそのどちらでもない、たぶん。
非常な孤独を感じる。

最初から電子書籍にできる形で入稿すればよい。
最初から電子書籍でも出力できるワープロにすればよい。
しかし未だにたいしたワープロはない。一太郎ですら。
シェアという意味では microsoft word が正式対応してくれないとどもこもならんと思う。

アマゾンは正しいし、アメリカの先行事例のようであるべきだ。
英語だと読者が数十億いるからミリオンセラーが出てきてもおかしくない。
kdp やるならほんとは英語で書くべきなんだろうね。
日本語では読者は一億人くらいしかいない。
どうするよ。
死ぬ気で英語の小説読んで、自分でも英語で一から小説書いてみるか?
ていうか日本史にしろ世界史にしろ英語で書いた方が絶対売れるのは、言うまでもなくわかっている。
さらにいえば、別に日本人だけに読んでもらいたいとも思ってないし、日本人向けに書いた内容でもない。
いやしかしね、自分の書く英語が世界に通用するようなもんじゃないことは、自分で知ってる。

> 日本の電子書籍市場は、昨年時点で629億円。そのうちの約8割がエロ系漫画を中心とした漫画コンテンツだ。この市場は日本独特のガラケーによってできあがったものだが、キンドルは漫画を読む端末としては優れていない。

確かにガラケーはエロ漫画端末としては優れてただろうね。
そういう需要もあるだろうが、
活字を読みたい人ってそんなに少ないのかね。
みんなが漫画、それもエロ漫画を読みたいかね。

kdp というメディアには kdp に適したコンテンツを作ればいいだけじゃね。
既存のメディアや業界のことをあれこれ言っても仕方ないと思うんだけど。

[電子書店はみな赤字?](http://mayer.jp.net/?p=1678)

で、日本の弱小電子書籍が軒並み撤退する。
全部 DRM で保護されているから、読めなくなる。
なんなんだよそれは。
また、PC-98 や MZ の歴史を繰り返すのかね、日本は。
あほか。
ていうかソニーはどういうつもりで電子書籍始めたのだろうね。
とりあえずかね。

紙の本と KDP と同人誌

[KDPと、本屋と同人誌即売会の境目が無くなった空間](http://colorfullife.hatenablog.com/entry/2013/03/24/091039)

> 「同人誌即売会で”個人が作った本”を買って読む」という同人誌特有の楽しみ方(読書体験)が、KDP本にあるかないか。

ええっと。
いやそれはないです。
少なくとも私にはない。
同人誌買いに行かないし、自分。

あなたがいて私がいて、私の本があります、とかそんな売り方したいんじゃないし。
他の人はどうか知らんが。

本屋は本屋です。

同人誌は KDP と似てる。
同人作家の中には KDP 的なものを志向するする人、つまり、ごく即物的に、ネットで勝手に自分が書いたものを通販出来ればそれで良い、
と思う人もいるかもしれん。
同人誌とかうざいが KDP なら対面販売する必要もないし、とか思う。それが私。

即売会で偶然面白い本に出会う、ということを私はしない。
その場にいかなければ買えないとか出会えないというようなことを求めてない。
少なくとも今までの人生でそんなことしたいとまだ思ったことがない。
MMORPG とかもやらん。
やるとしたらもっぱらシングルプレイヤーのゲーム。
アマチュア無線も免許は取らされたが好きになれんかった。
関係あるかどうかしれんが。

ネットは24時間365日いつでもどこでも買える。アマゾンがキンドルやめない限り、絶版もない。
電子書籍は何十年も何百年も残る。
私が死んだあとも私の著書は残る。
もしかしたら私が死んだあとに人気出るかもしれん。
だから KDP やっとる。

損益分岐点(取らぬ狸のなんとやら)

またどうでも良いことをうだうだ書くわけだが、
ぼちぼち売れてたりするといろいろ考える。
KDPで1000部くらい売れれば、趣味というか同人活動としては上出来だと思うが、一冊250円印税70%で売ったとして、
17万5千円。
小遣いにはなるが出版だけで飯を食っていくことはできないわけです。

1万部売れれば175万円。
まあ、田舎の親の実家に一人暮らしならなんとかなるレベルか。
でも毎年コンスタントに1万部売れればの話だがね。
副業には十分になる罠。
1日に3冊売らなきゃ。けっこうきびしいなあ(笑)

5万部売れれば、875万円。
これなら食える。
家族もなんとか養えるかも。
でも毎年5万部ずつ、自分が死ぬまで、子供が成人するまで売るってことは相当な売れっ子だよね?

とか計算してみると印税だけで食えるというのはよっぽどの売れっ子なわけだ。
たとえ印税70%だとしてもだ。
印税10%だと KDP の7倍売らにゃならんよ。
つまり、毎年毎年 35万部も売らにゃならん。
けっこう厳しい。それは難しいと思う。
余生40年あるとして、トータルで1400万部も売らにゃならん。
普通にあり得ん。
なんかねもう。

要するに内容が面白いかどうかはさておいて、
10万部とか100万部とか売らなきゃ儲けは出ない。
出版社で編集とかマーケティングとか取り次ぎとかやってれば。
損益分岐点を超えさえすれば飯が食える。
超えなきゃ食えない。
世の中つまるところただそれだけ。

営業さんとか編集さんとか美術さんとか装丁さんとか取り次ぎ小売り、倉庫、印刷所。
税理士や弁護士さんや行政書士。
マネージャーやアシスタント。
作家と役割分担した方が良いに決まってる。
投資した分返ってくりゃ、実はなんでもいい。
でもな、作家デビューできなきゃそもそも意味ないわけで。
で、たぶん私がつっこみたいところは絶対売れ筋ではない。
いろんな人を巻き込めば損益分岐点超えられない。
しょうがないから一人でやるしかない。
DTPだってそうでしょう。
もともとそうだったでしょう。
で、一応できちゃう人はいるわけで、世界中にはそれこそ出版業界にかかわってない人の方がかかわっている人よりずっとおおいわけで、
そのうちのほんの一握りでも業界抜きで成功しちゃったら世の中変わらざるを得ない。
自分が成功しなくてもきっと誰かが成功する。

少量生産で採算がとれる。
無料キャンペーンとか誰でも利用できる広報手段でそれなりに読んでもらえる。
で、それで目立った人はそれなりに評価されて、
作家活動とは微妙に次元の違う仕事を切り分けられて、
編集さんがついたり美術さんがついたり、営業さんがついて、
そうしてほんとうのメジャーになれる。
そうこなくちゃ、わざわざ KDP やる意味ない。
インディーズだってそうじゃん。

今 KDP やって目立ってる人、そこそこ売れている人はもとは紙の本の世界にいた人で、電子もやっている。
それじゃあ世の中変わったとは言えない。
書く人も読む人もみんな最初から電子な時代が来てやっと変わったといえる。
そんな時代は、いつになるかしらんが、必ず来る。

KDPでなんとか食えるということになれば見えてくる世界がまるで違ってくる。
食えないとなれば今までと世界は何も違わない。

あー、つまり、商業作品作りたくないわけではない。
売ることを前提に作りたくない、というわけでもない。
今の流通にのらない、なじまないなら自分でやりましょというだけ。
現在の出版システムに適応できる人はそうすりゃいいだけ。
社会に適応せず媚びも売らずに自分の本を売りたいだけ(笑)

『将軍家の仲人』無料キャンペーン

KDP で定期メンテナンスというのをやったせいだと思うのだが、
この作業自体はアメリカ太平洋標準時で夜中の10:00から11:00という短いものらしいのだが、
その前後に処理が溜まるらしくて、KDP 激重。
予期せぬエラーがでまくる。
フラストレーション溜まる。

それで今度は『将軍家の仲人』無料キャンペーン中。
90日に5日、無料キャンペーンできるから、18作品そろえてりゃ、いつもどれかをキャンペーンできることになる。

『超ヒモ理論』と『スース』を合冊したのを出す。
もともと山崎菜摘名義でパブーに無料公開していたもの。
もう準備はできている。
初の短編集ってことで、話ごとにセクションとか入れたかったのだが、
うまくいったりいかなかったり。よくわかんねー。
一太郎がもっと epub との親和性を高めてくれたらいいのに。
つかね、一太郎のユーザインターフェイスってさ、
GUI以前からのものが割と混ざってるよね。
マウスで選択して右クリックメニューでとかそういう操作があんまりないんだ。
開始位置をクリックとかそんなのが多い。
なんじゃそりゃって。
DRMは短編なので外す予定。

知り合いにマックユーザーが居て、美術関係のミステリー小説を書こうとしているらしい。
アートミステリー?
だけどマック版一太郎がないから epub 出力どうしようとか言ってる。
マックユーザーで一太郎使いそうな人って、いそうにないよな。
そもそも一太郎ユーザーって何、みたいな。
黒田清輝が面白いらしいですよ?
薩摩藩士で貴族院議員。洋画家で東京美術学校教授って辺りが。
うむ。たしかになんか面白そうだな。
ネタ的には十分面白そうなんで後は文章力構成力だわな。
コンセプトだけで読みたい気がしてきた。

つかね、epub 専用エディタがあればいいだけなのよね。
ちょっとしたマークアップがあればいいだけなんだがね。
ルビとセクション。
それで縦書きできればいいのよ。
あと、改ページ、字下げ、上寄せ下寄せ、傍線、箇条書きはいるかな。
とにかくめっちゃシンプルなテキストエディター欲しいわな。
も少し epub が普及すれば誰かががフリーソフトで出すと思う。
そんな難しいものであるはずがない。
プレインテキストエディタで html でタグうちして出力でもいいんだがね。
epub コンバータがお利口さんならね。
いや、それでもね、一太郎って和文打つにはそれなりに使いやすいんでね。
一太郎がやってくれるんならそれでもいいんだが。

『アルプスの少女デーテ』と『セルジューク戦記』はパブーに残そうと思ってる。
kindleでも同時に出すかもしれんが。
その場合、『セルジューク戦記』は、パブーでは100円、kindle では99円にすると思う。
つまりパブーの印税は70%。kindle は印税35%。
『デーテ』はもうこのまんま無料にしとくつもり。
そうすると、アマゾンがちゃんと見付けてくれれば、kindleでも『デーテ』は無料になるはず。

『将軍家の仲人』は実はけっこう書き足してあるのよね。
宮将軍辺りのところが。
堀田正俊は綱吉と幸仁親王のどちらが次期将軍となるか、
というところで重要な役割を演じ、結局綱吉をサポートした功績で大老にしてもらったのだが、
宮将軍を望んだのは実は家綱。
幸仁親王は後西院の皇子なので、実は天皇に即位することもあり得た。
幸仁親王が家康の血を引いているかどうかはグレー。
まあ、小説だからどっちでもありっちゃありだが、赤の他人の宮様に将軍になってもらう、
という話が、いきなり持ち上がるのには何か裏話があってもおかしくないわな。

幸仁親王の祖父にあたる後水尾院は、根っからの武家嫌いなんで、幸仁親王が天皇に即位するのも将軍になるのも嫌がった。
そこで後水尾院は堀田正俊を通じて綱吉を将軍にし、
後西院を弟の霊元天皇に譲位させることによって、家康の子孫を天皇にするのも回避した。
このことによって正俊は綱吉と後水尾院の二人に恩を売るが、
後西院、幸仁親王、そして家綱恩顧の家臣に恨まれることになり、
稲葉正休の私怨という形で殿中で暗殺される。
稲葉も口封じに消される。
いずれにせよ、綱吉と正俊は当時あまりに近すぎて、他の老中には邪魔な存在だっただろうから、
正俊の暗殺は稲葉一人の仕業ではない、黒幕は老中たち、綱吉もあらかじめ知ってたと考えるのが自然だろ。

こういう陰謀事件は町人が浄瑠璃や歌舞伎なんかにしちゃうと絶対弾圧されちゃう。
うやむやにされちゃって歴史的にもなんか知名度低い。
一方赤穂浪士事件なんかは裏がない、すかっとした、突発的事故だったから、町人がおもしろおかしく話題にしても、
幕府は放置していた、それであんなに大流行した、
実際にはそんな大した話じゃない、と言えるのではなかろうか。

そもそも、後西院の兄の後光明天皇の急な崩御もあやしい。
後水尾天皇もなんかめっちゃあやしい人だし。
幕府と朝廷の間に当時いろんな陰謀があったのではなかろうか。
とまあ、めちゃめちゃおどろおどろしい話になってしまった。
もともとそんなふうにしたてるつもりはなかったのだが、
思いついたらつい書きたくなるもんです。

吉野南朝

南朝の都は吉野城、つまり吉野山の金峯山寺にあったかと漠然と思っていたが、実はもっと南の奥吉野、天川村の天川弁財天社あたりなのだった。飛鳥時代の吉野宮というのは東の方、吉野川をさかのぼって菜摘とか宮滝とか言われる所にあった。

思うに、金峯山寺というところは確かに修験者の拠点ではあったかもしれないが、城とするにさほど適した場所ではないように思う。千早城や赤坂城にしても同じ。天川村というのはものすごい山奥だ。こんなところに入り込まれたらとても攻めがたかっただろうと思う。