クララ

びびりなのでときどきドイツ語原文を読み直したりしているのだが、

> »Ja,« erwiderte sie, »sehr lange und tief krank war ich an Leib und Seele.«

> 「ええ、」彼女は答えた、「とても長く深く、私は体も心も病んでいた。」

この部分、本の中では

> 「ええ、とても長い間、とても重い、体と心の病気を患ってた。」

と訳している。
会話中に erwiederte sie とか sagte sie(彼女は言った)のような短い言葉が挿入されることが非常に多いのだが、
これはヨハンナの癖というよりは、
ドイツ文にはよくあることのように思える。
現代日本文としてはやや違和感あるし、文脈上書かなくてもわかるので、全部省くことにした。
しかし、

> »Klara,« sagte ich nun, »hast Du die Krankheit durchmachen müssen, an der wir Marie damals so elend sahen?«

の nun ような語が付加されている場合には、省かずに

> 「クララ、」私はまた言った、「あなたはもしかしてマリーが苦しんでた頃からもう心身を病んでいたの?」

などと訳した。
ところでこのクララという女性なのだが、
もちろん「ハイディ」に出てくるクララとは名前が同じだけなのだが、
どうもヨハンナの友人というよりはヨハンナ自身がモデルなのだろうと、
私にはますます思えてきた。

数年間、心も体も病んでいて、音信不通で、しかもある詩人に失恋していた。
何千もの「知性の泉」の水を汲んで飲んでみたが、何の役にも立たなかった。
友人に聖書を薦められても納得がいかなかった。

ヨハンナが結婚してチューリヒで暮らしはじめ、
子供が生まれるまでの間、ヨハンナ自身がそういう状態だったのだろうと思えるのだ。
親しい女友達の「私」とは、
コンラート・フェルディナント・マイヤーの妹、ベッツィー・マイヤーであったかもしれない。
ベッツィーのほうがむしろ、ヨハンナよりは信心深かったかもしれない。

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