ヨハンナ・シュピリ初期作品集

ヨハンナ・シュピリ初期作品集

* 価格 1800円(税別)
* ISBN 978‐4‐7734-1000-6
* 著者 ヨハンナ・シュピリ(訳・田中紀峰)
* 発売日 2016/2/27
* 四六判(130mm×188mm) ソフトカバー 292ページ
* 発行 夏目書房新社
* 販売 垣内出版

初版第一刷の誤記・誤り等

p. 4 (p. 49 も同様)

> できるだけうまく話してみまし

→ みまし

p. 55 (p. 232 も同様)

> DAHEIM UND FREMDE

→ DAHEIM UND IN DER FREMDE

p. 85 (p. 240 も同様)

> AUS FUÜHEN TAGEN

→ AUS FRÜHEN TAGEN

p. 210

> 直訳すれば「地上の小さな寝床に憩え(zur Ruh ein Bettlein in der Erd)」

Paul Gerhardt の[Nun ruhen alle Wälder](https://de.wikipedia.org/wiki/Nun_ruhen_alle_W%C3%A4lder)
に見える句だが、

> Nun geht, ihr matten Glieder,
geht hin und legt euch nieder,
der Betten ihr begehrt.
Es kommen Stund und Zeiten,
da man euch wird bereiten / zur Ruh ein Bettlein in der Erd.

該当箇所を訳すと

> さあ、行け。おまえたち、疲れきった手足よ
行って横たわれ
おまえたちが望んだ寝床に。
時がやってくる、
そこに、地上の寝床に休む準備をしよう

「bereiten zu 物」で「物を用意する」、の意味。
だから、できるかぎり直訳すると「地上に用意された休息の寝床」となるか。
だから本文中の「直訳すれば」は余計か。
man euch の euch は再帰代名詞だと思うが、特に訳さなくてよいか。

p. 220

> Freude die Fülleあふれる喜びと
> Und selige Stille 至福の静けさ
> Darf ich erwarten 私は待っている
> Im himmlischen Garten, 天国の園で
> Dahin sind meine Gedanken gericht’. 私の考えが裁かれるのを

Darf ich erwarten は「私は待っていてもよかろうか?」のように推量疑問、もしくは
「私は待っていたい」のように願望として訳すべきだろう。

Dahin sind meine Gedanken gericht’ は「そこへ(dahin)私の思いは向けられている(sind gerichtet)」と訳すべきだった。

p. 287

> アルトゥールとリス

Squirrel は「リス」ではなくて女の子の名前である。
無理にドイツ語読みすれば「シュクヴィレル」とでもなろうか。
Arthur も「アートゥア」などと記した方が良いかも知れない。

p. 288

> 1890 Cornelli wird erzogen

「コルネリは育てられる」
これとその前の

> 1889 Was aus ihr geworden ist

「彼女は何になったか」
は別の年に出た別の本。
「彼女は何になったか」は 1887年の

> Was soll denn aus ihr werden?

「彼女はどうなるべきか」の続編 (Fortsetzung)。

これら三つの本の説明がごっちゃになっている。

その他

表紙に書かれている

Frühe Erzählungen von Johanna Spyri, die Verfasserin des «Heidi»

だが、これは(出版社に頼まれて)「ヨハンナ・シュピリ初期作品集」というタイトルを私が独訳したものであり、それ以上の意味はない。
原著名は Verirrt und Gefunden (1872) ですが、のちに Aus dem Leben (1900) と改題・微妙に改訂されて再出版されている。

Verirrt und Gefunden と Aus dem Leben の違いは、
次のテキスト(ただし Ein Blatt auf Vronys Grab のみ)の差分を取るなどして確かめてみてください。

* [Ein Blatt auf Vronys Grab 1883](http://tanaka0903.net/libroj/Vrony_1883.txt)
* [Ein Blatt auf Vronys Grab 1900](http://tanaka0903.net/libroj/Vrony_1900.txt)

思うに、ゲーテに Aus meinem Leben, Dichtung und Wahrheit という自伝があり、
またヨハンナによって書かれた夫の伝記 Aus dem Leben eines Advocaten (ある弁護士の人生から)があることから、
ヨハンナ自身によってその死の直前に Aus dem Leben と改題されたこの書名には、これが自伝の代わりであることがほのめかされていると思われる。

参考

* Johanna Spyri geb. Heusser projekt gutenberg DE
* Johanna Spyri projekt gutenberg
* [e-rara Johanna Spyri 文献](/?p=18475)
* [堅信礼の贈り物](/?p=18643)
* [「ハイディ」邦訳疑惑](/?p=17598)
* [シュピリ ヨハンナ](/?p=14107)
* [デーテの言い訳](/?p=17566)
* [フローニ他](/?p=18305)
* [Heidis Lehr- und Wanderjahre](/?p=17564)
* [ラガーツ温泉](/?p=8919)
* [ラガーツ温泉2](/?p=8928)
* [ひたすらハイジを観る。](/?p=1113)
* [Johanna Spyri](/?p=17402)
* [アルムおじさん一家の謎](/?p=10140)
* [Geißenpeter](/?p=9782)
* [unten と oben](/?p=8940)
* [アルムの小屋のトイレの謎](/?p=1115)

Visited 1 times, 1 visit(s) today

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA