亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

新撰和歌 巻第二 夏・冬 荓四十首

05.17.2016 · Posted in 新撰和歌

121 我がやどの 池のふぢなみ さきにけり 山郭公 いまやきなかむ

122 たつた山 にしきおりかく 神なづき いぐれのあめを 立ぬきにして

123 時鳥 花たちばなに うちはぶき いまもなかなむ こぞのふるごゑ

異本歌、ほととぎす花橘に香をとめて鳴くはむかしの人や恋しき

124 神な月 しぐれはいまだ ふらなくに まだきうつろふ かみなびのもり

125 五月には なきもふりなむ 郭公 まだしきほどの こゑをきかばや

126 かみな月 しぐれの雨は はひなれや きぎのこのはを 色にそめたる

127 さ月まつ はな立花の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする

128 みやまには あられふるらし とやまなる まさきのかづら 色付きにけり

129 卯のはなも いまだちらぬに 郭公 さほのかはらに きなきとよます

130 神無月 時雨とともに かみなびの もりの木の葉は ふりにこそふれ

131 いそのかみ ふるきみやこの 時鳥 こゑばかりこそ むかしなりけれ

132 故郷は ならのみやこの ちかければ ひとひもみゆき ふらぬひぞなき

133 おもひいづる ときはの山の 郭公 からくれなゐの ふりいでてぞなく

134 ふゆさむみ こほらぬ夜半は なけれども よし野のたきは たゆるよぞなき

135 足引の 山郭公 けふとてや あやめの草の ねにたててなく

136 梅のはな 雪にまじりて みえずとも かをだににほへ 人のしるべく

137 なつの夜は ふすかとすれば 郭公 なく一こゑに あくるしののめ

138 ゆきふれば 木ごとに花ぞ さきにける いづれをむめと わきてをらまし

139 めづらしき 声ならなくに 時鳥 そこらのとしを あかずもあるかな

140 ゆふされば さほの川瀬の かはぎりに ともまどはせる ちどりなくなり

141 なつ衣 たちきるものを あふ坂の せきのしみづの さむくも有るかな

142 浦ちかく ふりしく雪を しらなみの すゑのまつ山 こすかとぞ見る

143 ほととぎす まつに夜ふけぬ このくれの しぐれにおほみ 道や行くらむ

144 冬くれば あやしとのみぞ まどはるる かれたるえだに 花のさければ

145 つれもなき なつの草葉に おく露は 命とたのむ せみのはかなさ

異本歌、くれがたき夏の日ぐらしながむればそのこととなく物ぞかなしき

146 ふる雪は 枝にもしばし とまらなむ 花も紅葉も たえてなきまは

147 つれづれと ながめせしまに 夏草は あれたるやどに しげくおひにける

148 くらぶ山 こずゑも見えで ふる雪に 夜半にこえくる 人やだれぞも

149 なつの夜を あまぐもしばし かくさなむ 見るほどもなく あくる夜にせむ

150 しら雪の ふりてつもれる 故郷に すむ人さへや おもひきゆらむ

151 夏の夜に しもやふれると みるまでに あれたる宿を てらす月かげ

152 雪のうちに 見ゆるときはは みわの山 道のしるべの すぎにやあるらむ

153 せみのこゑ きけばかなしな なつごろも うすくや人の ならむと思へば

154 けぬがうへに またもふりしけ 春霞 たちなばみゆき まれにこそ見め

155 いまさらに みやまにかへる 郭公 こゑのかぎりは わがやどになけ

156 冬ごもり はるまだとほき 鴬の すのうちのねの きかまほしきを

157 とこなつの はなをしみれば うちはへて すぐす月日の ときもしられず

158 昨日といひ けふとくらして あすか河 ながれてはやき 月日なりけり

159 夏の夜は まだよひながら 明ぬるを くものいづくに 月かくるらむ

160 ゆくとしの をしくも有るかな ますかがみ 見るわれさへに くれぬと思へば

Comments are closed