「まし」と「なまし」と「てまし」

「まし」と「なまし」と「てまし」だが、よく似ている。

「まし」は推量または反実仮想の助動詞。未然形接続。

「なまし」は完了の助動詞「ぬ」の未然形+「まし」。連用形接続。

「てまし」も完了の助動詞「つ」の未然形+「まし」。連用形接続。

「ぬ」と「つ」では、「つ」の方が主観的意志が強い。「ぬ」は自然現象が完了した、という意味が強いが、
次第に混同されるようになった。なので、伊勢物語の

今日来ずは明日は雪とぞ降りなまし消えずはありとも花と見ましや

が、「なまし」のもともとの使い方で、「降ってしまったに違いない」の意味。

鴬に身をあひかへはちるまてもわか物にして花は見てまし

これも反実仮想の意味が強い。「見る」とか「奉る」などの人間の動作に「てまし」が付くのが本来のようだ。

ただ「てまし」も「なまし」もただ「まし」でも代用可能だから、
歌の長さ合わせには便利と言えるかも知れん。

たとえば、「なり」に続けて「ならまし」「なりなまし」「なりてまし」などとなるが、
「なりてまし」の用例はない。「なる」のは意志ではなくて自発だからだろうか。

思ひいでてとふ事のはをたれみまし身の白雲と成りなましかば

梅がかをそでにうつしてとどめては春はすぐともかたみならまし

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