「山田君。すまんが、本を買ってきてくれないか。」とゼミの教授に頼まれた。 「本は、生協に注文すればいいんじゃないですか?」研究費で図書を購入するときは、本の卸問屋だろうとアマゾンだろうと、大学生協を通して注文すれば良いはずだ。教授はいつもそうして、欲しい本を毎年何冊も買っていた。 「いやそれがね、」と教授が言うには、「出版社で絶版になっていて、今から注文すると入荷が三ヶ月後になってしまうんだ。そうすると年度をまたいでしまって今年度の予算で買えない。」 「はあ。それで。」「ネット通販のサイトで、中野の古本屋に在庫があることがわかったから、そこに直接行って、現金で支払って、領収書を書いてもらってきてほしいんだ。宛名は東京文化大学、但し書きは書籍代で。」 「どんな本です?」 「どんなって?」 「重くないですか。」 「ただの新書だよ。大してかさばりもしないし重くもない。」 俺は古本屋巡りするのも悪くないなと思い、教授に貸しを作るつもりでその頼みを引き受けた。 続く