それはKさんの家の後ろにある二百坪ばかりの畑だった。 Kさんはそこに野菜のほかにもポンポン・ダリアを作っていた。 その畑を塞いでいるのは一日に五、六度汽車の通る一間ばかりの堤だった。 ある夏も暮れかかった午後、Kさんはこの畑へ出て、もう花もまれになったポンポン・ダリアにハサミを入れていた。 すると汽車は堤の上をどっと一息に通りすぎながら、何度も鋭い非常警笛を鳴らした。 同時に何か黒いものが一つ畑の隅へころげ落ちた。 Kさんはそちらを見る拍子に「またニワトリがやられたな」と思った。 それは実際黒い羽根に青い光沢を持っているミノルカ種のニワトリそっくりだった。 のみならず何かトサカらしいものもちらりと見えたのに違いなかった。 しかしニワトリと思ったのはKさんにはほんの一瞬間だった。 Kさんはそこに佇んだまま、あっけにとられずにはいられなかった。 その畑へころげこんだものは実は今汽車に轢かれた二十四五の男の頭だった。
第4話終わり 第5話に続く