サダト

僕は今までサダト大統領というのは良く知らなかったのだが,今回映画を見てよーく,わかった.アラブとイスラエルの戦争の歴史もついでにかなり把握できた.僕が今まで知ってたことといえば,六日間戦争くらい.イスラエルのいわゆる電撃戦で,アラブ連合軍に対して圧倒的な勝利を収めたということ,イスラエルは少数だが強く,アラブは多数だが弱い,という見方が定着した戦争のことだ.

ついでだから中東戦争のおさらい.第一次の発端は,1948 年のイスラエル共和国宣言.24時間以内に,エジプト,シリア,ヨルダン,レバノン,イラクの,アラブ連盟諸国がパレスティナに進軍.1949 年に停戦協定成立.このとき,Judea と Samaria (ヨルダン川西岸)がヨルダンの支配下になり,Gaza (地中海沿岸エジプト寄り)がエジプトの支配下に入り,エルサレムは分割され,旧市街を含む東半分がヨルダンの支配下に入った.

第二次は,いわゆる 1952 年のスエズ動乱で,エジプトのナセル大統領がスエズ運河を国有化したことに始まる.ナセル大統領は,ユダヤ人にスエズ運河を使わせないつもりだったので,イスラエルがシナイ半島に進軍,続いてイギリスとフランスが介入.アメリカの仲介で停戦.

第三次は,1967 年のいわゆる六日間戦争.

第四次は,1973 年で,これはエジプトの失地回復のための報復戦のようなもので,サダト大統領が総司令官だった.贖罪の日を選んだ奇襲攻撃,大敗はしなかったものの,アラブ側が相変わらず劣勢だった.サダト大統領はこれ以後単独でイスラエルと和平交渉を始め,1978 年のキャンプ・デービット合意を経て,イスラエルと平和条約締結.シナイ半島がエジプトに返還された.イスラエルのベギン首相と一緒にノーベル平和賞をもらったりしている.しかし,単独講和を認めないアラブ過激派によって,サダト大統領は 1981 年に暗殺される.

僕が見た映画は 1983 年にアメリカで作られている.シナイ半島がエジプトに返還された直後に制作されたということで,歴史映画というよりドキュメンタリーのような性格のもの.アメリカ映画とは思えない(笑),スピルバーグとキャメロンに毒されたハリウッド映画とはまったく違う,とてもきっちりときまじめに作られた,感動的な映画だ(スピルバーグも歴史物は作るけどね…).

誰がなんのために作ったのか気になるが,アメリカにはユダヤ人勢力強いからユダヤ人の援助もあったかもしれないし,キャンプ・デービット合意はカーター大統領が唯一成功した政治劇だったから,カーターや民主党も手を貸してくれたかもしれないし,そもそもノーベル平和賞をもらったくらいだから,どこかの慈善家がお金を出したのかもしれないね.でも「聖戦」のことを crusade と言ってたのは変だったなあ.アラブ人が crusade って言うわけないじゃん.アラブ人が赤十字なんて言わないのと同じ理屈だよ.やっぱアメリカの砂漠でロケして,アメリカ人を役者に使って,アメリカ人の脚本家が書いたシナリオで作った映画なんだろな.妙に親米的だったり,共産党やソビエトを嫌ってたり,サダトがアメリカのマスコミをほめるシーンがあったり,やっぱどこかアメリカ的な脚色が入ってるんだよね.あと,アラブ語はほとんど出てこない(インシャラーくらい)のに,ヘブライ語の会話はたくさん出てきた.これも,ユダヤ人が映画制作に深く関わってることを意味してるような.そもそも,サダトという題材を選ぶこと自体,ユダヤ寄りなんだよね.サダトの妻はイギリス人だったりして,ものの考え方があまりアラブ的じゃない.
それにアメリカ人やユダヤ人が,サダムやカダフィやアラファトやホメイニを主人公に,
わざわざ映画作ったりはしないだろう.