椿三十郎

ラストシーンで,お互い立ったまま向き合って抜き打ちで勝負を決するのがあるが,あれは明らかに西部劇の決闘シーンの影響だろう.あのような「立ち合い」が一般的であったとは思えない.居合は「後の先」と言って先に抜かせることを良いことのように言ったりもする.これは西部劇にもある考えだが,向こうのは正当防衛ということをいいたいのだろうか.日本に正当防衛という考え方があったのだろうか.ちょっと信じられない.

追記: 居合いは、不意打ち、だまし討ちのたぐいであって、つまり暗殺剣の集大成であって、あのように立ち会いで使われたとは、やはり信じがたい。少なくとも、一対一の決闘というものが、もし起こりえたとしたら、きっと江戸時代になった後だろうが、それすらあったとは思えない。やくざの出入りだって集団戦だったはずだし、喧嘩に勝つには必ず加勢を頼むものだ。

一対一というのはやはりマカロニウェスタン的演出だろう。

サダト

僕は今までサダト大統領というのは良く知らなかったのだが,今回映画を見てよーく,わかった.アラブとイスラエルの戦争の歴史もついでにかなり把握できた.僕が今まで知ってたことといえば,六日間戦争くらい.イスラエルのいわゆる電撃戦で,アラブ連合軍に対して圧倒的な勝利を収めたということ,イスラエルは少数だが強く,アラブは多数だが弱い,という見方が定着した戦争のことだ.

ついでだから中東戦争のおさらい.第一次の発端は,1948 年のイスラエル共和国宣言.24時間以内に,エジプト,シリア,ヨルダン,レバノン,イラクの,アラブ連盟諸国がパレスティナに進軍.1949 年に停戦協定成立.このとき,Judea と Samaria (ヨルダン川西岸)がヨルダンの支配下になり,Gaza (地中海沿岸エジプト寄り)がエジプトの支配下に入り,エルサレムは分割され,旧市街を含む東半分がヨルダンの支配下に入った.

第二次は,いわゆる 1952 年のスエズ動乱で,エジプトのナセル大統領がスエズ運河を国有化したことに始まる.ナセル大統領は,ユダヤ人にスエズ運河を使わせないつもりだったので,イスラエルがシナイ半島に進軍,続いてイギリスとフランスが介入.アメリカの仲介で停戦.

第三次は,1967 年のいわゆる六日間戦争.

第四次は,1973 年で,これはエジプトの失地回復のための報復戦のようなもので,サダト大統領が総司令官だった.贖罪の日を選んだ奇襲攻撃,大敗はしなかったものの,アラブ側が相変わらず劣勢だった.サダト大統領はこれ以後単独でイスラエルと和平交渉を始め,1978 年のキャンプ・デービット合意を経て,イスラエルと平和条約締結.シナイ半島がエジプトに返還された.イスラエルのベギン首相と一緒にノーベル平和賞をもらったりしている.しかし,単独講和を認めないアラブ過激派によって,サダト大統領は 1981 年に暗殺される.

僕が見た映画は 1983 年にアメリカで作られている.シナイ半島がエジプトに返還された直後に制作されたということで,歴史映画というよりドキュメンタリーのような性格のもの.アメリカ映画とは思えない(笑),スピルバーグとキャメロンに毒されたハリウッド映画とはまったく違う,とてもきっちりときまじめに作られた,感動的な映画だ(スピルバーグも歴史物は作るけどね…).

誰がなんのために作ったのか気になるが,アメリカにはユダヤ人勢力強いからユダヤ人の援助もあったかもしれないし,キャンプ・デービット合意はカーター大統領が唯一成功した政治劇だったから,カーターや民主党も手を貸してくれたかもしれないし,そもそもノーベル平和賞をもらったくらいだから,どこかの慈善家がお金を出したのかもしれないね.でも「聖戦」のことを crusade と言ってたのは変だったなあ.アラブ人が crusade って言うわけないじゃん.アラブ人が赤十字なんて言わないのと同じ理屈だよ.やっぱアメリカの砂漠でロケして,アメリカ人を役者に使って,アメリカ人の脚本家が書いたシナリオで作った映画なんだろな.妙に親米的だったり,共産党やソビエトを嫌ってたり,サダトがアメリカのマスコミをほめるシーンがあったり,やっぱどこかアメリカ的な脚色が入ってるんだよね.あと,アラブ語はほとんど出てこない(インシャラーくらい)のに,ヘブライ語の会話はたくさん出てきた.これも,ユダヤ人が映画制作に深く関わってることを意味してるような.そもそも,サダトという題材を選ぶこと自体,ユダヤ寄りなんだよね.サダトの妻はイギリス人だったりして,ものの考え方があまりアラブ的じゃない.
それにアメリカ人やユダヤ人が,サダムやカダフィやアラファトやホメイニを主人公に,
わざわざ映画作ったりはしないだろう.

タルコフスキー

タルコフスキーという映画監督がおもしろいというので,いくつか借りてみた.「惑星ソラリス」はずいぶん前に見たので今回は借りなかった.話せば長いことながら,富田勲の「宇宙幻想」というアルバムを中学一年生の頃聞いた.その最後に富田勲が編曲した「惑星ソラリス」があった.で,スタニスラフ・レムの原作「ソラリスの陽の下に」(のハヤカワの和訳)を読んだり,ビデオを借りて見たりした.原作の方を先に読んだから,というのは,僕が高校生の頃までビデオレンタルというのはほとんどなかったからだが,映画がそれほど優れたものだとは思わなかった.だけど,その映画の監督だと言えば多少は期待がもてるというもの.

さて,「僕たちの村は戦場だった」と言うのをまず見たのだが,これはずいぶんダークな映画だ.12才の少年斥候兵が戦後ドイツ軍に絞首刑になったことがわかるというオチ,少年とその妹が無邪気にみずべで遊ぶラストシーン.みなきゃよかったと思った.それから,「アンドレイ・ルブリョフ」という二本組の長編だが,これは途中であまりにも退屈なのでみるのをやめた.

ポーランドの森を思い出した.僕は1994年くらいにポーランドに国際会議で出かけたのだが,会場が森の真ん中の少年自然の家みたいなところだった.お金がかからないようにと気をきかせてくれたのだが,僕たち日本人ならワルシャワの一番高いホテルに泊まってもぜんぜん平気だっただろう.その方が観光もできてよかったのに,森の中じゃ退屈きわまりなかった.ポーランドの子供たちが屋内プールで泳いでいるところを眺めてもおもしろくない.楽しみは夜パブでビールを飲むくらいだった.毎日,食べたこともないようないろんな種類の雑穀を食べさせられた.森と言っても日本の雑木林のようなウラジロやヨモギやそういった下草がほとんどなくて,白樺みたいな木の幹がすっとのびていて,どこまでもどこまでも歩いていける恐ろしい空間だ.迷い込んだら出られなくなるだろうな.

ムッソリーニ

「ムッソリーニ」という映画を借りる.
イタリア映画的美しさがある.
しゃべってるのは例によって英語だが.
これ見てると,ムッソリーニって,それほど邪悪な政治家ではない.
と思えてくる.
イタリアという,類まれに自由奔放な国で.
個人主義的な国で.
怠惰で.退廃的で.
政治的にはぐちゃぐちゃで.
そんな国で 1922 年に 39 才で首相になった,ムッソリーニというおっさん.
これだけでも他の独裁者,たとえば,スターリン,
ヒットラーなどとは性格的に違うものになって当然だと思える.

汽車を時間どおりに走らせようとしたり,
密造酒を取り締まったり,
昼寝をやめさせようとしたり.
すっかり堕落した古代ローマ人の末裔を勤勉な民族に変えようと思えば,
多少手荒な手段は必要だっただろう.
でもラテン人をピューリタンのような勤勉な民族に作り変え,
イタリアを第 2 のローマ帝国にしたてあげる,というのは,
もともと無理があったような気はする.

ドイツという,がんらい謹厳実直な気風の国に,
ファシズムが台頭し,
ヒットラーという精神的にいびつな人間が指導者となったのは,
イタリアにとって不幸なことだっただろう.
ヒットラーはムッソリーニにすりよってきた.
ヒットラー政権.ムッソリーニに遅れること 11 年.
ヒットラーはムッソリーニを尊敬していたが,
ムッソリーニはヒットラーを気にいらなかったようだ.
結果的にイタリアはドイツと同盟し,
日本も調子にのって同盟してしまった.
うーむ.なんという不幸だろうか.

豪姫

豪姫という映画を借りて見た.原作は富士正晴という人だ.富士正晴なんて誰も知らないと思うが,伊東静雄関連で知っていた.で,先にその文庫本を買って読んだのだが,カバーに宮沢りえ主演で映画化されたということが書いてあったので,それでその映画の存在をしったのであった.

思ってたよりはずっと良くできた映画だった.すじがきはかなり原作に忠実で,ごく地味なもので,なんでこんなもんを映画化したのかと思うくらいで,まあ宮沢りえの絶頂期だからこそできた冒険のようなもんかもしれん.でも私はこの映画は好みだなあ.地味な中に戦国の美しさが現れている.

仲代達也が古田織部の役なんだが,なんとも恰好良い.「大地の子」や「秀吉」の仲代達也も良かったが,この「豪姫」の仲代達也も,実にかっこいい.

Sword of Gideon

「ギデオン」というのを借りた.原題は Sword of Gideon.これは,ミュンヘンのオリンピック村で起きたテロに報復するために,その 7 人の首謀者に対して,モサドが 5 人の刺客を送る…という話.

ミュンヘンのオリンピック村のテロ事件というところまでは,少なくとも実話なのだろう.1 人がその場で射殺され,11 人が人質になったが,ドイツ軍の強行突入作戦が失敗し,11 人全員が手榴弾で爆死するという凄惨な結末になった.字幕で「スパイ」と訳されているところは英語では secret agent とか agent of Mossad などと言っていた.

ギデオンといえば,国際ギデオン協会の聖書が有名だ.ホテルにもよく置いてあるし,私が学部生のころは大学でときどきただで配っていた.ちょっと気になったので調べてみたら,ギデオンというのは士師記に出て来る人で,イスラエル人がミデアン人に支配されていたときに現れた預言者(指導者)とのこと.ミデアン人はイスラエル人に征服され,そののち再起することができず,またギデオンが生きている 40 年間イスラエルでは平和が続いたそうだ.

さて,ギデオンには 70 人の子供がいたが,そのうちの一人のアビメレクという人が,自分の兄弟を皆殺しにして王になった.ただしヨタムという人だけが逃げて助かり,アビメレクを呪った.しばらくしてアビメレクは彼を王に立てた民と不仲になり,その民を攻めている途中に,ひとりの女が落した石臼に頭蓋骨を砕かれて死んだそうだ.ふーん.

嵐が丘2

なかなか面白い.これは,キャンディキャンディとか赤毛のアンとか(赤毛のアンは実は読んだことも見たこともないが :-P)よりもむしろシドニーシェルダンに似ている.penguin books の本も借りてくる.ビデオも借りて来る.しかしこの映画はとんだデキソコナイだ.借りて損した。