丸括弧の最後の句点の省略について。

たとえば、

私はこれこれと思った(たいへん困ったことではあったが)。

とは書くけど、

私はこれこれと思った(たいへん困ったことではあったが。)。

とは書かない。たぶん、英文でもそうだ。 丸括弧の場合には、センテンスの中にセンテンスが埋め込まれた形になり、 どちらも独立したセンテンスであるから、最後に句点なりピリオドを打つのが理屈しては正しいが、 句点が二つ並ぶのはいかにも目障りだから、括弧の中の句点を省くのであろう。

しかし、セリフに使うカギ括弧の最後の句点を省くのは、やや意味が違う。 昔、小学生の頃、句点と閉じカギ括弧を原稿用紙の同じマスに書くよう指導されたことがあるような気がする。 複合した記号のように解釈していたということかな。

まれには、

私はこれこれと思った。(たいへん困ったことではあったが)

とか

私はこれこれと思った。(たいへん困ったことではあったが。)

と書くこともあるかもしれん。あまりよろしくはないが。

追記。永井荷風は『濹東綺譚』で

「すみませんね。ほんとうに。」

などと必ずカギ括弧閉じる手前の「。」は略さない。これはわりと珍しい。おそらく永井荷風は強い意志でそれを出版社に対して通したのだと思う。

私が今書いているものでいうと、

「飲食を菲(うす)「」(うす)うして孝を鬼神に致す(自分が食べる分を減らしてお供え物を多くする)」(「泰伯」)、「未だ人に事(つか)()(つか)ふる事(あた)はず、(いづく)んぞ(よ)く鬼に事へん」(「先進」)。

などのようにかなり複雑な「」と句読点を使っている。とにかくややこしいので、とりあえず省略したほうがよさそうなものは省略している。