風月延年とは自然の情景を借りて寿命を延ばす芸能、つまり申楽のことである。能楽で最も古い演目、翁の舞などがまさにそれだ。また連歌師の宗祇は「言の葉の 道こそうけれ さらでやは 心の際を 人に知られむ」と詠んだ。ただ詞を定型に羅列したものを歌というのではないのだ。歌を詠むからには何かの目的がなければなるまい。世阿弥にとって歌は芸能の飾りであり、宗祇にとって歌は己の心を人に知られるための手段であった。詩歌とそれ以外の言葉の区別はまさしくここにある。人真似をして、或いは理屈で、場合にはよっては計算機で自動生成して、それらしき五七五七七を作ることはできよう。しかしそれは、歌のようなもの、それらしきもの、歌の形をしたまがい物に過ぎないのである。