中国と台湾

アダムは今月中に中国が台湾をミサイルで攻撃するという.今月中に中国と台湾が戦争を始めるかどうかという話であるが,第二次大戦後,中国が攻めた国といえば韓国,チベット,ベトナムで,いずれも地続きで,わーーと人海戦術で攻めたのである.そのうち本当の意味で勝てたのはチベットくらいしかないのである.台湾は韓国くらいには強いであろう.戦争しても勝てるかどうかわからないような相手と戦争するとは思えない.それに,台湾もミサイルは持っていて,上海はおろか武漢まで届くのだそうだ.中国が台北にミサイルをうちこめば台湾も上海にミサイルをうちこむだろう.どちらも被害甚大である.ベトナムを攻めてたころの中国には失うものなどなかったが,今の中国には戦争を仕掛けたことで失うものが多すぎる.だから戦争なんておこりようがないのである.中国はソビエトと同じで自分よりずっと弱い国しか攻撃しない.歴史的に.と思うのだが.

それに,攻めるぞ攻めるぞといってるときは攻めないで,黙っているときに急に攻めるのが戦争というものだ.そもそも奇襲なんてことができる国は50年前のドイツと日本くらいだ.アメリカなんかは,あれは議会でさんざん議論してからしか戦争ができないから,短期決戦はできるかもしれないが,奇襲なんてことはやりたくてもできない国である.そもそもアメリカは奇襲が下手なうえに,失敗すれば国民に批判されるから正攻法でやるしかないのである.アメリカなら,議会で戦争しますよ,と決まれば本当に戦争するだろう.だが,中国なら,人民会議で戦争するぞ,と言っていても戦争するとは限らない.それだけならただの脅しにすぎない.中国が戦争しようと思ってるなら,黙って国境に軍を集めるだろう.

何かで読んだ話だが,中国と台湾の関係にアメリカは介入するかどうか,という質問に対して,アメリカは介入しないと言えば中国は野心を抱くかもしれない.朝鮮戦争のときがそうだった.助けると言えば台湾は安心して中国を挑発するだろう.だから,アメリカの態度が不確定であることが平和をもたらすのだ,とアメリカの政府高官がこたえたという.一般人にはしり得ない駆け引きがあるに違いない(新聞の小さな記事まで注意深く読んでいるとある程度まではわかると思うのだが).

※アダムというのは当時同僚だったポーランド人。

ふたごのピータン

きのうとある居酒屋でピータンを注文したら,なんと黄身が二つ入っているやつだった.ピータンじたいあまり普段は食べないが (というか,居酒屋にピータンがあるのは珍しい),黄身二つというのは初めて食べた.もちろん,黄身といっても例のように,濃い藍色になっていたが.

ピータンを食べながらビールを飲むと口のなかがなんとなく甘ったるくておいしくないことがわかった.

上海交通大学に見学にいったときのこと,構内の掲示板にいろいろな新聞がはってあった.壁新聞がはってあるのではなくて,普通の新聞をばらして一面ずつ順にならべてはってあるのである.日経の本社ビルの壁にも日経新聞が同じようにはってあるよね.

掲示板の前を歩きながら読んでいくのだが,人民日報だけは誰も読まないらしくて,前に誰も立っていなかった.人民日報はうそばかり書いてあるので,誰も読まないのだそうである .

ある中国人の話であるが,かつて人民日報は,日付と天気予報以外はうそばかり書いてあった.そのうち,天気予報もうそを書くようになった.というのも,その日の最高気温が 35度以上になると会社が休みになる決まりなので,記事をごまかしたのだそうだ.そのうち,日付も間違ってしまったので,人民日報には何一つ本当のことは書いてないことになってしまったそうだ.

武漢ではいまでも人民服を着ている人が結構いる.昔,友人が高校の修学旅行で中国にいったときに,おみやげで人民服を買ってきてもらったことがある.その服はもともと小さかったのか,洗ってるうちに縮んだのかして,着れなくなってしまった.去年北京にいったときには,それほど人民服を欲しいとは思わなかったのだが,今回はまた欲しくなって,特に灰色の人民服が欲しくて,武漢と上海でいろいろと探してもらったのだが,もはやどこにもなくて手に入らないとのことだった.

ちなみに「人民服」という名称は中国にはなくて,あれは孫文がデザインしたので,「中山服」(中山は孫文の号)というのだそうだ.人民服を着て道を歩いている人を指さしながら,「毛沢東が着てた服」といって初めて通じた.

上海帰りの

去年北京を見て,今年は台北を見てたので,上海もたいしたことはあるまいとタカをくくっていたのだが,上海は北京の十倍,いや百倍はきれいだし,台北よりも資本主義的に見えた.台北はゴミゴミしてたが,上海にはなんとなく余裕さえ見えた.これは誇張でもお世辞でもなく,私の観察によるところの率直な感想だ.上海はおそらく二・三年で東京並になるだろう.

上海経由で武漢にいったのだが,武漢は北京によく似た雰囲気の都市であった.つまり人民中国的な雰囲気の都市だった.上海はどうやら中国の都市の中では別格らしい.

それで,どうして上海がこのように独り中国の中で富み栄えており,しかもこのような自由な雰囲気に満ちているのか,という疑問が湧いてきた.

上海浦東区のだだっぴろい特別区を見学に行った.ここに免税などの優遇措置でもって外国企業の工場を誘致しようというわけだ.既に日立や松下などの参入が決っているという.「もしあなたがソニーの社長なら投資しますか?」と質問された.そのとき私は,

* 中国は大きなプロジェクトが好きな国だが,必ずしも成功してるとは限らない.国家プロジェクトではなく,民間の個々の自由な活動にまかせるべきではないのか.
* 広東の経済特別区(深(土川)など)の優遇措置は撤廃という噂が流れており,一応の成功は収めたものの,投資額は減少し,他に移転する企業が増えている.上海でも,初めのうちは優遇措置で外国企業を誘致しておいて,うまくいきだしたら規制を強めるのではないか.
* 外国資本の投資に依存していては,中国市場が大きければ大きいほど中国は損をするのではないか.
* 上海は,中国の中では一番物価の高いところだろう.安い製品を作るなら,上海でなくて他の地域や他の国に工場を作るべきではないか.

などと思った.この特別区はなりはでかくて立派だが,結局それほど工場は入らないのではないか.それにしてもこの投資の仕方は気違いじみているなぁ,と思ったものだ.

で,それからいろいろと調べてみたのだが,この一見無謀に見えるプロジェクトだが,実は今の国家主席,上海出身であり,上海交通大学出であり,元上海市長であった江沢民の,上海を経済的な首都にしようという政策によるものらしいということがだいたいわかってきた.おおすじでは,

* 北京はひきつづき政治的首都として残す.
* 現在再開発中の上海浦東区を特別区とし,外国企業の工場を誘致する.
* 市内に外国銀行を誘致して香港以上の金融センターとする.
* 広東の経済特別区の優遇措置は暫時撤廃する.

らしい.

香港は欧米諸国の干渉が多くて中国の思い通りにならないので,香港の機能をまるごと上海にもってきて,さらに広東優遇もやめて,上海に一元化しようということのようだ.上海はかつて世界の金融センターだったことがあり,なんとなく自由な雰囲気が残っているので,もしかするとうまくいくのかもしれない.

人民中国は,文革のおり,字画を減らした簡体字というものを考案して以後ずっとその字体を使っているものとばかり思っていた.この簡体字というものはあまり美的センスというものを考慮していないような気がするし,フォント作りも真面目にやってないような気がするし,手書きで書くときにも気合いが入らないのではないかという気がする.北京は町中にほとんど活字のない町であった.一回ごとに書き手の気分で手書きしてるような,そういう道路標識が多かった.きくところによれば,橋や道路の名前は,偉い政治家に頼んで書いてもらうのだそうな.台北に行ったときには,旧字体の美しい活字が町にあふれていて,とても美しく見えたものだった.ところが今回,上海と武漢に行ってみると,簡体字とともに旧字体もかなり使われていることがわかった.活字による道路標識も至るところでみられた.「なぜ簡体字を使わないのか,簡体字を使わなくても政府は文句をいわないのか」と尋ねてみたところ,「文化大革命はもう終った」とのことであった.北京は,いまだに毛沢東の肖像が睨みをきかす町なので,簡体字を使い続けているのだろう.

ボブ・マーリィ

ある飲み屋の女の子にTシャツを買ってやるという約束をした.ある日散歩してたときに道端でTシャツを売っていたので買うことにした.「ダザイ治」とかださいのもあったが,「チェ・ゲバラ」と「ホー・チミン」のTシャツが気にいったので,それを自分の分と女の子の分と買うとして,女の子は「チェ・ゲバラ」よりも「ホー・チミン」の方がいいかと思って,「チェ・ゲバラ」はLで,「ホー・チミン」はMを買おうとした.ところが道端でTシャツを売っている兄ちゃんが言うには,「ホー・チミン」はいろんなサイズのがあるが,「チェ・ゲバラ」はMしかないという.しかたなく「ホー・チミン」はLのにして自分で着ることにし,「チェ・ゲバラ」はMにしてプレゼントにすることにした.

一応形だけどちらがいいか飲み屋の女の子に聞いたら,予想に反して「ゲバラ」の方がいいという.「ゲバラ」のどこがいいのだろう?ありがたくもらうふりだけしてるのだろうか?と思ったら,「ボブマレー」みたいでけっこう気にいったのだそうだ.

「ボブマレー」って誰?

ソリみたいなやつ?それは「ボブスレー」.

ふとその週の「ぴあ」の表紙をみたら,そのレゲエのおじさんが実は「ボブマレー (ボブ・マーリィ) 」であった.

というわけで,結論はいまどきの女の子はゲリラとレゲエの区別もつかないから,ゲリラのTシャツをあげるときっと喜ぶであろう.ということであった.

ちなみに,気に入らないTシャツをもらったらどうするかと聞いたら,ネマキにするのだそうだ.

烏龍茶はピンクレディのおかげ

夏の盛りには枝付きの枝豆が食べられる.普段は冷凍の枝豆で,粒がそろってるけど個性がない.枝付きは畑から枝ごととってきたやつで,つぶが不揃いでちょっとむきにくかったりする.そういう食べにくいところがいい.自分で買ってきてゆでるととてもいい香りがする.

8月15日の日経産業新聞に,伊藤園の会長の話が載っている.中国人はほとんど烏龍茶を飲まないというのは良く知られた話である.烏龍茶を飲むのは日本人だけだと私に中国人は言う.会長の話では,ピンクレディがその絶頂期に『痩せているのは烏龍茶を飲んでいるから』といったために,今のように烏龍茶がヒットしたのだそうだ.ちなみにピンクレディが絶頂期だった当時気嫌いしていたが,それは私が流行というものを昔から嫌悪していたからで,今から思えばピンクレディは偉大なアイドルであった.