藤沢周平の原作を読んだ。
やはりなと思った。
帯屋は、あんなふうに、城内にどやどやと押し入ったのではない。
藩主の近習部屋の者たちが、みな帯屋に内通していて、
あるいは帯屋に内通しているものが近習部屋の者たちをどこかほかの場所に連れ出していたのだ。
そして帯屋は誰にも見とがめられることなく、藩主のいる部屋までやってきて、そこで兼見にいきなり遭遇して、斬り合いが始まる。
こうでなきゃおかしい。
帯屋は、ちゃんと段取りを組んで、藩主一人と対峙するつもりだった。
あるいはだ。帯屋に内通していると見せかけて、帯屋を油断させて、実は中老の指示で、
近習部屋のものたちは隠れていて、わざと帯屋と兼見を一対一で斬り合わせた。
そういう設定でもよい。
帯屋がわあわあわめきながらたった一人で屋敷の中に闖入してくるはずがない。
兼見だが、醜男で剛直な、鋼鉄のような、愚直な男として描かれている。
自らの信念で、側妾をあっさり殺してしまった。
まあ、これならまだわかる。
最後の立ち回りもあっさりしている。
やはり原作には無理はなかった。
脚色が悪い。
藤沢周平のほかの作品もいろいろ読んでみたが彼はまともな作家だと思う。
彼の話では、本来、主人公もヒロインもそんな美男美女ではない。
しかし美男美女でなくては映画にならない。
派手な殺陣がなければ時代劇にならない。
だから脚色と原作の関係に無理が生じる。