頼朝

> 偽りのことの葉しげき世にしあれば思ふといふも誠ならめや

> 道すがら富士の煙もわかざりきはるるまもなき空の気色に

> みちのくのいはで忍ぶはえぞしらぬ書きつくしてよ壺の石ぶみ

> いはし水たのみをかくる人はみな久しく世にもすむとこそきけ

> よそにみし小篠がうへのしら露を袂にかくる二むらの山

> 逢ひみてし後はいかこの海よりもふかしや人をおもふ心は

> 都には君に相坂近けれは名こその関はとほきとをしれ

> 五月雨のたえまがちなる雲のあひを空ぼめをする人にぞあひける

> かへる波君にとのみぞことづてし浜名の橋の夕くれの空

> おぼつかなよしとはいかが難波がたならはざりけるうらみをぞする

> まどろめば夢に見えつつうつつにもわするることはつかのまもなし

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