月別アーカイブ: 1999年10月

王道の狗

ふと思った.漫画家というのは必ずしも絵がうまくなくてもよいわけで,個性的な絵が描ければよろしい.さらに言えば,原作は他に居てもよいわけで,ストーリーを考える能力はなくてもよろしい. シナリオもネタ集めも,絵のアシスタントも,良い漫画がかければなんでも使えるものは使えばよいわけである. それはまあよいとして,では一番絵のうまい漫画家というのは誰かというと,それは池上遼一か安彦良和だろうと思う.いや,もしかしたら黒鉄ひろしとかもうまいのかもしれない.そういうこと言い出すとバカボンドとか北斗の拳の作者もうまいうちに入るかもしれない.まああまり追求するのはやめておこう. で私がなにを言いたいかと言えば,それは安彦良和の「王道の狗」 (ミスターマガジン) である.これはすごい.作・画ともに安彦良和.安彦良和といえば「ガンダム」のキャラクターデザインである.ここまでは誰でも知っている.そして「アリオン」.これもわりと有名.「クルドの星」.うーむ,これも私は読んだけど,あまり有名じゃないかな.「アリオン」を描いた理由はなんとなくわかるような気がする.ギリシャ神話ってなんとなく描いてみたいよね.「アリオン」と「クルドの星」はわりと連続性があると言える.ギリシャとトルコはエーゲ海を挟む隣国だから.取材か何かでギリシャに行けばトルコにも足を延ばすでしょう.ちなみに「クルドの星」というのは,トルコとイラ… 続きを読む »

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パパはニューギニア

パンダ密猟は死刑。アブラハムはイサクを殺した。バイトをオクテットと言うとかっこいい(笑)。 相原コージが「例に出して悪いけど、…「パパはニューギニア」の連載と共に「ギャグマンガは死んだ」のだ」などとほざいている。そんなことより、最近の吉田戦車がつまらないことの方が重大問題だ。「いじめて君」のころは面白かったのに。

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中島敦@南洋庁パラオ支庁

割合ひまだったので中島敦をまとまった分量読むことができた。 彼は南洋庁パラオ支庁に居た。第一次大戦でドイツから取った領土だ。そこへ行ったのは、喘息の療養を兼ねてのことだったようだ。小説の評判が良いので帰国したら、横浜で早速風邪をこじらせた。スティブンソンはロンドンで死にかけて、南洋に引き返して命をながらえたが、中島敦はそのまま日本で死んでしまった。日本に帰らなくとも、すぐに戦争が始まって大変な思いをしたことだろう。ただ中島は、 > いや、そうではない。お前が南方に期待していたものは、こんな無為と倦怠ではなかったはずだ。それは、新しい未知の環境の中に己を投げ出して、己の中にあってまだ己の知らないでいる力を存分に試みることだったのではないか。さらにまた、近く来るべき戦争に当然戦場として選ばれるだろうことを予想しての冒険だったのではないか。 という恐るべき覚悟を記している。 山月記、名人伝などはもちろん高校生の頃読んでいたのだが、その異常な世界は、中島敦が熱烈な西遊記ファンであるところからきているようだ。彼が生きていた時代が精神主義全盛期だったことも関係あるかもしれんが。文字禍、悟浄出世、悟浄歎異、など、寓意の体裁であるがあからさまに彼自身が投影されていて、私小説よりもむしろ直接的だと思えた。

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