実家に「千夜一夜物語」があったので,退屈だったので,
読みふけった.
妻に裏切られたどこぞの王様が,
「貞淑な妻などいない」という観念に因われてしまい,
処女と同衾したあと浮気できないように殺すということを,
毎晩繰り返していたという.
ところが面白い話の続きを聞きたくて千一夜の間ある娘の話を聞いていて,
しまいにはこの娘を許し,正式な妻としたという話.
うーん.つまり「「貞淑な妻などいない」とは言えない」というのが,
結論なのだろうかなぁ.
この娘はシェーラザッドと言うのだが,
千夜一夜物語の特異なところは,
話の中の登場人物がさらに物語をし,さらにその話の登場人物が
さらに物語をし…,という入れ子状態になっているのである.
登場人物が複数の物語をすることもある.あうち.
シェーラザッドをルートとする木構造になっている.
きわめてややこしい.
シンドバッドの冒険なんかもこれの一部なんだろうが,
ディズニーにかかると,清く正しい恋愛物語になっちまうんだな.
これが(見てないから知らんが).
不倫と偏見の物語が勧善懲悪ものに改作されるのだな.
アメリカ映画にありがちのパターン.
「Trust me!」とか言っちゃって.
きゃー恥ずかしい.
これを訳して紹介したイギリス人のバートンという人も,
ずいぶん屈折した人だったのではないかと思う.
当時の,黒人やアラブ人に対する西洋人に固有の偏見というものが
かなり混入してるのではないか?
それとも原作どおりなのだろうか?
これを読んでて「家畜人ヤプー」を思い出した.
おそらく「ヤプー」は千夜一夜物語の影響を受けたものだろう.