評伝 小室直樹
たまたまアマゾンを見ていて、『評伝 小室直樹』という本が2年前に出ていたことを知った。しかるにその上巻はすでに品薄状態で中古でもかなりのプレミアがついている。仕方なく、とりあえず上下巻とも図書館で借りて読むことにした。 著者の村上篤直氏は橋爪大三郎が編んだ『小室直樹の世界』という本に付録された目録を執筆したというから橋爪氏のお弟子さんか何かなのだろう。橋爪氏は当然小室直樹について熟知していた。そしてそれを村上氏にもたびたび語っていただろうし、村上氏も橋爪氏に小室直樹のことについてたびたび質問していただろう。その過程で村上氏は、橋爪氏がどうして小室直樹の本当の姿を書かないのか、小室直樹の評伝を執筆して世に広めないのか、橋爪先生が書かないのなら私が書きますよ、もちろん推薦文くらいは書いてくれますよね、くらいのことは言ったのではないか、と想像されるのである。 私が読みたいと思うのは小室直樹全集であり、その一つ一つの著作に対する解説であり、また校注である。しかしどうも橋爪氏はそのようなものを書く気はまったくないらしい。橋爪大三郎が副島隆彦と共著で書いた『小室直樹の学問と思想』ではただ、小室直樹は偉い学者だったとしか書かれてなく、その著作についてはほとんど触れられていないと言って良い。 で今回『評伝 小室直樹』を読んでその謎が氷解したような気がした。橋爪氏は書きたくなかったのだ。なぜなら小室… 続きを読む »