レオナルド・ダ・ヴィンチという神話

レオナルド・ダ・ヴィンチなんだけど、
代表作は「モナリザ」と「最後の晩餐」くらいで、
あとは膨大な手稿と素描。
「モナリザ」「最後の晩餐」はすごいのかしれんが、
過大評価されすぎな気がする。
片桐頼継著「レオナルド・ダ・ヴィンチという神話」という比較的最近出た本では、
レオナルドの周りには技師や医者や建築家などのさまざまな科学者が居て、
レオナルドは彼らのアイディアを挿絵に描いてやる
「テクニカルイラストレーター」だったのではないかと言っている。
レオナルドがもし科学者であるとすればオリジナリティがなくてはならないが、
レオナルドの場合はたまたま良く描けた手稿と素描がまとまった形で後世に伝わったというだけで、
もっとオリジナルな発明や研究はレオナルドの先人たちによってなされていたという証拠がどんどん出てきているそうだ。
そうなってくると
「万能の天才」とか「芸術と科学の融合」
などという話はそもそもルネサンスにもなかったということになる。

ある人が死んでしまうと後には文書や作品などしか残らない。
百年も経つとそういう文献だけが「事実」となり、
それら断片的に残された古文書を「補完」することによって、
同時代の人たちには想像もできない形で神格化されていくというのは、
良くあることかもしれない。
現代でも一部の有力者が勝手に流行や権威を作り出すということがありがちなように。

レオナルド

レオナルド・ダ・ヴィンチの本をいっぱい借りてくるが、
すでにルネサンスの頃にフランス人とイタリア人の間で
「科学のない芸術は無だ」(Ars sine scientia nihil est) とか
「芸術のない科学は無だ」(Scientia sine ars nihil est)
などという問答があったらしく、
ほとんどまったく同じ議論が未だに繰り返されていて、
基本的にはなんの進展も見られていない。
おそらくルネサンス以来今日まで同じようなことが何度も何度も起きていて、
サーベイする前からその膨大な試行錯誤の歴史を想像するだけで気が遠くなる。
何年も自分なりにやってみると、
やはりどうしようもなくうさんくさいものが目に付くようになってきた。
知ればしるほど飽きてつまらなくなるというのは良くない傾向だが。

レオナルドは芸術と科学を融合させた天才だと言われているが、
実は話は逆だと思っている。
レオナルドの時代までは芸術と科学に区別はなかったのだが、
彼の時代でついに決定的な違いが生まれ、
その後ものすごい勢いで離れ遠ざかってしまったのではないか。
芸術と科学は対立概念なのだと思う。
ars とか scientia という言葉が今と同じ意味に使われるようになったのも、
西洋のルネサンス以後、レオナルド以後なのではないか。
イスラムや中国で芸術と科学の対立概念などそもそもなかったような気がする。
古代ギリシャにも中世にもなさそうだし。
となると近代西洋固有のものではないか。

つまりレオナルドとかあるいはカルダノなんかは、
科学と芸術が分離する最後の時代の人だったのじゃないか。
科学と芸術を融合させるに、
ルネサンスやレオナルドを見習えなどというのは見当違いなのではないかと思うのだ。

華氏911

マイケルムーアの番組とか華氏911とかみてると、
アメリカ経済は軍事産業や大企業やアラブの大富豪に癒着してるということはわかるのだが、
ならそれは「良くない」ことだからブッシュを落選させてケリーを選べば良いかというと、
アメリカが汚れて腐ってるのは昔から分かり切ったことで、
清らかな国になったらよけい危ないじゃないかと、
選挙民は思ったのではないか。
自分の悪事を自分で裁ける人間などいるまい。
だからブッシュは再選したのであってマイケルムーアの映画は逆効果だったのではないかと。

アップルシード

アップルシードを見たが、実に見事なできばえだ。
セルは一切使っておらず、フルCGで、人物はトゥーンレンダリング、
背景やメカはリアリステックなレンダリング。
モーションキャプチャもリップシンクもまずまず、
というか今の技術ではこれ以上の動きは無理だろうな。
体の動きの役、口パク役、声優役とそれぞれ別人のようだ。

この感覚は青の六号に似てるが、青の六号はここまで徹底していなかったような気がする。
良く思い出せないが。

ストーリーを含めた総合的な評価はともかくとして、
日本のCGアニメもまだまだ捨てたものではないなと思った。
メカと戦闘とアクションと美少女CGだけで楽しめる人はこれで十分だろう。
そういう意味ではマクロスに似てる。
DoGAコンテストをものすごく高級にした感じというか…。
さっきから全然ほめてないようだが(笑)、良い出来だと思うよ。
これより悪いCGアニメならいくらでもあるし。

マイケルムーアの「華氏911」と「アホでマヌケなアメリカ白人」を借りてきた。
「アホでマヌケ…」は The Awful TRUTHというたわいないテレビ番組。