ムッソリーニ

「ムッソリーニ」という映画を借りる.
イタリア映画的美しさがある.
しゃべってるのは例によって英語だが.
これ見てると,ムッソリーニって,それほど邪悪な政治家ではない.
と思えてくる.
イタリアという,類まれに自由奔放な国で.
個人主義的な国で.
怠惰で.退廃的で.
政治的にはぐちゃぐちゃで.
そんな国で 1922 年に 39 才で首相になった,ムッソリーニというおっさん.
これだけでも他の独裁者,たとえば,スターリン,
ヒットラーなどとは性格的に違うものになって当然だと思える.

汽車を時間どおりに走らせようとしたり,
密造酒を取り締まったり,
昼寝をやめさせようとしたり.
すっかり堕落した古代ローマ人の末裔を勤勉な民族に変えようと思えば,
多少手荒な手段は必要だっただろう.
でもラテン人をピューリタンのような勤勉な民族に作り変え,
イタリアを第 2 のローマ帝国にしたてあげる,というのは,
もともと無理があったような気はする.

ドイツという,がんらい謹厳実直な気風の国に,
ファシズムが台頭し,
ヒットラーという精神的にいびつな人間が指導者となったのは,
イタリアにとって不幸なことだっただろう.
ヒットラーはムッソリーニにすりよってきた.
ヒットラー政権.ムッソリーニに遅れること 11 年.
ヒットラーはムッソリーニを尊敬していたが,
ムッソリーニはヒットラーを気にいらなかったようだ.
結果的にイタリアはドイツと同盟し,
日本も調子にのって同盟してしまった.
うーむ.なんという不幸だろうか.

豪姫

豪姫という映画を借りて見た.
原作は富士正晴という人だ.
富士正晴なんて誰も知らないと思うが,
伊東静雄関連で知っていた.
で,先にその文庫本を買って読んだのだが,
カバーに宮沢りえ主演で映画化されたということが書いてあったので,
それでその映画の存在をしったのであった.

思ってたよりはずっと良くできた映画だった.
すじがきはかなり原作に忠実で,ごく地味なもので,
なんでこんなもんを映画化したのかと思うくらいで,
まあ宮沢りえの絶頂期だからこそできた冒険のようなもんかもしれん.
でも私はこの映画は好みだなあ.
地味な中に戦国の美しさが現れている.

仲代達也が古田織部の役なんだが,
なんとも恰好良い.
「大地の子」や「秀吉」の仲代達也も良かったが,
この「豪姫」の仲代達也も,実にかっこいい.

第一首相

カンボジアの第一首相とか第二首相というのは,
なんかおかしな呼び名だなあ.と私は思ったのだった.
なぜかというに首相は The prime minister であって,
本来,第一大臣という意味だ.
気になって英字新聞を読んでみたら,
なんのことはない,
The first prime minister, the second prime minister
というのだそうだ.
うむ.事実は小説よりもつまらない.

まあ,どうでもいいことなのだった.
でもきっと一部のラテン系の言語だと,
La prima prima ministro (どこ語?)となって具合が悪いのではないか.
でも,序数の階層化なんて,珍しくもないか.