夏目漱石『坑夫』

夏目漱石『[坑夫](http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/774_14943.html)』
をkindle版で再読しているのだが、無駄に長い。
冗長。こんなだらだらしたものを書きたいから書いたんだろうけど、付き合うほうはよほどおっとりした性格でなくてはなるまい。

> 昨夕東京を出て、千住の大橋まで来て

とあるから、おそらく日光街道を越谷、春日部あたりまでを二日がかりで徒歩で歩き、
ここから鉄道で古河、小山、桐生、足尾とたどった、という設定だろうと思うのだが、
越谷や春日部のあたりは一面の田んぼのはずであり、どこまでも続く松原、なんてものがあるとは思えない。

途中の街道の描写は川越街道、武蔵野の光景に酷似している。

だいたい二日もぶっとおし歩けば、川越か春日部あたりまでいけるだろう。

川越の手前は川越河岸というものがあって、
ちょうど

> いつの間まにやら松がなくなったら、板橋街道のようなけちな宿の入口に出て来た。やッぱり板橋街道のように我多馬車が通る。

というのがこの川越河岸だか福岡河岸あたりの光景だろう。
さらに進むと、

> そのうちに人通りがだんだん多くなる。町並がしだいに立派になる。しまいには牛込の神楽坂くらいな繁昌する所へ出た。ここいらの店付や人の様子や、衣服は全く東京と同じ事であった。

これはおそらくは川越のことだろうと思う。
春日部がどんなだかは知らない。

> ここにはわざと云わない。

などと書いていて、しらばっくれているのは、ほんとうは春日部日光街道(奥州街道)なんだが、
そっちは取材してなくて、
たまたま知ってた川越街道のことを書いたんじゃなかろうか。
或いはだれか(漱石本人か)が川越のあたりまで出奔したという話と、
足尾銅山で働かされた誰か別の人からの取材があわさってできているのかもしれん。
でないと、この前置きの冗長さを説明できん。

そういうどうでもいいごまかしのために、或いは文字数を増やすがために、
やたらとだらだらわけのわからない文章を書かれては困る。
川越なら川越、春日部なら春日部と書けば良いものを。
わからんことは取材してから書けばよいのに、と思う。

きちんと実名を出し、余計な回想だかをくどくど繰り返さなきゃ、
この鉱山行の話は十分の一ですっきり片付くだろうと思う。

> 板橋街道

というのがぽろっと出てくるがこれは中山道と川越街道が板橋で分かれる手前のあたりを言うと思われる。

[追記あり](/?p=12675)

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