亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

明治38年 (52才)

富士のねに匂ふ朝日も霞むまで年たつ空ののどかなるかな

たちかへる年のほぎごと敷島の道によりてぞ民もいひける

吹く風のまたさえかへるあしたかないたでおふ人身にやしむらむ

深からぬ谷にも雪の残りけり今も冴ゆらむ北支那のやま

あたらしき年のたよりに仇の城ひらきにけりとつたへきにけり

あらたまのとしたつ山をみる人のこころごころを歌にしるかな

梅にふれ柳にふれてきのふけふ風のこころも春になるらし

都にはいづる心やなかるらむ谷かげにのみ鶯の鳴く

さむしとてこもるべしやは枝くちし老木のうめも花さきにけり

風さえて雪のみふりし山里も梅さきにけり時の来ぬれば

旅衣ぬぎかへずして見つるかなあるじがいけし梅のひと枝

うめの花をりてを見せむ老人は春さむしとてとはじと思へば

まつりごといとまなきまに過ぎにけり久しと思ひし梅のさかりも

つりがめにさしたる柳ながければかけし柱も見えぬなりけり

うらうらとかすむ春野も菜の花のかをるばかりの風はありけり

花どきの朝ぐもりかとおもひしを音せぬあめのふりいでにけり

燕とぶしだり柳に夕日かげかつさしながらはるさめぞ降る

木のもとにいづればまづぞ待たれける花みて遊ぶ春ならねども

花ざくら霞みてにほふ山みれば世にはことある春としもなし

枝かはす木立おぼろにくれそめていよいよしろき山ざくらかな

いくさびとおもひやるらむとりがなくあづまみやこの花のさかりを

くにのため心つくせる老い人を花だに見せてなぐさめてまし

さかばかつ散りなむ花をまちどほに思ふぞ人のこころなりける

咲くはなのものがたりする人もなしことある年の夜半の春雨

春雨のなごりの露をにほひにてたわめる花のうるはしきかな

うつせみの代々木の里のなりどころ花の梢も苔むしにけり

窓のとの花はさかりに匂ふとも書よむわらは心ちらすな

宴せむいとまなしともしらずしてわが庭桜さきそめぬらむ

このもとにいでゝぞ遊ぶ老人も花のときには家にこもらで

はまどのの花のうたげを年毎に外国人も待つといふなり

ちかゝらばわが庭ざくら北支那のたむろに折りてやらましものを

たたかひのにはのみ思ふこの春は花の木かげもしづごころなし

あらたまの年にひとたびさく花を心しづかにみむ春もがな

雨風のおほき年かな桜花まちつるほどはのどかなりしを

なかなかにたづねおくれて散る花のさかりにあひぬ嵯峨の山ぶみ

ふく風をふりしづめたる春雨になほとゞまらでちる桜かな

まつりごといとまなき身も春雨のふる日は長くおもほゆるかな

菅のねの長き春日もこぞことしいとまなくしてくらしけるかな

つはもののことしげき世の田うゑどき里人いかにいとなかるらむ

遠乗にいでにし人はかへれども春の日かげはなほたかくして

いくか経てかへしはつべき小山田にたてるをのこの数のすくなき

くれぬべく見えての後もくれぬかな柳のいとのながきはる日は

暁をしらずといへる春ながらことしは夢もやすくむすばず

ひむがしの都の空も春寒しさえかへるらむ北支那の山

故郷を遠くはなれていくさ人花のさかりもしらずやあるらむ

春のたつ空にむかひて世の中ののどかにならむ時をこそまて

あつ氷とくるを待ちて北の海にすゝみゆくらむわが軍ぶね

さくら花霞みてにほふ山みれば世にはことある春としもなし

鮎はしる山川のせにかげ見えてひとむらうつぎ花さきにけり

ほとゝぎすいでにしあとに来にけらしたづぬる山も声のすくなき

九重の庭のたちばな吹く風にわたどのこえてかをりきにけり

なかなかに遠ざかりてぞまさりける花橘のたかきかをりは

このめつむ宇治のをとめごいまめかぬその手ぶりこそゆかしかりけれ

函館の氷えやすくなりしより氷むろのむかしいふ人もなし

さみだれにたゝみのうへもしめれるをたむろのうちぞ思ひやらるゝ

さみだれの雨のさむさにおもふかな夏は暑きがこゝちよしとは

さみだれのはれまなき日の長きかないたでおふ人くらしわぶらむ

蝙蝠のかさもたたみて夏かげの柳のもとにたちよりにけり

おふ人もあらぬ中洲の蘆原を風にふかれてゆくほたるかな

あしはらの蛍のかげは消えはてゝみちたる汐に月ぞ浮べる

白波のよせてあらひしあとみえてまさごぢ清し夏のよの月

ともしびも吹きけつばかり風たちてはしゐ涼しき夏のよはかな

雲ばかり空にまよひて夕立のふりいでぬまの暑くもあるかな

たらぬことなしとや夏は思ふらむ水にとみたる塩原のさと

山水を池にひきたるふるさとの庭こそ夏はこひしかりけれ

一木にて庭をおほへるくすのきの陰こそ夏はすみよかりけれ

衣手の汗になるにもたたかひのにはにたつ身をおもひこそやれ

生垣のかなめのうへにさきながらねざしはみえぬ昼顔のはな

かざぐるまいざかけさせよ日ざかりの暑さいとはず人のまゐくる

まつりごといでてきくまはかくばかりあつき日としも思はざりしを

国のため民の為には夏草のことしげくともつとめざらめや

つはものの毛織の衣ぬらすらむ樺太じまのなつぐさのつゆ

つはものはいくさの重荷はこぶらむ照る日にやけしいはねふみつつ

いつかわが心にかかる雲はれてすずしき月のかげにむかはむ

暑しともいはれざりけり戦の場にあけくれたつ人おもへば

水瓶にうかべおきつる朝顔もしぼまむ時のくればしぼみぬ

たちよりてつぼみをみれば朝顔は夕べよりこそ咲きはじめけれ

おくつゆの光になりて月夜にはいろこそみえね秋萩のはな

たたずめば聞こえずなりぬむしの声このくさむらと思ひしものを

やちくさの花野を庭と見る庵もなほ秋萩をうゑてけるかな

秋風や吹きかはりけむしの薄そむきし方にうち靡くなり

海原もひと目にみゆるたかどのに登りてまたむ秋の夜の月

さまざまにもの思ふ夜もさやかなる月にむかへばなぐさまれけり

さまざまにもの思ひこしふたとせはあまたの年を経しここちする

ひさかたのあめにのぼれるここちして五十鈴の宮にまゐるけふかな

いくさ船みなとにいりて波風のしづまれるよの月やみるらむ

たらちねのみおやの宮にをさなくて見しよこひしき月のかげかな

海遠くみはらすたびのやかたにて秋のもなかの月にあひにき

外国の野辺のたむろにこの秋も月やみるらむわがいくさびと

大空はさやかに見えてさぎりたつ水のうへくらし秋のよの月

なく声のこゑもまじりてふくる夜の枕に寒き水の音かな

千町田のことしのみのりいかにぞとあがたの人にとはせてをみむ

霜ふみて撞くらむ人の寒ささへ思ひやらるる鐘のおとかな

九重のうちにありても木枯のふきあるる夜はねられざりけり

窓のとやさしわすれけむわたどのに冴えたる月のかげの見ゆるは

ただしばしあけてみるまに板じきのうへまでつもるけさの雪かな

北支那の野山いかにとおもふかなふりつむ雪をみるにつけても

北支那の山にことなき世なりせばめづらしとみむけふのしら雪

ふる雪もまたれざりけりつはもののたむろの寒さおもふ今年は

大空はみどりにはれて山といふ山みなしろく雪ふりにけり

うちよする波はなみともみゆるかな渚の松にゆきはつもれど

吹上のまつのあらしもうづもれて雪しづかなりここのへのには

いひふりしこととはしれどふる雪におもひやらるるたたかひのには

埋火のもとにいざなへふる雪のはれまもまたできたる老人

戦のにはの寒さをおもふにもまづ待たるるは春にぞありける

人みなのおどろきがほに惜むかなにはかにくるる年ならなくに

窓をうつ霰のおとにさめにけりいくさの場にたつと見し夢

北山の吹雪をうけてすすむらむ命をしまぬわがいくさびと

雪あられこほれる上に山風の吹きすさぶらむもろこしがはら

閨のうちもさゆる夜すがらおもふかな吹雪にたへてすすむますらを

たかきびの畑にこほれる霜ふみて仇さぐるらむつはもののとも

すめるもの昇りてなりし大空にむかふ心も清くぞありける

あさみどりはれしみそらにひとむらの雲いづこよりおこりそめけむ

かちいくさききつるときは大ぞらの雲のはたてもいさましくみゆ

とほければあらしのおとはきこえねどたかねの雲の動きそめたる

はれまなく降る長雨に川水のあふれむことをまづおもふかな

道のべにわれを迎へて立つ人のぬれもやすらむ雨のふりくる

としどしにけぶりゆたかになりぬらむ南の島の民のかまども

おもふことなくてしづかにいねし夜のあしたぞおのが心なりける

奥山のいでゆあみしてつはものの負ひしいたでも癒えやしつらむ

かちどきをあげたる船のかへりきてにぎはひぬらむみなとみなとは

ひと方にとどまらずしてたびねせむかはるあがたのてぶり見るべく

ゆく人のはやくかへりて外つ国もとなりのごとくなりにけるかな

ゆくところわが国ながら旅にあれば都おもはぬときなかりけり

山ざとの庵あまりにもしづかにてたたみのうへに小鳥あそべり

つはものの上にそへても思ふかなひきたる駒もつつがなきやと

たたかひのいとまある日はいくさびと手なれの駒をいつくしむらむ

たたかひのにはにすすみて乗る人とともにたふれし駒はいくらぞ

のむ酒にこころのうさやわすれけむ声さはやかになりにけるかな

暁のねざめのとこにおもふこと国と民とのうへのみにして

山よりもさびしきものは限なき荒野の原をゆく日なりけり

しるべする人をたよりにわけいらばいかをなる道かふみ迷ふべき

踏み分くるひとなかりせば末つひにわかずやならむちよのふる道

あるるかと見ればなぎゆく海原のなみこそ人の世に似たりけれ

秋つしま四方にめぐれるうなばらの波こそ国のかきねなりけれ

よものうみ波しづまりてちはやぶる神のみいつぞかがやきにける

しまといふしまのはてまで司人めぐみの波をかけなもらしそ

舟うけてをさなあそびをせし時を思ひうかぶる庭のいけ水

ことそぎし昔の手ぶりわするなよ身のほどほどに家づくりして

盃をあげてぞ祝ふとつくにに旅ゆく人のつつがなかれと

ゆく所わが国ながら旅にあれば都おもはぬときなかりけり

なりはひの暇なき世を思ふかなしづが手ぶりをまのあたりみて

うれしくも旅のやどりをとひきけり都にありとおもひつる人

たびねする山辺のけしきおもしろし絵にうつさせて家づとにせむ

をさな子をはぐくみながら田に畑にいそしむしづの暇なげなる

県守こころにかけよしづがやのかまどの烟たつやたたずや

うとましと思ふむぐらはひろごりて植ゑてし草の根はたえにけり

ますらをの心に似たりいささかもまがるふしなき窓のくれ竹

山深くこもりしたかもいでぬらし軍のかちを世につげむとて

園守におはれやすらむかしましく鴉なくなり庭のはやしに

うちのりて雪の中道はしらせし手馴のこまも老いにけるかな

たたかひの場にすすみて乗る人と共にたふれし駒はいくらぞ

冬の夜の寒さをしのぐ酒だにもえがたかるらむつはもののとも

うるはしくかきもかかずも文字はただ読みやすくこそあらまほしけれ

よろづよの国ののりともなる書をのこしてしがなこの時にして

生ひたちし県によりてかはりけり同じやまとの人のことばも

戦のいとまある日はものゝふも言葉の花をつむとこそきけ

ささげたる歌によりてぞしられけるあがたの末の民のこころも

ひとりつむ言の葉草のなかりせばなにに心をなぐさめてまし

新しきふしはなくとも呉竹のすなほならなむ大和ことの葉

むらぎもの心のうちに思ふこといひおほせたる時ぞうれしき

手ならひをものうきことに思ひつるをさな心をいまくゆるかな

竹馬に心ののりて手習ひにおこたりしよをいまおもふかな

ときどきにうつりゆく世のありさまを画にかかせてやのこしおかまし

きよき瀬に人の心をみちびくはこの山水のうつし画にして

ひとひらの地図をしるべに軍人しらぬ野山にせめかいるらむ

ものをおくところとなりて文机の上によるまはすくなかりけり

いくばくの身をくだきてかもろこしの山にかかげしはたてなるらむ

知る人にみがかれてこそあらはるれ世にうづもれし玉も光も

ものかかむ暇なければすらせたる現の墨もそのままにして

国のためいのちをすてしもののふの魂や鏡にいまうつるらむ

年をへてとりいでてみればうつしおきしわがおもかげもかはりけるかな

くもりなき朝日のはたにあまてらす神のみいつをあふげ国民

しづはけふ家にこもりてくらすらむ菅のをがさの軒にかゝれる

さまざまの玉をあつめてきずなきはえがたきものとさらにしりぬる

いさをある人をつどへて盃をあたへむ時をまたぬ日もなし

うるはしき花をゑがける小瓶には松の枝をや折りてさしてむ

みな人の見るにひぶみに世の中のあとなしごとは書かずもあらなむ

たたかひのたよりいかにとみな人の日ごとのふみをとりてよむなり

進むありおくるゝもあり時はかるうつはの針もまちまちにして

数あまたあるが中にも国にしてつくりし船をみるぞうれしき

いそしみてますます船はつくらなむ海をめぐらす国のかために

横浜の湊にくれば外つ国のはたてかかぐる船おほくみゆ

苫舟は入り江にはやく来にけらし蘆にさはれおと聞こゆなり

あた波をしづめつくして年もいまくれの湊にかへる船かな

とる棹のこころ長くもこぎよせむ蘆間の小舟さはりありとも

遠けれどまがはぬものは波のうへにつらなる船の帆かげなりけり

人しげき都の市にきゝてだにさびしきものを入相のかね

かちいくさ祝ふなるらむ市人が花火うちあぐる音きこゆなり

思ふことおほかる中にをり/\はなぐさむこともあるよなりけり

たゝかひのうへに心をつくしつゝ年のふたとせすごしけるかな

末つひにならざらめやは国のため民のためにとわがおもふこと

ゆくすゑはいかになるかと暁のねざめ/\に世をおもふかな

弓矢とる国にうまれしますらをの名をあらはさむ時はこの時

なよたけはすなほならなむうつせみの世に抜け出でむ力ありとも

いさみても弓矢のことをかたりてしますらをいたく老いにけるかな

年高き老木の松はいにしへのあとゝふ道のしをりなりけり

老い人が昔がたりにをさなくておぼえざりけりことも知りにき

世の中のことまだしらぬうなゐ子も時に合ひたる遊びをぞする

朝夕にかしづく人のことのはをはやくうなゐは聞きおぼえけり

みどり子がほほゑむかほをみるほどはわれもをさなくなるここちして

わたつみの波のよそにもへだてなく親しむ友はある世なりけり

国の為いよ/\はげめちよろづの民もこゝろをひとつにはして

いさりする親をたすけてあまの子はいとけなきより小舟こぐなり

柴かりにいとけなきよりいづる子はまなびの道に入るひまやなき

ちはやぶる神のをしへをうけつぎて人のこゝろぞただゝしかりける

世の中の風にこゝろをさわがすなまなびの窓にこもるわらはべ

おこたらず学びおほせていにしへの人にはぢざる人とならなむ

すなほなるをさな心をいつとなく忘れはつるが惜しくもあるかな

しのびてもあるべき時にともすればあやまつものは心なりけり

まどろめば夢にぞみゆるむらぎもの心にかけて思ふひとこと

たたかひのうへに心をつくしても年のひととせすぐしつるかな

わがこころやすらふひまもなかりけり世はさまざまのことしげくして

さま/゛\のことにあたりて思ふかな国ひらかしゝ御代のみいつを

神路山みねのまさかきこの秋は手づからをりて捧げまつらむ

しげりあふ杉の林をかこひにてちりにけがれぬ神のひろまへ

世の中にことあるときぞしられける神のまもりのおろかならぬは

うけつぎて守るもうれし千早ぶる神のさだめしうらやすの国

民草のしげりそふこそ葦原の国のさかゆくもとゐなりけれ

しづがうへに心をとめて県もりたづきなき身をいつくしまなむ

とき遅きたがひはあれどつらぬかぬことなきものは誠なりけり

ちよろづの仇にむかひてたわまぬぞ大和をのこのこの心なりける

国民のうへやすかれとおもふのみわが世にたえぬ思なりけり

外国にかばねさらしゝますらをの魂も都にけふかへるらむ

戦にかちてかへりしはものゝ勇ましくこそたちならびけれ

いさましくかちどきあげて沖つ浪かへりし船を見るぞうれしき

おのづから仇のこゝろも靡くまで誠の道をふめや国民

老人を家にのこしていくさびと国のためにといづるをゝしさ

ともしびをさしかふるまで軍人おこせしふみをよみ見つるかな

いつの日か帰り来ぬべきいくさ人ねぎらはむとてやりし使は

をゝしくも連りきつるあた船をうち砕きけりわがいくさびと

思ふことつらぬかずしてやまぬこそ大和をのこのこゝろなりけれ

国の為いのちをすてしものゝふの魂や鏡にいまうつるらむ

むかしよりためしまれなる戦におほくの人をうしなひしかな

身をすてし人をぞ思ふまのあたり軍のにはのことをきくにも

いかにぞとおもはぬ日なしいくさ人とひし使ひのかへりくるまで

万代もふみのうへにぞのこさせむ国につくしゝ臣の子の名は

とつくにの人もよりきてかちいくさことほぐ世こそうれしかりけれ

敷島のやまとことばもおぼえけり外つ国人も年をかさねて

とりがねにゆめをさましておもふかなたむろの野辺に年こえし身を

をりをりにひらきみるかな昔わが教へをうけし人のたまづさ

いそのかみふりにしことをかぞふればおほくの人を失ひにけり

祝ひづつうつおとすなり横浜の港をさしてふねやいるらむ

うらやすく世はをさまりてくにたみをねぎらはむ日をまたぬ日ぞなき

つはものの開きながらやすすむらむ虎のすむてふ山のかけぢを

言の葉のまことの道をわけみれば昔の人にあふここちせり

照るにつけくもるにつけてたたかひのにはにたつ身をおもひこそやれ

天地の神にぞいのる民のため雨風ときにしたがひぬべく

久方のあめにのぼれるこゝちしていすゞの宮にまゐるけふかな

さくすゞの五十鈴の宮の広前にけふおほ幣をさゝげつるかな

くもりなきあしたの空に神路山かう/゛\しくも見えわたるかな

えぞのおく南の島のはてまでもおひしげらせよわがをしへ草

つく/゛\と思ふにつけて尊きはとほつみおやの御稜威なりけり

いさみたつ人の心の若駒よあやふき道にすゝまざらなむ

手綱にもまかぜぬものは勇みたつ人の心のあらごまにして

世に広くしらるゝまゝに人みなのつゝしむべきにおのが身にして

こゝろざす方こそかはれ国を思ふ民の誠はひとつなるらむ

世の中の事ある時にあひぬともおのがつとめむわざな忘れそ

物学ぶ道にたつ子よおこたりにまされる仇はなしとしらなむ

ひらけゆく世のさま見ればなか/\に昔にかへることもありけり

さま/゛\にもの思ひこしふたとせはあまたの年を経しこゝちする

けなげにも生立ちぬべきさまみえて乳子のまなじりたけくもあるかな

つみためし言の葉ぐさに道の師の露のひかりやそひてかへらむ

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