亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

枕の山1

桜花三百首

花を待つ

  1. いとはやも 高根の霞 さき立ちて 桜咲くべき 春は来にけり
  2. あらたまの 春にしなれば ふる雪の 白きを見ても 花ぞ待たるる
  3. 春霞 立つより花も いつかはと 山の端のみぞ ながめられける
  4. いつしかと もえ出づる野辺の 若草も 桜待たるる つまとなりつつ
  5. とく咲けや 桜花見て おふなおふな 心やるべき 春は来にけり
  6. 春ながら また風寒み さくら花 枝にこもりて 時や待つらむ
  7. △ 待つとては 咲かぬさくらの 梢をも 見つつぞ暮らす あからめもせで
  8. △ 遅しとて よしや恨みし 桜花 咲かでやみぬる 春しなければ
  9. 日にそへて 霞立ちそふ 山見れば 花も咲くべき 時にはなりぬ
  10. 春くれば およびもたゆし 百千たび 桜咲くべき 日数よむとて
  11. 待ち侘ぶる 花は咲きぬや いかならむ おぼつかなくも かすむ山の端
  12. △ けふもまた 見えぬ高根の さくら花 それかとまがふ 雲はゐれども
  13. 花はまだ 咲けりともなし さほ姫の 衣はるさめ けふもふれれど尤
  14. △ 山桜 このめはるさめ ふりさけて 見れども見えず 咲くや咲かずや
  15. △ 咲きなばと 語らひおきし 山里の 花のたよりを 待ちぞわびぬる
  16. △ 待ち侘びて 尋ね入るかな やま桜 まだ咲かじとは 思ふものから
  17. △ 花はなど つれなかるらむ 咲きぬやと 人も見にくる 宿の桜の
  18. △ 桜花 まだしきほどに 見てしがな 語りて人に うらやまるべく
  19. ○ 待ち侘びぬ 桜の花よ とく咲かば とく散りぬとも よしや恨みじ
  20. 待ち侘ぶる こころは時も 過ぎぬるを いつとて花の つれなかるらむ
  21. 桜花 咲かむ咲かじは 知らねども 山へゆかしき 春がすみかな

初花

  1. △ さくら花 咲くと聞くより 出で立ちて 心は山に 入りにけるかな
  2. △ 待ちつけて 初花見たる うれしさは もの言はまほし もの言はずとも
  3. 咲くも皆 神のめぐみの 初桜 一枝はまづ 折りてたむけむ
  4. 佐保姫も 花待ちつけし うれしさや けふは霞の 袖にあまらむ
  5. さくら花 今は咲きぬる うれしさか 見る見るも鳴く 鴬のこゑ
  6. 岩が根を 踏むもおぼえず 花見むと 急ぐ心は 空よりぞゆく
  7. 遠しとも 思はざらまし さくら咲く 春の山路は 八百日ゆくとも
  8. 岩根踏む 山もみやこの 大路より けふは行きよし 花見に行けば
  9. 咲くと聞く ところあまたの 桜花 いづれの山を まづ行きて見む
  10. 山深く しげきが奥も 尋ねみむ 人に知られぬ 花や匂ふと
  11. ただそれと まがひしかども 桜花 咲けば色なき 峯のしら雲
  12. △ 梓弓 とらねどはるの さくら狩り 山のかすみを 分けつつぞ入る
  13. 遅れゐて 心空なり さくら花 見にとて人の 行くを見る日は
  14. △ 山とほく 見にこしわれを さくら花 待ちつけがほに 匂ふうれしさ
  15. 山がつは 桜咲くころ めづらしく 見るさへ花の みやこ人かな
  16. △ 来て見れば 花の中なる 山里の すまひぞ春は うらやまれける
  17. 憂きことも 聞かで見ればや 山里は 花の匂ひも 世にまさりける
  18. △ 花見には またぞ来にける をとつひも きのふもけふも 同じ山辺に
  19. あしびきの 山辺のさくら 明日は来じ いくか見るとも 飽く世あらめや
  20. 思ひきや 深山の奥の 木隠れに かかる桜の 花を見むとは
  21. 新しき 深山隠れの さくら花 人も来て見よ 道とほくとも
  22. 高しとて たかねのさくら よそながら 見てやはやまむ 行きてこそ見め
  23. いとどしく 外山に咲ける 花見れば 峯の霞の 奥ぞゆかしき

花の盛り

  1. 桜花 里にも野にも 山辺にも 今をさかりと 咲きにけるかな
  2. はるばると 来つるもしるく 山ざくら 花はけふこそ さかりなりけれ
  3. いづれをか 分きて見るべき さくら花 梢あまたに 匂ふ山辺は
  4. △ 咲きにほふ こずゑをおほみ をちこちに 心うつろふ 山ざくらかな
  5. 見る花の 木のもとごとに とまるかな めづるこころは ひとつと思ふに
  6. 飽かずとて 折らば散るべし 桜花 なほかくながら 見てをやみなむ
  7. 飽かずとも 折らでこそ見め 一枝も やつさば花の つらしと思はむ
  8. 我もまた えこそ過ぐさね さくら花 人の折るをば 憂しと見ながら
  9. 吹く風も 枝ながらやは 誘ひける あたら桜を 折る人ぞ憂き
  10. △ ひさかたの 天路に通ふ 橋もがな 及ばぬ花の 枝も折るべく
  11. ○ 桜花 折りてかざして 思ふどち 思ふことなく 遊びつるかな
  12. 暮れぬとも 今しばし見む 山ざくら 入相の鐘は 聞かずがほにて
  13. 遠くとも いまひとたびは 来ても見む 深山の桜 散らで待ちてよ
  14. 花見つつ 行けば春日も 暮れにけり 越ゆる山路は 遠からねども
  15. 見てのみや ただに帰らむ 一枝は 家づと許せ 花の山守り
  16. ここかしこ 野山の花に あくがれて 宿のさくらは 見ずやなりなむ
  17. わがものと はつかに咲ける ひともとも 宿のさくらは ことにこそ思へ
  18. 来ぬ人も 見にも来るかに 我が宿の 桜咲きぬと いざ告げやらむ
  19. △ 門さして 我ひとり見む 見に来とも 人に見せむは 惜しき桜を
  20. 寂しさも 見ればなぐさむ さくら花 もの言ひかはす 友ならねども
  21. 散るまでは 世のいとなみも 捨てて見む 花の日数は いくばくもあらず
  22. 飽くまでと 見ればいよいよ 見まほしき 花は桜の 花にぞありる
  23. 桜花 見る人ごとに あはれてふ 言や木陰に 山と積もらむ
  24. めづらしき 花とはなしに さくら咲く 梢は先ぞ 目にかかりける
  25. 玉鉾の 道のゆくての さくら花 知るも知らぬも よりつつぞ見る
  26. 過ぎて行く 人さへぞ憂き 立ち寄りて 見てだに飽かぬ 花のこのもと
  27. △ 山人も 負ひこし柴に しばらくは 尻うちかけて 花をこそ見れ
  28. 道の辺の 田面の水に かげ見えて 片山岸に 花咲きにけり
  29. いたづらに 桜は見めや 歌詠めと 言はぬばかりの 花の匂ひを
  30. 行く道に さくらかざして あふ人は 知るも知らぬも なつかしきかな
  31. 山里の 人とし言へば 思ひやる 桜の花の ゆかりとぞ見る
  32. このごろは さくらの花の ゆかしさに 山里びとの なつかしきかな
  33. 隠すとて あやなくたちそ 春霞 人に知られぬ 花のかほかは
  34. 隠さるる さくらのために 春もまた 霞を払ふ みそぎをやせむ
  35. 吹くとても 桜散らさぬ 風ならば 霞のためは 待ちもしてまし
  36. うちわたす 磯辺に咲ける 桜花 浪かと見れば よせてかへらぬ
  37. 漕ぐ舟も 磯山桜 咲くころは 心よせてや 見つつ行くらむ
  38. △ 春の野に 霞へだてて 鳴くきぎす 妻や恋しき 花やゆかしき
  39. さかりにも 鳴く鴬は さくら花 散りなむことや かねてかなしき
  40. しろたへに 松の緑を こきまぜて 尾上の桜 咲きにけるかな
  41. 春の日の つねよりことに のどけきは 桜の花の ためにやあるらむ
  42. うぐひすも 霞もいとど のどけさを 加ふる春の 花ざかりかな
  43. 咲きにほふ 四方の梢に 風も無く 花のみやこは のどかなりけり
  44. 雲のうへの 花のさかりか ひさかたの 空吹く風の 香ににほふなる

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