乱れそめにし

投稿者: | 2014年3月16日

伊勢物語第1段

むかし、をとこ、うひかぶりして、平城の京、春日の里にしるよしして、狩に住にけり。
その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。このをとこ、かいまみてけり。
おもほえずふるさとに、いとはしたなくてありければ、心地まどひにけり。
をとこの着たりける狩衣の裾を切りて、歌を書きてやる。
そのをとこ、しのぶずりの狩衣をなむ着たりける。

> かすが野の若紫のすり衣しのぶのみだれ限り知られず

となむおひつきていひやりける。
ついでおもしろきことともや思ひけむ。

> みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑにみだれそめにし我ならなくに

といふ歌の心ばへなり。
昔人は、かくいちはやきみやびをなむしける。

このように伊勢物語には「乱れそめにし」と出てくる。
古今和歌集には源融の歌として、「乱れんと思ふ」と出る。
百人一首は古今集に載る歌をわざと改変したのではなく、伊勢物語の方を採った、ということになる。

そんでまあ、通常この話は、
在原業平が源融の歌を本歌取りして詠んだのだと解釈されるのだが、ほんとだろうか。
素直に女の返歌として解釈してもいいんじゃないのか。
伊勢物語と古今集と業平集にはかなり重複があるが、必ずしも同じではない。
古今集と伊勢物語の話を、無理につじつま合わせする必要はない。

男が「あなたの姿をみて思い乱れてしまいました」と詠んで女が
「ほんとに私のせいで思い乱れたのでしょうか」ととぼけた調子で返す、
と解釈するのが一番素直な感じがするのだが。

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