浅草の土曜の朝

土曜日の朝、7時くらいに浅草場外馬券場の前、六区ブロードウェイ商店街を通ると、まだひと気は少なく、空気もまだすがすがしく、タバコ臭くもないが、なんとなくピリピリとした空気を感じる。制服の上に防寒のコートをはおり明らかに職務中とおぼしき人たちが二人か三人くらいで一組になって通りを巡回している。浅草パークホールビルというホテルのような、オフィスビルのようなよくわからない建物からぞろぞろと20人弱の警察官のようないでたちの人たちが向かいの場外馬券場へ歩いて行く。あれは警察官ではなくて場外馬券場の警備員であろう。前日から泊まりがけでここ浅草にいて、その仕事始めなのだと思われる。これから浅草では土日二日にわたる狂乱の宴が始まるのだ。つくばエクスプレスA1出口脇にある弁当屋デリカぱくぱくも店先に弁当を積み上げて朝7時から客が来るのを万全の態勢で待っている。

これがもう9時くらいになると続々と競馬ファンらが出勤してくる。地下深くに作られたつくばエクスプレス駅から長蛇の列を作ってエスカレーターに運ばれて続々と人が地上にあふれ出してくる。

競馬の何がそんなに面白いのか私にはさっぱりわからない。いろんな人になぜそんなに競馬が好きなのか、聞いてみるのだが、よくわからない。そもそもそんな儲けている人もいないようだ。中には競馬のプロがいて、現金で国税庁にバレないように大金を動かしている人もいるのかもしれないが、そんな人はごく一部であって、ここに集まってくる人たちのほとんどは損しているに決まっているのである。株のほうがまだ儲かる可能性はある。というかやり方次第で株ならば確実に儲かる方法がある。競馬にはそれはあるまい。かなりの部分が偶然性でできているからで、確実性が高いギャンブルといえばまだパチンコの方がましだろう。競馬で儲かるはずがない。

飲み屋で会ったある女性は、お酒を飲むと体を壊すかもしれないけど、競馬は体に悪い影響なくてお酒を飲んだときと同じくらいハイになれるからやるんだと言っていて、なるほどなと思った。

浅草に場外馬券場がある必然性、なくてはならない理由があるんだろうか。渋谷にも場外馬券場があるはずだが、渋谷でも同じような状況なんだろうか。渋谷も浅草もとにかくどこか別のところへ移設するなんてことは考えてもいないのだろうか。

そうした殺伐としてタバコ臭くていかがわしい雰囲気が蔵前から浅草、山谷のあたり一帯、日曜の夜まで続くのだった。

浅草の店には勝ち馬投票券、つまり馬券を置いている店が多い。土日はたいていの店が競馬中継する。実に多くの人が路地にテーブルや椅子を並べて競馬を観戦している。相撲のあるときは相撲中継を見ている。

競馬を面白いと感じるのはホモ・サピエンスのバグなのだろうか。アーリア人にせよモンゴル人にせよ馬を乗りこなすことによって交易し戦争に勝利し、子孫を大量に残した。馬乗り好きな遺伝子がそうでない遺伝子を淘汰して残ったせいで人は競馬に理由もなく、無意識に魅了されるのではなかろうか。

浅草パークホールビルはJRAの事務所や駐輪場などが入るオフィスビルなのだそうだ。やっぱりね。確かにこの建物の2階と地下には謎の駐輪場がある。無料らしいが、通勤客が利用しても良いのだろうか。つくばエクスプレス駅にも駐輪場があるがこちらは有料である。浅草辺りは地面が平らだからものすごくたくさんの人が自転車に乗っている。運転マナーも決して良くはない。極めて危険だ。坂が無いからまだなんとかなっている。

デリカぱくぱくって向島にもあるんだなあ。あと青戸と足立にもあるようだ。

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