越生には越生梅林というものがあるというのは昔東上線沿線に住んでいたのでなんとなく知っていた。小田原には曽我梅林というものがあって、熱海にも熱海梅林というものがあり、梅林のあるところはだいたい梅干しが名物なので、越生にも梅干しがあるのかなと思ったらやはりあった。
これが安くてうまい。大粒で20粒くらいで1000円いかないくらい。塩と梅の実しか使ってない本格的な梅干しで1粒50円はかなり安い(追記。この梅干しは農家の人が自宅で作って市場で売っていたものだというので、多少安いのは当たり前なのかもしれない)。
しかもこの越生の梅干しは、あまり塩辛くもなく酸っぱくもなくそれでもちゃんと梅干しの味がして、皮も薄くてやわらかくて、おいしいのだ。
昔ながらの梅干しとか言って売られているものはやたらと塩分が高くて22%とかある。なるほど昔はそうした長期保存用に塩辛い梅干しを作っていたかもしれんが、今はそんなことする必要なかろう。
今スーパーで売られている梅干しは、いわゆる調味梅干しというもので、蜂蜜を入れたり、出汁や鰹節を入れたりして味を調整しているからほんとうの梅干しの味というものがわからなくなってしまっている。たぶん塩と梅だけで梅干しを作っても簡単にうまくはならないのでいろんなものを足してごまかしているのだ。越生の梅干しみたいにシンプルに塩味も薄くして酸っぱさも控えめにしてしかもちゃんと梅干しの味がするほんものの梅干しを作るってのはたぶん超絶技巧なのだと思う。すごく熟成期間なんかも絶妙に管理しているのではないか。こういうものが出回れば普通の梅干しなんて食べられたもんじゃないと思う。安くてほんとうにおいしい梅干しを食べているのは実は埼玉県民、或いは越生に近い群馬県民なのかもしれない。
だがしかし越生の梅干しが安くてうまいことがばれて需要が高まったら値段も上がってしまうに違いない。越生の梅干しはこれからもずっとこのままでいてもらいたい。
越生はしかし池袋から東上線で行くにも一時間半はかかる。いかにも遠い。池袋あたりで越生の梅干しは売られているのではなかろうか。