亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

枕の山2

花への思い

  1. へだておほみ 身はしもなれば 九重の 雲ゐの桜 よそにこそ見れ
  2. 何し負はば 高根の花も まがふ色 なくてや見らむ 雲の上人
  3. さくら花 月の無き夜は 梢にも 衛士の焚く火を たかせてしがな
  4. みそらゆく 月影のみか 夜見れば 庭の桜も おぼろなりけり
  5. 思ふどち 夜をさへ花に あかすかな 昼の野山の ものがたりして
  6. 寝る間無き 春の夜ながら 庭ざくら 咲けば朝いも せられざりけり
  7. 起き出でて 庭の桜の 花見ると 朝餉忘れて 日もたけにけり
  8. 池水に しづく桜の かげ見れば 玉かとぞ思ふ 海ならねども
  9. △ さくら花 水の鏡も 我ながら はづかしからぬ かげと見るらむ
  10. 雨降れば 池の鏡も くもりけり しをれし花の かげは見せじと
  11. 春雨の 降る日は人も 見に来ねば 思ひしをるる 花の色かな
  12. △ 春雨に 落つるしづくも なつかしき さくらの花は 濡れてこそ見め
  13. 露かかる 桜が下の 草葉さへ 花咲くころは なつかしきかな
  14. △ 契りおきて 人待つ人も 花を見て 飽かぬゆふべは 急がれもせじ
  15. しののめの 飽かぬ別れも なかなかに 急がれぬべき 花の色かな
  16. 桜花 ほのぼの見ゆる あかつきは 別れを惜しむ 人やなからむ
  17. ○ 死ぬばかり 思はむ恋も さくらばな 見てはしばしは 忘れもやせむ
  18. あぢきなく 春は桜の 花ゆゑに 心いとなし 恋はせねども
  19. 心から 花に心を うつすかな 思ひ初めずは 思はましやは
  20. ○ さくら花 はかなき色を かくばかり 思ふ心ぞ ましてはかなき
  21. ○ 我が心 休む間もなく 疲れ果て 春は桜の 奴なりけり
  22. この花に なぞや心の まどふらむ 我は桜の 親ならなくに
  23. △ 鳥虫に 身をばなしても さくら花 咲かむあたりに なづさはましを
  24. さくら花 なずらひに見む 色だにも あらばいとかく 思はましやは
  25. ○ 桜花 深き色とも 見えなくに 血潮に染むる 我が心かな
  26. 日暮らしに 見ても折りても かざしても 飽かぬ桜を なほいかにせむ
  27. 露だにも 憂き色見せよ さくら花 さらばしひても 思ひさまさむ
  28. ありぬやと 咲きて散るまで さくら花 ひと春見ずて いざこころみむ
  29. △ 年を経て あひも思はぬ 友なれど なほうとまれぬ 花の色かな
  30. かき絶えて 桜の咲かぬ 世なりせば 春の心も 寂しからまし
  31. つねよりも 花咲くころは あやにくに 早く日数の 過ぎも行くかな
  32. 花見れば 秋の日よりも みじかきを 長き春日と たのみけるかな
  33. おなじくは とく咲き出でて とく散らぬ ものにもがなや 飽かぬさくらは
  34. をちこちに 多き桜の いかなれば 花を見る日の すくなかるらむ
  35. さくら花 入りては出づる 月のごと 散りてまた明日 咲くものにもが
  36. 松に言ふ 十かへりの花 さくらをば 年にとかへり 咲かせてしがな
  37. 桜花 色はそれかと まがふとも 消え行く雲に ならはざらなむ
  38. △ 朝ごとの さくらの露を 受けためて 世の憂さはるく 薬にをせむ
  39. △ 尋ね見む 死なぬ薬の ありと聞く 島には散らぬ 花もありやと
  40. △ 花咲きて 散らぬさくらの 種しあらば 常世の国も 行きてもとめむ
  41. △ 春ごとに にほふ桜の 花見ても 神のあやしき めぐみをぞ思ふ
  42. △ たぐひなき 桜の花を 見ても知れ わが大君の 国の心を
  43. △ 世の人は 見ても知らずや さくら花 あだし国には 咲かぬ心を
  44. から国も 花は千種に 咲くと言へど 桜ばかりは 無しとこそ聞け
  45. 汝が国に この花ありやと から人に さくらを見せて 答へ聞かばや
  46. から人に 桜見せなば その国に 帰りてめづる 花や無からむ
  47. うべなれや かほもすがたも ただ人の 種とは見えぬ 花の大君
  48. 八千種と にほふが中の親なれば うべも桜を 花と言ひけり
  49. いにしへも 花は桜と 思ひてぞ さくらを花と 名付けおきけむ
  50. 世の中に たとへむものも なかりけり 春のさくらの 花のにほひは
  51. にほふ色を 何にたとへむ さくら花 綾かにしきか 玉かこがねか
  52. 宝とて こがねも玉も 世にはあれど 桜の花を 何にかへまし
  53. △ 咲きにほふ 色はこの世の ものとしも 見えぬさくらの 花ざかりかな
  54. のどかなる 春のやよひに けさはかも いとど桜の めでたかるらむ
  55. 見てもなほ 見てもめづらし 桜花 野にも山にも ここら咲けれと
  56. ? いかにとも 心は知らぬ 心にも 見れば桜は さくらなりけり
  57. 蓬生の 狭き宿にも うゑなべて 見まくほしきは 桜なりけり
  58. 人の家の 広き桜の 花園を 見れば憂き身の 歎かれぞする

釈教・神祇

  1. 世は清く 捨てたる人も 捨てかねて 見るは桜の 花にぞありける
  2. △ 咲きにほふ 春のさくらの 花見ては あらぶる神も あらじとぞ思ふ
  3. おに神も あはれと思はむ 桜花 めづとは人の 目には見えねど
  4. ちからなき 枝にはあれど あめつちも 動かしつべき 花の色かな
  5. 桜花 咲けるやしろに なかなかの ぬさはたむけし 神はめでめや
  6. あだなりと たれか言ふらむ 神代より 変はらず春は にほふ桜を

老死

  1. 花の色は さらに経りせぬ 桜かな 朽ち残りたる 老い木なれども
  2. さくらばな ここらの春を 経ぬれども 老いたりとしも 見えぬいろかな
  3. 老いぬれど なほこそ春は 待たれけれ 桜の花の 見まくほしさに
  4. 老いぬれど 咲けるさくらの 色見れば 春のこころは 若返りつつ
  5. △ 友はみな 変はり果てぬる 老いの世に あはれ昔の 花の色かな
  6. 我が老いの すがたやさしき さくら花 むかしの春の 友と見るにも
  7. 咲く花に 老いのすがたは 恥づれども 見ではえあらぬ ものにぞありける
  8. ともすれば 涙落として 老いの身の 痴れじれしさを 花に見えなむ
  9. △ 老いぬれば もろく涙の 散る我を はかなしとこそ 花は見るらめ
  10. △ 恥ぢもせで あはれうたての 翁やと 花は見るらむ 老いのやつれを
  11. 老いのくせ 人や笑はむ 桜花 あはれあはれと 同じ言して
  12. 年ごとに まさる若木の 花見ても 歎きもえそふ 老いの春かな
  13. △ 老いの世に 若木のさくら なほうゑて いつまでとてか 花を待たまし
  14. あはれとも かけても見めや 桜花 汝れより先に 我れは散れども
  15. 死なば我れ またいつの世に 巡り来て 飽かぬ桜の 花は見るべき
  16. △ さくら花 飽かぬこの世は へだつとも 咲かば見にこむ あまかけりても
  17. △ さくら花 ちとせまでこそ かたからめ なほももとせの 春は経て見む
  18. かくながら ちよもやちよも 見てしがな 桜も散らず 我れも死なずて
  19. 長らへて 咲かむ限りの 春を経て 桜の花を 見るよしもがな
  20. ! かくばかり 飽かぬ桜の にほふ世に 命惜しまぬ 人もありけり
  21. 桜には 心もとめで 後の世の 花のうてなを 思ふおろかさ
  22. こともなく もなく桜の 花見むと 春は我が身の 祈らるるかな
  23. 人はいさ 我れは死なずて 桜花 ちよもやちよも 見むとこそ思へ
  24. とことはに 絶えせず咲けよ 桜花 我れもよろづよ 死なで見るべし

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