一番初期に詠んだ歌

たまたま当時の日記が残っていたので漁ってみる。

20才の3月13日。

> 久しぶりにこたつを出してあたりつつ松本伊代の歌など聴けり

> つれづれにうるせいやつらに鉛筆で塗り絵をしつつ春の日は過ぐ

> 金のない学生なればやきそばの三食分を晩飯に食ふ

> リプトンとトワイニングを買ひおきてけふはリプトンをいれて飲むかな

> ウィスキーの飲みおはりたる空き瓶の捨てられざれば部屋に留まる

田舎から帰省してきた直後で、田舎の愛宕山のことを

> いとけなきころより登る愛宕山のこぼてるほこらたてなほりけり

> 山の上は木のしげりしがひらかれて四方にみはらすうてなたちけり

3月21日。たぶん初の長歌

> 買ひおきし 米をかしぎて 魚屋で 買ひしめばると 野菜屋で 買ひし生姜を 醤油にて 煮て食べにけり けふのひるげに

反歌は見あたらない。このころ自炊するのがとても楽しかったようだ。

> 高来峯の土のうつはにぬばたまの黒きコーラを注ぎて飲みけり

「高来峯の土のうつは」とは「雲仙焼き」のこと。

> 電話屋が今日部屋に来て電話機をつけたのですぐ電話してみた

3月23日

> ここちよきものにぞありける広々とひとりこたつにうたたねするは

この頃寮を出て独り暮らしを始めたばかり。
こたつの歌が非常に多い。

> ここちよききはみにぞある血を吐きて床に伏したる祖父を思はで

> 電話引きはじめて届きし連絡は故郷の祖父の血を吐きぬとぞ

> わが家はいかにかあらむことしげきをりは人手も足らざるらむを

> 朝の日に窓は白みてあまだれの音にまじりて鳥のねもする

> 明けぬるに腹の具合の悪ければ外にいづるもうたてあるかな

> ひねもすに雪の降りても冬のごといとど寒くはあらぬよはかな

> 春来むとけはひはすれどたれこめて今日またふれる雪ぞくちをし

> 降る雪の雨にかはりてふりければ積もれる雪の靴にしむかな

> 固からば雪まろばしもすべからめかくゆるくてはせむかたもなし

> 雪降れば壁にむかひて日のささぬ窓もひときは白き朝かな

独学感に満ちあふれているな。
漢語も現代語もかなりかまわず使っているのがわかる。

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