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本居宣長の漢詩

06.14.2013 · Posted in 漢詩

在京時代の本居宣長の漢詩が二十数編残されているが、 凝り性な宣長君らしく、平仄は完璧。

  春日早朝
鶏鳴九陌報清晨
初日纔昇映紫宸
金殿出霞花気暖
玉楼経雨柳條新
群臣集奏千秋寿
蛮客貢陳四海珍
且識天杯元承露
聖明恩沢更含春

新年の御所の様子を詠んだものと思われる。 悪くはないが、装飾過多、という印象。 宝暦6年1月11日か。 この漢詩を作ってみて宣長はよけいに漢学では日本文化の良さを表現できない、と悟ったのではなかろうか。

  読書
独坐間窓下
読書欲暁星
孜々何須睡
一任酔群経

独り窓下の間に坐し、読書、暁星を欲す、孜々として、なんすれぞすべからく睡るべし、もっぱら群経に酔ふに任せん、 と訓めば良いか。

夜独りで窓の下に坐って読書していると、すでに夜が明けようとしている。 一心不乱、どうして眠れようか。 ただ膨大な量の経典に酔うのに任せよう。

いやー。 宣長らしい詩ではある。

宣長、普通の江戸時代の文人並みには漢詩が作れたようだ(乃木希典レベル。中島敦よりはずっとうまい)。 そのまま励めばわりかし良い線いったんじゃないか。 でも、和歌のほうが好きだったんだよなあ。 どんな違いがあったのだろう。知りたい。

  上巳
元巳春風暖
桃花照錦筵
麗人更勧酔
流水羽觴前

上巳は桃の節句であるから今の暦では四月中旬、元巳はその別名。 春風は暖かく、桃の花が錦のむしろに映える。麗人、更に酔いを勧め、羽觴(さかづき)の前には水が流れている。 明らかに曲水の宴で作った詩であろう。

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