平仄

漢詩を作ったり、漢詩作成支援ソフトなど作ったりしているので、
気になるのだが、
通常「平仄」という言葉は、
「平仄が合わない」とか「平仄を合わせる」という言い方をすると思う。

で会議に出ていて気になったのだが、
規約の言葉遣いを整合させることを「平仄合わせで」とか「平仄が合う」とか「平仄を直す」とか「平仄を正す」などというのが、
気になった。
また、Aである、ただしBの場合Cである、とかいうような複雑な規約を矛盾無く作ろうとすることも
「平仄を合わせる」とかいうようである。

いきおい、規則の条文を整えること全般を「平仄を合わせる」などと言っていて、
会議の途中「平仄」という言葉を聞くたびにびくりとする。

で、自分がどういう使い方をしているか気になって調べてみたら、
「平仄や押韻は適当なようだ」
「平仄はちょっとおかしいが、韻は一応踏んでるようだ」
「意味によって平仄が変わる漢字をなんとかしたい」
「平仄がいまいち」
「平仄はいい加減」
「押韻も平仄も割とちゃんとしている」
「平仄はやや乱調かと思うが、ちゃんと押韻している」
「平仄は完全とは言えない」
「平仄はやかましく言わない」
「押韻も平仄もきちんとしている」
「押韻も対句も平仄もほぼ完璧」
「平仄がなんだか変だ」
「平仄も押韻もめちゃくちゃ」
「平仄を守っている」
「平仄はでたらめ」
「押韻や平仄などが厳密に守られた詩」
などという言い方をしている。

「平仄があってない」
「平仄と押韻のあうように考えればよろしい」
「平仄を合わせる」
などと言っていることもある。

毛沢東の詩で
「竜虎盤踞」を「虎踞龍盤」としたり、
「天地翻覆」を「天翻地覆」としたりしているのは、
二六対、二四不同などのルールを守るため、字を入れ替えているのであって、
私はこういうのは好きじゃないのであまりやらないが
(「砂石」を「石砂」にしたり、「片雲」を「雲片」にしたりとか、あまり露骨にならない程度にはやることがある)、
「平仄を合わせる」
の原義は「文字の配列を入れ替えて音韻規則に合うようにする」
ということだろうと思う。

でまあ、
私の中では、
「平仄が合わない」というのは「つじつまが合わない」、
「平仄を合わせる」というのは「つまらぬ小手先のルールにこだわる、体裁にこだわる」という、いずれにせよネガティブな意味があって、
「校正する」とか「推敲する」のようなポジティブな意味に使われると違和感があるのだろう。
推敲、も作詩に由来する言葉だが。
あるいは漢詩を作ったこともない人が、安易に「AをBとすれば平仄が合う」などと言っているのがいやなのだろう。

どうも、法律関連のジャーゴンで「平仄」と言うことがあるのかなと思い、
検索してみると、はたして

> 規定と平仄をとった文言修正

> 規則第4条の改正に平仄を合わせ

> 財務諸表等規則に平仄を合わせるべき

などとあるから、たぶん法人本部とか法務部ではよく使われている言葉なのだろうな。
うー。
「整合をとる」という意味で「平仄をとる」とは言ってほしくないかもなあ。
「Aに整合させる」という意味で「Aに平仄を合わせる」という言い方もなんか間違ってる気がする。

追記:
ネットからも少し例文を拾ってきた。

> 規制行政庁と全体的に取り入れ方針については平仄をとりながら対応していくということになるのではないかと思っております。

> 若干報告書案内での平仄合わせで記入しましたところが、

> この中で「安全性の妥当性」という表現を使っておりますので、これと平仄を合わせて「安全性の妥当性について判断する」という形で記載の平仄を合わさせていただいております。

> 法務省の規則案にも登載しておる文書でございますので、平仄合わせで登載をしております。

つまりAという基準となる条文がすでにあって、あたらにBという報告書等を作るときなどに、
Aとの平仄合わせでBにこれこれという記載をする、などというらしい。

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