最近、北から渡ってくる鴨は放射性物質が怖いからと鹿狩りをするようになった人がいるのだが、
和歌では鹿は「ともし(照射)」ということをして採ることになっている。
五月闇(夏至くらいの夜中)に松明を焚いて、鹿の目が光るので狙い撃ちにしたのだというのだが、
今はそんな狩りの仕方はしないという。
だいたい夜は猟をしてはいけないという。
人間と鹿を間違えて撃ってはまずいからだそうだ。
しかたたぬ はやまのすそに ともしして いくよかひなき よをあかすらむ
鹿狩りに「ともし」をしたというのはこれが初出か。金葉集。
鹿はもっと山奥に行かなくてはいないのに、という意味か。
西宮左大臣の家の屏風に
順源
ほととぎす松につけてやともしする人も山べによをあかすらん
拾遺集。ほととぎすというからにはやはり五月。
屏風歌だから実景ではない。
鹿は稲作の害獣だから、駆除を兼ねて五月頃に捕るのだろうか。
それ以外、なぜ五月にとるのか理由がわからん。
別に冬でも良いはずだ。
夏はヒルが出たりして必ずしも狩猟に適した季節ではない。
宇治拾遺物語というからもう鎌倉時代だが、
[第七話 龍門の聖、鹿にかわらんとする](http://homepage3.nifty.com/batann9/ujisyuui007.htm)
という話がある。
鹿の目の間隔や色が違うので人間ではないかと疑うというから、
昔から鹿と間違って人間を射殺すということはよくあったのではなかろうか。
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