岩波古語辞典を買おうと思ったのだが、
そんじょそこらの本屋にはおいておらず困った。
結局新宿南口の紀伊国屋書店で買った。
いまどきは「全訳古語辞典」というのが流行りのようで、
何が「全訳」かといえば、教科書に載るような有名な文章は完全な現代語訳が載っているというもの。
初心者にはそれで良いかも知れないが、
私にとってはそのようなものはまったく不要でありあるだけ無駄としか言いようがない。
つまり私は、歌を詠むに際して、現代人であるから、
古代人の直感が効かない。また、だれか師匠に添削してもらうということもできない。
てにをはなど、古語文法的に正しいのか正しくないのか判断ができないといけない。
そうするとたとえば万葉集や古今集や源氏物語くらいまでのテキストに用例があるかどうかを確かめる、
という目的に古語辞典を使うわけである。
広辞苑である程度代用がきくが、
つまりは、古語に特化したコンパクトな広辞苑がほしいわけであって、
やはり岩波古語辞典を買うしかない。
同様の目的には新潮国語辞典がかろうじて使えるかもしれない。
でこの岩波古語辞典だが、他の古語辞典に比べるとかなり割高。
まあ、中学高校生の買う辞書ではないということだわな。
ところで、実朝が14才から22才までに金塊和歌集の歌を詠んだという例の話だが、
我々が古文を習い始めるのも高校に入ってからであり、
私自身、18才の時に初めて明治天皇御製集を知り、かろうじて和歌らしきものが詠めるようになって、
いくらかの数がたまりだしたのが20才くらいからだった。
こういう初心者のころはいきなり自分で万葉集や新古今集を読み解くというよりは、
古語辞典(つまりは用例集)や学習参考書(歌の歴史や解釈の仕方)を読んで学ぶのが普通であり、
当時としてもそうだった可能性は高い。
そういう学習参考書のたぐいがすでに当時あったと仮定すれば、
22才までにあのような金槐和歌集を詠んだというのもまったく不可能ではないような気もしてきた。