留魂録

古川薫全訳注「吉田松陰 留魂録」を読む。
本文自体はごく短いものであり、
獄中で一日程度で二冊同じものが書かれ、そのうちの一部は高杉晋作が紛失し、
もう一部は牢名主に預けてあったものが今日に伝わり、
この現存する原本は萩市の松陰神社に所蔵されているという。

解題、史伝などがかなりくわしい。

[留魂録](http://www.cocolee-jp.com/togyo/s/syo/ryukon.html) 全原文。
あるところにはあるものだな。

吉田松陰の歌で伝わるものはあまり多くないが、できばえはなかなか大したものだから、
ただ残っていないだけで、もっとたくさん詠んでいたのだろうと思われる。
今回かき集めてみると、
留魂録冒頭の

> 身ハたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置まし大和魂

のほか、

> 心なることのくさぐさ書きおきぬ思ひ残せることなかりけり

> 呼び出しの声まつほかに今の世に待つべき事のなかりけるかな

> 討たれたる吾れをあはれと見ん人は君を崇めて夷(えびす)払へよ

> 愚かなる吾れをも友とめづ人はわがともどもとめでよ人々

> 七たびも生きかへりつつ夷をぞ攘(はら)はんこころ吾れ忘れめや

などが最後に記されている。
「君をあがめてえびすをはらう」とはつまり尊皇攘夷ということだわな。
他にも関東へ護送中に

> かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

> 世の人はよしあしごともいはばいへ 賤が誠は神ぞ知るらん

などの歌を詠んでいるが、なんとも数が少ない。
和歌を詠むに際して漢語をやまとことばになおそうとする努力が見られるが、
普通の人にくらべて漢字の利用比率が多いように思うので、
やはりもともと和歌はあまり詠まない人だったかもしれない。

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