洛陽とか漢陽などと言う。
洛陽は洛水という川の北にあるからである。
武漢の漢陽は漢水の北にあるからだし、ソウルを漢陽とも言うのは、漢江が南に流れている都市だからだ。
「陽」とは本来は、北が高く南が低い土地のことで、南に川が流れていて北に山があれば自然とそういう地形になる。
日当たりが良い土地のことを「陽」と言う。
中国では昔からそのような地形の場所に王城を築くことが多かった。
で、甲陽だが、この地名は神戸にある。
要するに、六甲山の南麓にあるという意味だろう。
「甲陽軍鑑」の「甲陽」も、おそらく同じような理屈で名付けたのではないか、
甲府盆地の北側の辺りを言うのではなかろうかと思うが、そのような説を見かけない。
実際、武田信玄の居城である「躑躅ヶ崎館」というのは、甲府盆地の北側、県庁舎や山梨大学よりもさらに北のあたりにあった。
荻生徂徠の詩に「還館口号」というのがあり、
甲陽美酒緑葡萄
霜露三更湿客袍
須識良宵天下少
芙蓉峰上一輪高
やはり、葡萄畑というのは、日当たりのよい「甲陽」にあるのではなかろうか。
緑色の葡萄酒というのは、おそらくは白ワインのことではなかろうか。
白ワインはやや黄色味を帯びているので、緑と表現しても良いかもしれん。
「芙蓉峰」は富士山のこと。
新井白石の「春日作」という詩でも、
楊柳花飛江水流
王孫草色遍芳洲
金罍美酒葡萄緑
不酔青春不解愁
とある。「金罍」は黄金の酒壺という意味。
「楊柳花」は柳の花で、「王孫草」はツクバネソウのこと。
「江水」はおそらくは隅田川だと思うが自信がない。
「芳洲」はおそらくは吉原、もしくは芳町(元吉原)ではなかろうか。「洲」には島とか中州の意味がある。
吉原の地形はお歯黒どぶに囲まれていてまさに「洲」である。「芳」と「吉」は通じる。
となると、おそらく吉原の情景を詠んだのではなかろうか、と思われてくるのである。
でまあ、この「春日作」は詩吟で有名らしいのだが、
私の解釈で訳してみると、
「山谷堀を通って川船で吉原へ向かうと、岸の柳並木の花が飛んで隅田川に流れていく。日本堤はツクバネソウで緑一色だ。郭に登って黄金の酒壺に入った緑色の葡萄酒を飲む。春に酔わねば、憂さを晴らせない。」となってずいぶん違う。
「緑ワイン」で検索すると、Vihno Verde というポルトガルのワインがあるそうだ。
英語版の wikipedia によれば、熟成させたワインに対して新酒のワイン。
樽に詰めて一年以内、赤、白、ロゼもあり得て、若干発泡性であるようだ。