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新撰和歌 巻第四 恋・雑 荓百六十首 (2/2)

05.18.2016 · Posted in 新撰和歌

281 おもふどち まとゐせるよの からにしき たたまくをしき ものにざりける

282 人はいさ 我はなき名の をしければ むかしもいまも しらずとをいはむ

283 わが身から うき名のかはと ながれつつ 人のためさへ かなしかるらむ

284 あまぐもの よそにも人の なりゆくか さすがにめには 見ゆるものから

異本歌、いづくにか世をばいとはむ世中に老をいとはぬ人しなければ

285 いづくにか 世をばいとはむ 心こそ 野にも山にも まどふべらなれ

286 月夜には こぬ人またる かきくもり あめもふらなむ わびつつもねむ

287 おそくいづる 月にもあるかな 足引の 山のあなたも をしむべらなり

288 露だにも なからましかば 秋の夜を たれとおきゐて 人をまたまし

289 ながれても なほ世の中を みよしのの 滝の白玉 いかでひろはむ

290 いまはとて かれなむ人を いかがせむ あかずちりぬる 花とこそ見め

291 ひかりなき たにには春も よそなれば さきてとくちる もの思ひもなし

292 色見えで うつろふ物は 世のなかの 人の心の 花にぞ有りける

293 あまのすむ さとのしるべに あらなくに うら見むとのみ 人のいふらむ

294 いろもなき 心を人に そめしかば うつろはむとは おもはざりしを

295 ふる里は みしごともあらず をののえの くちしところぞ こひしかりける

296 ありそ海の はまのまさごと たのめしは わするることの かずにぞ有りける

297 すみよしの きしのひめ松 ひとならば いく代かへしと とはましものを

298 ゆきかへり ちどりなくなり はまゆふの 心へだてて おもふものかは

299 すみよしと あまはいふとも ながゐすな 人わすれぐさ おふといふなり

300 おもひつつ ぬればや人の 見えつらむ 夢としりせば さめざらましを

301 もののふの やそうぢ川の あじろぎに ただよふなみの ゆくへしらずも

302 わすらるる 身を宇治ばしの 中たえて こなたかなたに 人もかよはず

303 いまぞしる くるしきものと 人またむ さとをばかれず とふべかりけり

304 わすれ草 なにをかたねと おもひしを つれなき人の 心なりけり

305 おほあらきの もりのしたくさ おいぬれば こまもすさめず かる人もなし

306 あきの田の いねといふとも かけなくに ををしとなどか 人のいふらむ

307 うつせみの よにしもすまじ 霞たつ みやまのかげに 夜はつくしてむ

308 いそのかみ ふる野の道も こひしきを しみづくみには まづもかへらむ

309 神無月 しぐれふりおける ならのはの なにおふみやの ふることぞこれ

310 またばなほ よりつかねども 玉のをの たえてたえては くるしかりけり

311 ながれくる たきのしら玉 よわからし ぬけどみだれて おつる白玉

312 世の中に たえていつはり なかりせば たのみぬべくも 見ゆるたまづさ

313 たがために ひきてさらせる いとなれば 夜をへてみれど しる人もなき

314 いまさらに とふべき人も おもほえず やへむぐらして かどさせりいはむ

315 わくらばに とふ人あらば すまのうらに もしほたれつつ わぶとこたへよ

316 我が宿は みわのやまもと 恋しくは とぶらひきませ すぎたてるかど

317 うれしきを なににつつまむ から衣 たもとゆたかに たたましものを

318 秋くれば 野にも山にも ひとくだつ たつとぬるとや 人の恋しき

319 わがせこめ きませりけりな うくやどの 草もなびけり 露もおちたり

320 おくしもに ねさへかれにし 玉かづら いつくらむとか われはたのまむ

321 山のはに いさよふ月を とどめおきて いくよみばかは あく時のあらむ

322 我がやどの 一むらすすき かりかはむ きみがてなれの こまもこぬかな

323 あさなけに 世のうきことを しのぶとて ながめしままに としをへにける

324 あはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれ

325 世の中は うけくにあきの おく山の この葉にふれる 雪やけなまし

326 あさぢふの をののしのはら しのぶとも 人しるらめや いふひとなしに

327 やまびこの おとづれじとぞ 今は思ふ われかひとかと たどらるる世に

328 わびはつる ときさへものの かなしきは いづれをしのぶ 心なるらむ

329 みはすてつ こころをだにも はふらさじ つひにはいかが なるとしるべく

330 伊勢のうみの あまのたくなは うちはへて くるしとのみや おもひわたらむ

331 かくしつつ よをやつくさむ 高砂の をのへにたてる まつならなくに

332 おもふとも こふともあはむ ものなれや ゆふてもたゆく とくるしたひも

333 あはれてふ ことのはごとに おく露は むかしをこふる なみだなりけり

334 思ひやる こころやゆきて 人しれず きみがしたひも ときわたるらむ

335 ありはてぬ いのちまつまの ほどばかり うきことしげく おもはずもがな

336 あひ見ぬも うきもわが身の から衣 思ひしらずも とくるひもかな

337 われしなば なげけまつ虫 うつ蝉の 世にへしときの ともとしのばむ

338 おもひいづる ときはの山の いはつつじ いはねばこそあれ こひしきものを

339 わすられむ ときしのべとぞ 浜ち鳥 ゆくへもしらぬ あとをとどむる

340 みちしらば つみにもゆかむ すみの江の きしにおふといふ 恋わすれ草

341 ほのぼのと あかしのうらの 朝ぎりに 島がくれゆく 船をしぞ思ふ

342 いはのうへに たてる小松の 名ををしみ ことにはいはず こひこそわたれ

343 あふさかの あらしのかぜの さむければ ゆくへもしらず わびつつぞゆく

344 あはれてふ ことこそうけれ 世の中に おもひはなれぬ ほだしなりけり

345 足引の 山のあなたに いへもがな 世のうきときの かくれがにせむ

346 こひこひて まくらさだめむ かたもなし いかにねし夜か 夢にみえけむ

347 みやこ人 いかがととはば やまたかみ はれぬ思ひに わぶとこたへよ

348 つつめども 袖にたまらぬ 白玉は 人を見ぬ目の なみだなりけり

349 ぬしやたれ とへどしら玉 いはなくに さらばなべてや あはれとおもはむ

350 こひしきも こころよりある ことなれば われよりほかに つらき人なし

351 あまのかる もにすむ虫の われからと ねをこそなかめ よをばうらみじ

352 ちはやぶる かものやしろの ゆふだすき ととひもきみを かけぬひぞなき

353 いまこそあれ われもむかしは をとこ山 さかゆくときも ありこしものを

354 ひさしくも なりにけるかな 住の江の 松はちとせの ものにぞ有りける

355 かぜのうへに ありかさだめぬ ちりのみは ゆくへもしらず なりぬべらなり

356 こひせじと みたらし川に せしみそぎ 神はうけずも なりにけるかな

357 若菜つむ かすがの野べは なになれや 吉のの山に まだゆきのふる

358 みわの山 いかにまちみむ としふとも たづぬる人も あらじと思へば

359 いく代へし いそべの松ぞ むかしより 立ちよるなみや かずをしるらむ

360 しら玉か なにぞと人の とひしより 露とこたへて きえなましものを

361 ながれては いもせのやまの なかにおつる よし野の滝の よしや世の中

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