新撰和歌2

投稿者: | 2016年5月20日

「新撰和歌」みてるとけっこうわけのわからない歌とか、あまり面白くない歌も含まれている。
わけのわからない歌を「古今集」などで確かめてみると、
貫之本人のせいか途中で写した人のせいかは知らないが、間違っているものも多い。

「古今集」に比べれば「新撰和歌」のほうが雑な印象だが、
そりゃまあ、「古今集」はいろんな人がきちんと校正した結果が今日に残っているわけだから、
それにくらべて貫之の私撰集のほうにあらがあるのは仕方がないのかもしれない。

で、「本朝文粋」が藤原明衡によって後冷泉天皇の時代に成立していたのは間違いないことだし、
その中に紀淑望による「古今和歌序」が当初から収められていたのもうたがいようがない。
でおそらくこれはもともと「序」として書かれたのではなくて、後で「本朝文粋」の「序」の章にまとめられたのであろうということがうかがえる。
そして「序」は「詩序」と「和歌序」に分かれており、
「詩序」には一から四がある。
和歌序は

* 古今
* 新撰
* 奉賀村上天皇四十御筭
* 中宮御產百日
* 女一宮御著袴翌日宴
* 左丞相花亭遊宴
* 賀玄宗法師八十之齡
* 讚法華經廿八品
* 春日野遊
* 泛大井河各言所懷
* 泛大井河詠紅葉芦花

となっており、みな漢文である。
歌合の序はもともと仮名で書かれたものもあって、仮名序というものがもともとなかったわけではない。

古今仮名序の初出は「元永本古今和歌集」であり、白河院の頃に源俊頼が作ったと考えてよい。
そしてこの仮名序も、おそらくは俊頼が真名序を適当に和訳したものだ。
俊頼は確かに和歌は優れているが「俊頼髄脳」などみると歌論はさんざんであって、「古今仮名序」の支離滅裂な文章と良く似ている。

それにくらべて古今の真名序は内容はともかくとして、簡潔で理路整然としている。
おかしなことをくどくど書いたり、脱線したりしてない。
貫之の新撰和歌序にしても、まあ内容や簡潔さというものはともかくとして、まっとうな文章であって、俊頼髄脳や古今仮名序のような悪文ではない。
そもそも貫之は「土佐日記」のような見事な名文を書けるひとなわけだから、
それほどの人が「古今仮名序」のような頭のおかしい文章を書くはずがない。

それで私としてはますます古今集仮名序は源俊頼がでっちあげたものであろうという確信を深めた。
古今集仮名序を、貫之が書いた、仮名文の歌論の先駆などとして持ち上げるのは大問題だ。

私としてはさらにすすめて、「竹取物語」や「伊勢物語」も貫之が書いたことを立証したいが、こちらはまだ手つかずだ。
だが文体を「土佐日記」と比較すれば良いだけだから、
貫之著かどうかを突き止めること自体は(要する手間ひまはともかくとして)それほど難しくはないだろう。

それでまあ、これも新撰和歌を見ていて気付いたのだが、

> 内侍のかみの右大将ふぢはらの朝臣の四十賀しける時に、四季のゑかけるうしろの屏風にかきたりけるうた
> 素性
> かすが野に わかなつみつつ よろづ代を いはふ心を 神ぞしるらむ

内侍のかみ、つまり内侍の長官の尚侍は、ここでは藤原満子のこと、その兄の藤原定国が右大将でその四十の賀、という意味。
つまり、新春に若菜を摘んで献上するというのは主君の長寿を祈念する祝賀行事であった。
ここでは素性が藤原定国を祝っている。
単に春の七草を食べれば寿命が延びると信じられていただけではない。
ということは、

> 仁和のみかど、みこにおはしましける時に、人にわかなたまひける御うた
> 君がため 春の野に出でて わかなつむ わが衣手に 雪はふりつつ

これは、光孝天皇が即位する前、時康親王であったときに、父の仁明天皇か兄の文徳天皇に奉った歌ではなかったか。
年下の清和天皇、陽成天皇にささげた歌である可能性は低いだろう。

また、これも新撰和歌を見ていて気付いたのだが、『後撰集』読み人知らず

> ふる雪は 消えてもしばし とまらなむ 花ももみぢも 枝になきころ

定家はこれを本歌取りして

> みわたせば 花ももみぢも なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ

を詠んだのは間違いなかろう。
もちろん「秋の夕暮れ」は清少納言「枕草子」の影響だし、
『源氏物語』第十三帖「明石」

> いとさしも聞こえぬ物の音だにをりからこそはまさるものなるを、はるばると物のとどこほりなき海づらなるに、なかなか、春秋の花紅葉の盛りなるよりは、ただそこはかとなう茂れる蔭どもなまめかしきに、

の影響も受けているのである。
ただ単に禅的ダダイズムの歌ではなくて、どちらかといえば平安王朝の雰囲気をコラージュした作品であったと言うことができよう。

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