哀傷歌

景樹

> 玉となり 天がけるとも 蓮の葉の 上に心は 結びとめけむ

景樹

> いかなれば 浅茅が原に 行く人の つゆなる我を 残しおくらむ

赤染衛門

> 雨降れば みづに浮かべる うたかたの 久しからぬは 我が身なりけり

赤染衛門

> 秋風に くだくる草の 葉を見てぞ 身の固からぬ ことは知らるる

赤染衛門

> いつまでか こゑも聞こえむ やまびこの よろづにつけて ものぞかなしき

後鳥羽院の四百回忌に
後水尾院

> 恋ひつつも 鳴くや四かへり ももちどり 霞へだてて 遠き昔を

加茂のあがたぬし身まかり給ひけるをいたみてよめる
鵜殿余野子

> あま雲の 中にや君は まじりにし しぐるる空を 見ればかなしも

いとけなき子のうせしころ
土岐筑波子

> むすびつと 見そむるほども あらなくに はかなく消えし 草の上の露

土岐筑波子

> なき魂の あるを恋しと 思ひせば 夢路にだにも 立ちかへらなむ

土岐筑波子

> いはけなく いかなるさまに たどりてか 死出の山路を ひとりこゆらむ

源重澄

> 子を思ふ 道はいかなる 道なれば あるを見るにも なきが恋しき

橘曙覧

> きのふまで 我が衣手に とりすがり 父よちちよと 言ひてしものを

母の空しくなり給ふを聞く日に
真淵

> 今はとも 人を見果てぬ 悔しさは つひの我が身の 世にも忘れじ

身まかり給ひけるのちにふるさとに帰りて、またあづまに下るとて
真淵

> 泣く泣くも 別れしときを 別れにて 別るる親の 無きが悲しき

倭文子が身まかりしを痛みて
真淵

> 萩が花 見れば悲しな 去にし人 帰らぬ野辺に にほふと思えば

真淵

> あらきはる 新喪の秋は 立つ霧の 思ひ惑ひて 過ぐしだにせじ

利秋みまかりし時に
真淵

> 今は世に なしと聞くこそ かなしけれ あるにもあはで 年は経ぬれど

真淵

> 秋風の 空に今はと 行く蛍 みるみるきゆる 世にもあるかな

荷田在満みまかりし時に
源貞隆

> 世の中は あだなるものと 知りつつも かからむとしも 思ひきや君

源貞隆

> あたらしや 露にしをれし ふじばかま かぐはしき名は 世に残れども

蘆庵みまかりし時
景樹

> 親しきは 無きがあまたに なりぬれど 惜しとは君を 思ひけるかな

伴蒿蹊の(むすめ)の、とみの病ひにむなしきと聞きて
秋成

> よはひとて 人の祝ふは 憂きことの 数そふ年の 積もるなりけり

冷泉大納言の墓をとぶらひて
秋成

> しきしまの 道しるべせし 君とへば さがのの原の 苔の下露

小澤蘆庵初月忌
景樹

> 親しきは なきがあまたに なりぬれど 惜しとは君を 思ひけるかな

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