デーテ 15. 姪の出戻り
ある日いきなり朝早くゼーゼマンさんから呼び出しがあって、これはハイディが何事かしでかしたかと、お叱りがあるのかと思い、あわてて訪ねて行ったら、「ハイディが山が恋しくてホームシックのあまり夢遊病になってしまった」と言われたのよ。ハイディも姉のアーデルハイトと同じ夢遊病の気があったということなのかしら。 最初は、フランクフルトで白パンを買って一日で山に帰るなんて駄々をこねていたけど、案外ハイディもクララと一緒に町の暮らしに慣れて楽しんでいるとばかり思っていたわ。そりゃあ、よそ様のおうちで、ロッテンマイヤー女史に監督されて、厳しくしつけられたりして、多少は窮屈だったかもしれないけど、まさかそんなくよくよと思い悩んで、ほんとうの病気にまでなってしまうなんて。なんて手間のかかる子なのでしょう。 ゼーゼマンさんは、ものすごい剣幕で、「今日すぐにも引き取って山に返して欲しい」というのだけど、あまりに急な話で私はどうしていいのかわからなかったわ。だって私は毎日シュミットさんの事務所でニューギニア植民地に最近開設した出張所と連絡をとりあって、東アジアや太平洋の島々の物産を仕入れるのに忙しくって、一日たりとも職場を離れることはできなかったし。それに、いったんハイディをアルムおじさんに押しつけて、それを無理矢理連れ出しておいて、親戚づきあいもこれきりだからもう二度とくるなと言われて、もののはずみと… 続きを読む »