顕季

たづね来ぬ先にも散らで山桜見るをりにしも雪と降るらむ

山高みをのへに咲ける桜花散りなば雲の晴るるとや見む

しぐれつつかつ散る山のもみぢばはいかに吹く夜の嵐なるらむ

やまびこの答へざりせばほととぎす他に鳴く音をいかで聞かまし

さりともと思ふばかりや我が恋ひの命をかくるたのみなるらむ

秋風になびくすすきと知りながらいくたびそこに立ち止まるらむ

秋の夜は人待つとしもなけれども荻の葉風におどろかれつつ

ちとせまで君が摘むべき菊なれば露もあたには置かじとぞ思ふ

風はやみなびく稲葉の葉の上にいかでおくらむ秋の夜の露

霧晴れぬ小野の萩原咲きにけりゆきかふ人の袖にほふまで

散りかかる細谷川に山桜たづぬる人のしるべなりけり

試みにさてもや春はうれしきと花なき年にあふよしもがな

青柳の糸吹き乱る春風もいかに苦しきものとかは知る

雪のうちにつぼみにけりな梅の花散る明け方になりやしぬらむ

としまよりとわたる船のともやかたやかたつれなきいもが心か

心あらばこよひの月をからくにの人もながめてあらざらめやは

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