百人一首

投稿者: | 2014年3月2日

小倉百人一首ネタでなんか書こうかとも思ったのだが、
まず、秀歌と言えるのは全体の三分の一ほどであって、
定家ともあろう人がこんな下手くそな歌の選び方をするだろうか。
また、定家は新勅撰集を一人で選んだのだが、
そこには順徳院の歌も後鳥羽院の歌も選ばれてない。
歌の内容も承久の乱の後のものであって、
定家がそのような歌を選ぶことは非常に考えにくい。

順徳院が勅撰集に採られたのは1251年の続後撰和歌集からだが、
藤原定家はその10年前に死んでいる。
順徳院や後鳥羽院が1251年にはすでに名誉回復されていたとしても。

> 人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は 後鳥羽院

> ももしきや ふるき軒ばの しのぶにも なほあまりある 昔なりけり 順徳院

この二首で締めくくられている小倉百人一首は、明らかに鎌倉幕府と北条氏に喧嘩を売っているのであるが、
こんなものがおおっぴらに定家の選として鎌倉時代に流通していたなどということは、考えにくい。

ほとんど同じ内容で定家が選んだとされる百人秀歌には後鳥羽院も順徳院も入ってない、
源融の歌が古今集のままになっている。
時代的にはこちらの方が自然だが、
あまりにも自然なところが不自然だ。
1951年に存在が確認されたとか、とてもじゃないが信用できない。
だれか、小倉百人一首が時代にあってないことを察して作り替えたものに違いない。

冒頭の天智天皇の

> 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ 我が衣手は 露にぬれつつ

にしても、陽成天皇の

> つくばねの 峰よりおつる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる

にしても、あまりにも凡庸な駄作であり、かつ本人の作である可能性はほとんどない。
また、
蝉丸

> これやこの 行くも帰るも わかれては しるもしらぬも 逢坂の関

とか喜撰

> わが庵は 都の辰巳 しかぞ住む 世を宇治山と 人はいふなり

にしても、多少もののわかった人なら、わざわざ百人の中に入れるはずもない、
おもしろくもおかしくもない歌だ。
俊成の歌も

> 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

などと言う抹香臭い歌が採られているのだが、
これもやはり後世の仏教思想の影響が感じられる。
紛れもない俊成の真作ではあるが、なぜわざわざこれなのかと。
そのほか坊さんの歌で良くないものが多い。
定家の

> こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ

なんでこんな変な歌を選ぶかなあ、って気がする。
ていうか定家の恋の歌はなんかどれも作り物っぽくて白々しくって。

> 駒とめて 袖うちはらふ 影もなし 佐野のわたりの 雪の夕暮

だと丸谷才一の受け売りになって悔しいから、

> 旅人の 袖ふきかへす 秋風に 夕日さびしき 山のかけはし

とかでどうよ。
あれっ。なんかほとんど同じっていうか、同工異曲というか。

小倉百人一首は順徳院までで終わっているから武士が栄え公家が衰えた時代の和歌が含まれない。
さらに江戸時代の庶民の歌も、国学者の歌もない。
このことが、どのくらい和歌の理解を妨げているかしれない。
非常にまずい教材だという気がする。

もし今、和歌を学ぶ人のために百人選ぶとしたら、
私なら、
江戸後期、香川景樹、上田秋成、小澤蘆庵でしめくくると思う。
宣長と真淵も入れていいけど田安宗武はどうかと思う。
ていうかこの辺りの人たちの歌はおもしろいんだが、あんまり膨らませるのもバランス崩すわな。
江戸前期は、後水尾院、細川幽斎、松永貞徳。
室町時代は、あまり思いつかないが、正徹と太田道灌を入れたい。
正徹は食わず嫌いだったが割と良い歌を詠む。
少なくとも頓阿よりはずっとましな気がする。
南北朝は、後醍醐天皇、後村上天皇、宗良親王、光厳院。
鎌倉後期は、京極為兼、伏見院、亀山院。
鎌倉前期には、宗尊親王あたりを押さえたい。
平安時代の歌人には、後拾遺集の選者の藤原通俊と白河院を入れてやりたいし、
二条天皇と二代后はぜひ入れたいし、
醍醐天皇や宇多天皇の歌が入ってないのはけしからんことである。
清少納言とか紫式部は別に入れんでいい。
万葉時代は、柿本人麻呂、山部赤人、山上憶良、額田王、くらいでいいんじゃないか。
額田王のついでに天武天皇を入れたい気もする。
家持あんまり好きじゃない。入れてもいいけど。
古歌にはやはり難波津の歌と浅香山の歌を入れておきたい。

そうするとなんとか和歌の通史というものが見えてくると思う。

香川景樹以降を入れるとわけわかんなくなるからこの辺で止めておくのがとりあえず和歌の理解という意味では無難だと思う。

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