textual criticism関係

[加藤隆「新約聖書はなぜギリシャ語で書かれたか」大修館書店](http://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E7%B4%84%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E8%AA%9E%E3%81%A7%E6%9B%B8%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%8B-%E5%8A%A0%E8%97%A4-%E9%9A%86/dp/4469212369/)。
面白い。
amazonの書評も読んでみたが、割とけなす人がいるんだな(笑)。

ネタバレになるが、
パウロの書簡はともかくとして、
マルコ福音書がなぜギリシャ語でかかれなくてはならなかったかというと、
エルサレムにおいて、キリスト教徒は、
ユダヤ教に改宗し共通語としてギリシャ語を話す外国人(ヘレニスト)と、
イエスの直弟子たちに導かれているもともとのユダヤ人が居て、
このうちのヘレニストが迫害されたり殉教(ステファノら)したりする。
それでイエスの直弟子らを批判する書としてギリシャ語でマルコ福音書が書かれ、
しかもエルサレムに居る指導者らからは得られない、
ガリラヤなどでイエスの活動(奇跡など)の伝承を取材して掲載したのだという。
確かに、イエスの弟子たちは福音書の中で何度も何度も怒られている。
特にマルコ福音書にそれが顕著であるという。

原始キリスト教では、エルサレムのキリスト教共同体はユダヤ教化しつつあったという
(いや、ユダヤ教化しつつあったのではなく、もともと純然としたユダヤ教の一部だったということだろう)。
しかし、ガリラヤやアレクサンドリアなどでは別の共同体が存在していたという。
ギリシャ語の福音書が出てきたのはエルサレム以外の場所の共同体であろうし、
それはすでに「反ユダヤ教化」しつつあったキリスト教だったろうし、
イエスのガリラヤの布教活動について詳しく記述し、
しかもエルサレム共同体に残留した直弟子らを厳しく批判しているマルコ福音書は、
ガリラヤ起源である、とも言えそうだ。

[wikipediaのヘレニスト](http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AC%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88)。
上記著書では、ヘレニストとは、もともと異邦人がユダヤ教に改宗して共通語としてギリシャ語を話す人たち、
と言っているが、wikipediaではユダヤ人の中でユダヤの地を離れて国際語であるギリシャ語を話すようになった人たち、とある。
ギリシャ語を話すユダヤ人という意味では同じだが、言ってることは真反対である。

[バート・D・アーマン著、松田和也訳「捏造された聖書」柏書房](http://www.amazon.co.jp/捏造された聖書-バート・D-アーマン/dp/4760129421/)。
これまた面白い。
しかしamazonには書評がないので、amazon.comに行ってみる。
[Misquoting Jesus: The Story Behind Who Changed the Bible and Why](http://www.amazon.com/Misquoting-Jesus-Story-Behind-Changed/dp/0060859512/)。
これは読むべき。ごく普通の聖書学入門として読める。

この本も主にマルコ福音書を取り上げている。
マルコに出てくるイエスは野性的で怒りっぽく、日本でいうところの、荒法師に近い。
山野で修行し、奇跡を起こす超能力を身につけたと称し、
自分の奇跡を起こす力を信じない信徒たちに怒り、叱りつける。
独裁的な、新興宗教の教祖の姿そのものだ。
ともかくマルコのイエスは荒々しく怒りっぽい。
モーセに対して神が怒りっぽかったように。
しかし、ルカになるとイエスは慈悲深い人になってしまう。

[山本七平「禁忌の聖書学」新潮社](http://www.amazon.co.jp/禁忌の聖書学-新潮文庫-山本-七平/dp/4101294216/)。
最初のヨセフスの辺りは面白い。
後はごちゃごちゃしてて何とも言えない。
ていうか、聖書学的に面白いのは新約聖書がどうやって成立したかってことで、
旧約聖書の薀蓄はこのさいどうでも良い。

[ケン・スミス著山形浩生訳「誰も教えてくれない聖書の読み方」晶文社](http://www.amazon.co.jp/誰も教えてくれない聖書の読み方-ケン-スミス/dp/4794964730/)。
期待して読んだがつまらなかった。ただの雑学。

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