十一日の月

新月は日没時に西の地平線上に出てすぐに沈んでしまうので、実際には見えない。
目に見えるようになるのは「三日月」からだが、夕方西の空に出てすぐに沈んでしまう。

十五夜、満月は夕方東の空から昇り明け方西の空に沈む。つまり夜中見えるということだ。
十六日の月は「いざよひ」、
十七日の月は「たちまち」、
十八日の月は「ゐまち」、
十九日の月は「ねまち」、
二十日の月は「ふけまち」、
つまりだんだんに東の空から月が昇ってくるのが遅くなる。
月の出が日に日に、50分ほど遅くなっていく計算。

十一日の月は「とをあまりのつき」と言うらしい。
『伊勢物語』82段「渚の院」

> ・・・帰りて宮に入らせ給ひぬ。夜更くるまで酒飲み、物語して、あるじの親王、酔ひて入り給ひなむとす。十一日の月も隠れなむとすれば、かの馬頭の詠める。

> 飽かなくにまだきも月の隠るるか山の端逃げて入れずもあらなむ

> 親王にかはり奉りて、紀有常、

> おしなべて峰も平になりななむ山の端なくは月も入らじを

ここで舞台装置として出て来る「十一日の月」というのはつまり、
夜明けよりも三時間あまり早く西の空に沈んでしまう月、
もう少しで夜が明けるのでそれまで飲みあかしましょうよということになる。

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