レオナルド・ダ・ヴィンチの本をいっぱい借りてくるが、
すでにルネサンスの頃にフランス人とイタリア人の間で
「科学のない芸術は無だ」(Ars sine scientia nihil est) とか
「芸術のない科学は無だ」(Scientia sine ars nihil est)
などという問答があったらしく、
ほとんどまったく同じ議論が未だに繰り返されていて、
基本的にはなんの進展も見られていない。
おそらくルネサンス以来今日まで同じようなことが何度も何度も起きていて、
サーベイする前からその膨大な試行錯誤の歴史を想像するだけで気が遠くなる。
何年も自分なりにやってみると、
やはりどうしようもなくうさんくさいものが目に付くようになってきた。
知ればしるほど飽きてつまらなくなるというのは良くない傾向だが。
レオナルドは芸術と科学を融合させた天才だと言われているが、
実は話は逆だと思っている。
レオナルドの時代までは芸術と科学に区別はなかったのだが、
彼の時代でついに決定的な違いが生まれ、
その後ものすごい勢いで離れ遠ざかってしまったのではないか。
芸術と科学は対立概念なのだと思う。
ars とか scientia という言葉が今と同じ意味に使われるようになったのも、
西洋のルネサンス以後、レオナルド以後なのではないか。
イスラムや中国で芸術と科学の対立概念などそもそもなかったような気がする。
古代ギリシャにも中世にもなさそうだし。
となると近代西洋固有のものではないか。
つまりレオナルドとかあるいはカルダノなんかは、
科学と芸術が分離する最後の時代の人だったのじゃないか。
科学と芸術を融合させるに、
ルネサンスやレオナルドを見習えなどというのは見当違いなのではないかと思うのだ。