斎藤さん アラカルト

Kindle Unlimited に反応したのは一部のコアな KDP ユーザーだけだったように思う。
多くの人々はまだその存在が意識の片隅をかすめただけなのだろうと思う。
多少売れたり読まれたりしたのは一過性だったのではないか。
一部のユーザーが読みたいものを一通り読み終わってしまうと沈静してしまう。
これが継続して、右肩上がりになる、というのは早計だった。
もちろん長期的にこれからずっと観察してみる必要がある。

「内親王遼子」がまったく売れておらず「エウメネス」はそこそこ売れているのは(といっても何千部も売れたわけではない)、
「内親王遼子」が私の完全オリジナルな架空のキャラクター、架空の世界を描いた作品であるのに対して、
「エウメネス」は世界史を一通り学んだ人には既知の世界だからだと思う。

とすると、今度の「斎藤さん アラカルト」は売り方を工夫しないと、「内親王遼子」状態になりかねない。
「斎藤さん」にはいろんな要素を盛り込んだ。いろんなタイプの読者の琴線に触れるように、
いろんなストーリーをアラカルトにしてみたのだ。
一番売れ筋のミステリーや推理こそないが、ファンタジー系の風味も少し加えてみたし、
藤原頼長、レオニダスなど、歴史物もやり、
剣豪物もやり、
三島由紀夫のオマージュみたいなものを書いた。

一通り私が書くジャンルが一冊に網羅されている。
長編にはレビューがつかない。ついててもろくに読んでないってことはもうわかっている。
短編集なのでさっと読んでさっとレビューを書くこともできるだろう、という計算もある。
「斎藤さん アラカルト」が売れなきゃもうどうしようか。あとは営業くらいしかやることは残ってないんじゃないか。

どれが面白かったか。どれがつまらなかったか。
レビューが集まると今後の参考になるのだが、そうもならないだろうなあ。

最初は「斎藤さん」というタイトルにしようと思ったが調べたら同じタイトルの漫画(「斎藤さん!」)が既にあった。
そんで「アラカルト」を付け足した。

今回三島由紀夫の「春の雪」を下敷きにして「春の雪 外伝」を書いたわけだが、
どうも、おんなじことを何度も繰り返して書いているところがある。
エフェクトとして巧んでそうしているというよりは、ぼけ老人が前書いたことを忘れて、
或いは推敲不足のために消し忘れているようなところがある。
文章もすごく切れるところと、だらだら書いているところがある。
明らかに文章の質にムラがある、と私には思える。
意味はまあわかるがこういうふうに書いた方がわかりやすいんじゃないか、これは一箇所でまとめて短く記述すれば済む話じゃなかろうか、
と思ったところも多々ある。
ほんとのところ、この「豊饒の海」という長編は、三島が死を覚悟して、遺書代わりに、一気呵成にあまり推敲もせずに書いたものであろう。
なので、長文のだらだら書かれたエッセイのような気分で読むには良いのかもしれん。
実は三島由紀夫をきちんと読み始めたのはこれが初めてなのだが。

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