某所でちらっとお見かけした人のツイートを見ていたら浅草ではしごしたと書いてあって、興味深く読ませてもらったのだが、私がふだん飲み歩いている界隈とまったく完全にかぶっているのにもかかわらず、私の行ったことのある店は一軒もなかった(行ったことはないがGoogleマップでチェックしたことがある店は1つだけあった)。なんて恐ろしい町なのでしょう。浅草というところは。
特に観音裏あたりは、カウンターだけの、五人とかせいぜい十人くらいしか入れない、事実上完全予約制の個人経営の店が多い。安くて気軽な店もあるがその真逆の店もある。うなぎや寿司やふぐなどの超高級店もあれば、がさつな安酒屋もある。性格や趣味が違えば通う店も町の見え方も同じ空間同じ地域であるにもかかわらず、まったくちがってくる。こんな町が浅草以外にあるのだろうか。京都の祇園や先斗町あたりがそうだろうか。
浅草にちょくちょく通い始めたのは三年前で、昨年末に浅草に部屋を借りて以来二ヶ月弱、ようやく浅草に飽きてきた。もちろんまだ知らない世界はいくらでもあるからそんな簡単に飽きてしまうということはないと思う。いまだに通勤するのもまた町歩きのうちみたいなところはある。ああこんな横町があったのか、こんな店があるのかと観察しながら町を歩いている。
某店は浅草が地元のおばちゃんたちのたまり場になっているのだが、吉原に最近新しいスーパーができたんだよねえなんて話をしている。ビッグエーのことだ。ビッグエーは正確に言えばディスカウントストアだけど。千束通りなどもおばちゃんたちはバスで移動するらしい。アーケードをはしからはしまで歩いたって10分くらいしかかからないんだけどね(おばちゃんの足だと20分くらいかかるのかもしれないが)。
浅草はインバウンド向けのテーマパークと化してしまったという某記事を読んだのだけど、それを言ったら京都の清水寺に登る坂道だって、新京極通りだってそうだろう。そういう観光客向けのキャピキャピした場所はあってもいいんだよ別に。合羽橋商店街だってインバウンドだらけだ。しかしそうではないところもある。日本人客でも容易に入っていけない、理解に時間がかかるところもある。入谷や吉原、山谷、向島などのかなり個性的な町も隣接している。何が言いたいかっていえば、よそからふらっと来てうわっつらだけみて浅い記事を書くなってことだよ。浅草を語りたいなら何日も何年もかけて通ってみて町に浸って同化してみて、それからあれこれ言ってもらいたい。なんなんだよ下町情緒ってさ。それってあなたの勝手な思い込みですよね?そういうの上野や鶯谷や谷中や赤羽や十条や浅草橋や錦糸町あたりにいけばいくらでもあるじゃん。絶滅危惧種みたいに言わないでほしい。
浅草にニトリやセリアや無印良品やドン・キホーテやオーケーやビッグエーやライフなんかの店がどんどん入ってくるのは良いことなんだよ。ドラッグストアに Tax Freeコーナーがあるからなんだっていうんだよ。人がたくさん集まるってことは良いことじゃないか(場外馬券場は要らんと私は思うが)。日本らしさってことよりまずは町に活気があることが重要ではないか。