図書館に、小林秀雄全集という本があったのだが、どうしてこれが「全集」なのかさっぱりわからない。
それはともかくとして「鎌倉」などの小文を読むに、
格別大したわけでもなく、いやいやしかたなく書いたオーラに満ちた普通の文章。
なんかいやいや書いた記事、いやいややった講演などがけっこう多い。
酔うと人に絡んだという、そんな言動がそのまま原稿用紙に残ったような文章も多い。
教科書に載れば本の売り上げにも影響するからと、不本意ながらも、掲載の依頼のはがきに全部「諾」と答えて返信したとか。
文芸だけで食っていくというのは、小林秀雄でもかくあるかと。
東京オリンピックより前の日本には、小林秀雄的な人は、たくさんいたのだろう。
今はかなり減った。
今の60代の人間が、定年でいなくなれば、まったくいなくなるに違いない。
そういう人間になりたいともまるで思わない。
昭和という時代に対するノスタルジーも、今はかなりなくなった。要するに、古き良き時代というには値しない、
でたらめな時代だったということだ。
戦前の日本には小野田少尉みたいな人が普通に、ざらに居たのだろう。
また日本の科学技術力も、国民のモラルも決して低くなかった。
逆にイギリス人やアメリカ人や中国人のていたらくは、目に余るものがあっただろう。
多少、勘違いしても、おかしくない状況だったのだと思う。
あくまで泥水をすする道を選ぶには、当時の日本人は志が高すぎたのではないか。
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