亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

枕の山3

散る花

  1. 風吹けど 散らでとまるに 行くものは 花見る人の 心なりけり
  2. 花さそふ 風に知られぬ かげもがな 桜をうゑて のどかにを見む
  3. 山さくら 霞のおくに 隠れゐて 吹きこむ風に ありと知らるな
  4. さくら花 夜の間の風も 知られぬを 明日とて人の 見にこざるらむ
  5. 桜花 けふまでも見に こぬ人を 明日とは待たず 散らば散らなむ
  6. 枝も木も よに朽ちやすき 桜かな 春咲く花の もろきのみかは
  7. かたをだに うつしおかばや 桜花 にほひなくとも 後も見むため
  8. いかでかは 風に桜の さわぐらむ 柳に吹くは のどけきものを
  9. さほ姫の かざしの花の 山ざくら 霞の袖に 散りかかりつつ
  10. きのふまで 積もれる雪と 見し花の 降るにまがひて けふは散るかな
  11. めでられむ 藤山吹の ためにとや 桜の花は はやく散るらむ
  12. さくら花 かくばかりとく 散るものと いつの神代に 定め初めけむ
  13. 飽かぬ色と みなせの神の みことのり いともかしこし 散るなさくらよ
  14. とく散ると 何思ふらむ さくら花 さかりを待たぬ 人もある世に
  15. ことしのみ 散る花のごと 思ふかな いつもとまらぬ ならひ忘れて
  16. 飽かなくに 桜の花の 散るを見て 春の歎きぞ もえ初めにける
  17. 咲くを待ち 散るを惜しむも 苦しきに なぞや桜を 思ひ初めけむ
  18. いのちあらば また来む春も 見るべきに 身にかへてなど 花を惜しまむ
  19. はじめあれば おはりある世の ことわりも 惜しき花には 思はれぬかな
  20. 飽かなくに いととく散るは 世の人を 歎かせむとて 咲けるさくらか
  21. 待つほどは 久しかりしを 咲きぬれば ことぞともなく 散る桜かな
  22. 桜花 散るがつらきに くらぶれば 待ちし思ひは 数ならぬかな
  23. さてもまた つひの別れを いかにせむ 惜しき桜は 散らでありても
  24. 頼まれぬ 憂き世のさがを 見せがほに はかなくも散る さくら花かな
  25. さくら花 咲けばほどなく 散るものを とはに見むごと 待たれつるかな
  26. 散ればまた いとど憂き世の 桜花 しばしは見つつ 忘れしものを
  27. はかなくて 散るはさくらの 心にも 人こそ知らね かなしかるらむ
  28. 桜花 散るこのもとに 立ち寄りて さらばとだにも 言ひて別れむ
  29. さくらばな よしや今年は 散りぬとも また咲く春を 忘るなよゆめ
  30. さくらしも 花の命の みじかきは ほかの木草に ねたまれてかも
  31. 桜花 さても飽かぬか こころみに ひと春残れ 時は過ぐとも
  32. 散りぬとも 一重づつ散れ 八重桜 七日八日の ほどは見るべく
  33. 別れする 人も桜の 散るを見ば 思ひうつりて 花や惜しまむ
  34. 鳥ならば もち引きかけて とどめまし 散り行く花は せむかたもなし
  35. 散りて行く 花の別れの 雁ならば また秋とだに 待たましものを
  36. 吹く風に そひ行く花を 呼子鳥 やよ呼び返せ 惜しくやはあらぬ
  37. 花の枝に 散るを許さぬ 関すゑて 鳴くうぐひすに もらせてしがな
  38. うぐひすも 声の限りは 鳴けや鳴け 我れも泣くぞよ 桜散るなり
  39. 鴬の はねにも尾にも かかれとも 涙こほらぬ 花のしらゆき
  40. ほかの木に ふりかかりても 花の雪 花としも見ず 散りぬと思へば
  41. 散る花の 雪しまことの 雪ならば 咲かむ春辺の 近づかましを
  42. 雪とだに 積もりて残れ いとせめて 惜しき桜の 花のかたみは
  43. 雪とだに 見てまし庭の さくら花 うつりも行くか 風のまにまに
  44. はかなくも 我がものがほに 見つるかな よそに散りゆく 庭のさくらを
  45. 桜花 散るを惜しめる よるよるの 夢路にだにも 残るとは見ず
  46. 今朝見れば みな散りにけり 山ざくら ふさに手折りて こしかひもなく
  47. 咲くことは 見に来る人に おくれしに 散るは先立つ 花のあやなさ
  48. 残りなく うつりも行くか 山桜 散るを見にとは 我れは来なくに
  49. 散りぬとも 我がうへに散れ 桜花 こよひは寝なむ 飽かぬ木陰に
  50. 散るさくら 色はしぼみて 変はるとも 袖につつみて もてやいなまし
  51. さくら花 散りかひくもる このもとは 惜しむ涙ぞ 雨と降りける
  52. △ 桜花 散る間をだにと 思へども 涙にくれて 見えずもあるかな
  53. △ 散る花を 見れば涙に かきくれて 夜か昼間か 夢かうつつか
  54. 花散れば しづ心なき 春の日を のどけきものと 思ひけるかな
  55. 散るころは 見る目のみかは 桜花 耳にもつらき 風の音かな
  56. 散るらむと 夜はすがらに さくら花 こころもさわぐ 風の音かな
  57. 朝まだき さそはれそむる 桜花 風や夜の間に 契りおきけむ
  58. 草も木も なびける御代に 君をおきて 風に従ふ さくら何なり
  59. 花はしも 散らむものとは 思はじを こころつよくも さそふ風かな
  60. いかにして しばしとどめむ 心なき 風にまかすは 惜しきさくらを
  61. ひさかたの 空に駆けりて 花散らす 山風防ぐ まぼろしもがな
  62. 山風に 桜の花の 散るころは 秋よりかなし 春の夕暮れ
  63. 咲けば散る 花のならひと 思へども なほ恨めしき 春の山風
  64. 咲く花を 何の仇とて 山風は 世に残さじと 吹き払ふらむ
  65. ひと木だに 形見に残せ さくら花 さそふは風の ならひなりとも
  66. 吹かぬ日も 散らでやはある 桜花 などひたすらに 風を恨みむ
  67. 吹く風よ 心にまかす 花ならば 散るをもとめよ まひはしてむを
  68. ほどもなし 春の暮れなむ 日までだに 桜の花よ 待ちて散らなむ
  69. さくら花 散らなむ後の 寂しさは 何に忘れて 春日暮らさむ
  70. 何を見て 来む春までは 過ぐさまし 形見もとめで 花の散りなば
  71. 夏も秋も 咲きなましかば 桜花 散るともかくは 惜しまざらまし
  72. 春し来ば またも桜は咲きなめと 散りし今年の 花はかへらじ
  73. このもとに なほ残りても 桜花 散りぬる色は 言ふかひもなし
  74. このもとに 朽ちなば朽ちよ 散るさくら よその土には なさじとぞ思ふ
  75. 散りはてし 花の梢を けさ見れば 心長くぞ 月は残れる
  76. 散り過ぎし さくら恋しき このもとに わすれ草をや 植ゑて見てまし
  77. いとどしく 忘られがたき 桜かな 思ひくまなく 散れるものから
  78. 急ぎしは 散りてくやしき さくらかな おそくはけふも 見るべきものを
  79. 桜花 惜しむかひなく 散りはてて 残るは人の 恨みなりけり
  80. きのふ来て 見てましものを くやしくも 山の桜は 散りにけるかな
  81. もみぢ葉は 散りてもそれと 見るものを などて桜の 雪となりけむ
  82. 飽かざりし 桜の花の かたみとて 見るもはかなき 峯の白雲
  83. 山里の いつともわかぬ 寂しさも 桜散りぬる ころの夕暮れ
  84. 残りても 春を春とも 思ほえず 桜散りての 後の日数は
  85. 先立ちし 桜の花を したひてや 春もほどなく 暮れて行くらむ
  86. 桜花 散りしなごりの 梢さへ あらぬ青葉に 変はり行くかな
  87. 散り過ぎし 春のさくらに おくれゐて 歎きの枝も しげるころかな
  88. 散りぬれば あやにめでたく 見し色も 夢まぼろしの 桜なりけり
  89. なかなかに 夢ならませば はかなくて 散るともさくら またも見ましを
  90. 咲くと見し 花も月日も 夢なれや 散りて流るる 春の山川
  91. 広き瀬に 袖の狭きを いかにせむ 流るる花を せきとどめても
  92. △ したはれて 花の流るる 山河に 身も投げつべき ここちこそすれ
  93. 世の中に さくらの花を 惜しまぬは 風と河瀬の 水にぞありける
  94. 絶えず咲く 浪の花こそ 水の沫と 消えし桜の 形見なりけれ
  95. 惜しかりし 心はなほぞ うつろはぬ 散りてほど経る さくらなれども
  96. 桜花 また咲くを見む 春までは 面影残れ 飽かぬ心に
  97. 散り過ぎし 花の盛りを また見せて 夢はうれしき ものにぞありける
  98. 散りにしを または見ましや 桜花 夢てふものの なき世なりせば
  99. さくら花 散りし木陰に 庵しめて 残る我が世は 経なむとぞ思ふ
  100. 跡もなく 散りてう月と 思ひしに うれしく残る 花もありけり
  101. 同じ色の 卯の花山の おそ桜 友待ちつけし 雪とこそ見れ
  102. 夏の来て 卯の花咲けば 今更に 消えし桜の 雪をしぞ思ふ

  1. めづらしと もしやとまらむ 散る花に 山ほとどきす 鳴かせてしがな
  2. 春をおきて 五月待ためや ほととぎす 桜てふ花 咲くと知りせば
  3. 春ならば 花見せましを ほととぎす さくらが枝に 来つつ鳴くなり
  4. をちかへり いかになかまし ほととぎす さくら咲くころ 来たらましかば
  5. 散りそめし 花おもほえて 絶え絶えに 今もさくらに 蛍飛び交ふ
  6. かけり来て さくらが枝に 飛ぶ蛍 散りにし花の 魂かあらぬか
  7. 山の端を とどろかしゆく 鳴神も 桜は踏まじ 夏さけりとも
  8. 暑くとも さくらの花の 水無月に 咲く世なりせば 風は待ためや
  9. 桜花 来て見る春の 山ならば いかに憂からむ ひぐらしの声

  1. さくら花 散らしし風を 秋立てば 恨めつらしと 人は言ふなり
  2. さくら花 散らしし風の やどりかと 思へばいとど 憂き萩の音
  3. 見るほどの なきにはあらず 桜花 一夜に限る たなばた思へば
  4. 同じくは 春のさくらの このもとに 咲かせてしがな 萩も尾花も
  5. 春日咲く 桜はみかと もも草は もものつかさと にほふ秋の野
  6. 松はあれど さくらは虫の 名にだにも 聞こえぬ秋の 野辺のさびしさ
  7. 桜花 かなしき秋の 夕暮れに 散らば命も 露とけぬべし
  8. さくら散る このもとならば なほいかに あはれならまし さを鹿の声
  9. くもりなき 秋のもなかの 月影に 桜の花を 見るよしもがな
  10. 桜には なほやけたれむ ひさかたの 月のかつらの 花は咲くとも
  11. 汝が宿の かつらの花と さくらとは いづれまされり 月人をとこ
  12. 咲くを見て 別れし春の 面影に 桜恋しき はつ雁のこゑ
  13. 立田姫 さくらいろにも 染め分けよ もみぢにまじる 花と見るべく
  14. さくらあれば もみぢ見に行く 山路にも 春おもほえて 立ち止まりつつ
  15. 来て見れば 秋の紅葉も 散りにけり 桜を憂しと など恨みけむ

  1. ならふかに さくらの本に 菊を植ゑて 盛り久しき 花を見せばや
  2. などとくは 散りし桜ぞ 散らざれば ふたたびにほふ 菊もありけり
  3. 長月に 咲かば桜も 菊のごと 散らで久しく にほひもやせむ
  4. △ はつしぐれ 降ればおもほゆ くれなゐの うす花桜 時ならねども
  5. 散りしける 春の花かと 見るまでに 桜の下に おけるあさしも
  6. 冬を浅み 待てど雪だに まだ見えず まして桜は 遠き山の端
  7. 桜花 散りて流れし 川風も また身にしみて 千鳥鳴くなり
  8. ほのかにも すがたを見せよ 春の花 峯の炭がま けぶり立つなり
  9. 夏も秋も 冬も桜の 散らであれな めづる心の 限りなければ
  10. 吹く風の さそはぬ年も 暮れ行くか 花の別れも きのふと思ふに
  11. 春立ちて 時近づけば さくら花 いよいよ遠き こぞの面影
  12. 春の来て 霞を見れば 桜ばな また立ちかへる こぞの面影
  13. 子の日には 桜も引きて 植ゑて見む 松にならひて 千世を経るかに

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