特務内親王遼子2

CGをすべて clip studio と blender に移行して、 autodesk sdk 由来のプラグインとかも使わずに、
まあ完全商用利用可能な態勢が整ったんで、 せっせと続編書いてCGも描いて、 kindle で出すことにした。

同人出版のラノベに見た目は非常に近いが、 内容は全然ラノベではない。 「青春ラブコメ・ハーレムもの」に分類することも可能かもしれないが、 たぶん違うと思う。 どちらかと言えば近代アジアの軍事・政治ものというか。 『ジャッカルの日』とかそんな感じ?

遼子のモデルは川島芳子なんですけどね、 バレバレだけど。 安彦良和の『虹色のトロツキー』の影響を受けてないとも言いがたい。 タプイェンなんて麗花の丸ぱくりだと言われればそうかもしれん(麗花は李香蘭こと山口淑子がモデルであるという)。まあそこはオマージュってことで。いずれにせよ『虹色のトロツキー』なんてマイナーな漫画、一般人が読んでおもしろいともおもえんよなあ。

世の中に受け入れてもらえるのかどうかしらん。ていうか、変に狙い過ぎ、はりきり過ぎてて外してなきゃいいなと思う。

まだ続きがあるんで、実はストーリーはもうラストまでだいたい考えてある。勘の良い人(近代中国史に詳しい人)ならもしかすると部分的には予測つくかも。完全なフィクションですがね(一応のお断り)。『虹色のトロツキー』のオチとはだいぶ違うと思う。まあ、これまで書いてきた小説の同工異曲なんで、類推は可能なんだが、そこまで読んでくれている読者がいるとも思えん。

安彦良和はおもしろいよね。『王道の狗』『三河物語』『クルドの星』あたり。『麗島夢譚』は連載中だが、微妙。安彦良和はおもしろいのとおもしろくないのがあるから困る。日本神話ものはたいていおもしろくない。近代史がわりとよく、古代史や神話ほどつまらない傾向がある。『アリオン』も話としてはつまらない。『アレクサンドロス』は読んでみたいがつまらなかったらどうしようって感じ。外れなにおいがする。

青野春秋の謎

改めて、俺はまだ本気出してないだけを3巻一気読みしてみた。電車の中ヒマだったので何度も何度も読み返した。そしてやっぱしゃれにならんマンガだなとは思いつつ、青野春秋という作家についていろんな疑問がわいてきた。マンガ自体は非常に良く出来ているので、われわれはついこれは作者の自伝的なマンガなんじゃないかと錯覚してしまうが、それは巧妙なるやらせのたぐいであって、作者は40のおっさんではなくて20代の女性かもしれない、とさえ思える。イキマンという作家発掘養成のための新人賞、いや、イッキという雑誌そのものをもり立てるための壮大なやらせなのかもしれない、ヘタウマ風の画風さえやらせであり、新人賞当時の画力を編集者らに無理矢理保持させられているだけなんじゃないかとさえ思える。いや、それならそれでもかまわんのだが、だまされたとわかったときのショックをできるだけ和らげたいと思うのだった。

ははあ。なるほど。ネットに散らばっている情報を集めるとおぼろげに見えてくる。イキマン「走馬灯」受賞時2005年11月に青野27才。素直に逆算して1978年生まれ、現在30才くらい。性別不明。2001年ヤングマガジンにて「スラップ スティック」が第45回ちばてつや賞優秀新人賞受賞、とあるがこのとき推定23才。10代から漫画家のアシスタントやってると。まあ、作者はごく普通の漫画家だわな。で、女性であればおそらく作者は鈴子に近い立場。もしくは読み切り「生きる」に出てくる女性。男性ならマクドナルドのバイトの田中とかか。

「走馬灯」掲載が06年2月。「いきる」掲載が07年1月。読み切り「俺はまだ本気出してないだけ」掲載が07年3月。連載開始が07年5月。

第3巻の発行が三ヶ月ほど遅れたのは作者の体調不良によるらしい。

同じイキマン出身の福満しげゆきは作家本人がそうとう露出しているのにくらべて青野はやはり謎に包まれている。

日露戦争物語

江川達也が「BE FREE」「ラストマン」「東京大学物語」と来て、今は「日露戦争物語」。
教育モノが好きなんだね。で、今は日清戦争にさしかかったところ。

江川達也が「王道の狗」を読んで影響を受けていたかどうかは微妙。金玉均の描き方がまるで違うところをみれば、おそらくは読んでないか。では「坂の上の雲」を読んでいるかといえば、もちろんそうだろう。司馬遼太郎は「坂の上の雲」を原作とした映画やらを禁じているそうだが、原作というほど似てはいない。しかし秋山真之が主人公なところはそっくりだがなー。

「坂の上の雲」では金玉均についての描写はあまりなかったような気がする。一応全部通して読んだはずだが。

江川達也「日露戦争物語」司馬遼太郎「坂の上の雲」安彦良和「王道の狗」を読み比べるというのはなかなかおもしろいんだが。「坂の上の雲」は超ベストセラーで、「日露戦争物語」もそこそこメジャーだと思うが、ミスターマガジンに連載された「王道の狗」を読んでる人というのはきわめてまれだろう。安彦良和は最初ガンダムのキャラクターデザイナーとして現れ、それからアリオンという空想的というか浪漫的なギリシャ神話ネタの漫画を書いた。はっきり言ってアリオンは大した漫画ではない。ところがギリシャ神話を取材にギリシャに行って、それからトルコでクルド人というのを知って、「クルドの星」という漫画を書いたのだが、これがなかなかの傑作。またトルコで日本近代史というものに開眼したのだと思われる。日本神話にも関心を持ち神武天皇とか大国主の命の話も書いているが、こちらはどうにもこうにも。さらに幕末から日清戦争までを書いた「王道の狗」は傑作だと思うが、ノモンハン事件あたりを書いた「虹色のトロツキー」はかなり異常で難解。割と好きなのは「三河物語」で、大久保彦左衛門と一心太助が大阪の陣に徳川方で参戦するという話。これはメディア芸術祭か何かで賞をもらってたようだが、知名度はほとんどないんじゃないか。

「王道の狗」は前振りをざっくり省略すれば、自由民権運動で投獄され脱獄した主人公が金玉均の用心棒となり、その遺志をついで日清戦争後も朝鮮でゲリラ活動を繰り広げるというもの。「日露戦争物語」みたいに読んでわかった明治時代、みたいな書き方にはなっていない。

なんかとりとめのない話になってしまったな。

で、金玉均もそうだが陸奥宗光がまた。PHP文庫に岡崎久彦「陸奥宗光」というのがあり、また新潮文庫に角田房子「閔妃暗殺」というのがあるのだが、読んでも読んでもようわからんのだが、その中でも江川達也の描写というのはなかなか的確でわかりやすいなあと思った。彼はそうとうに努力していると思う。

ただ、江川達也の書き方だと、陸奥宗光も金玉均も、日本と清が一戦交えることで、清、朝鮮でそれぞれ日本の明治維新のような改革が進んで、日本、清、朝鮮の三国によって西洋による東洋の侵略をくい止めることができる、と考えていたことになる。それでいいんだろうか。