新撰和歌 巻第三 別・旅 荓二十首

> 181 たちかへり 稲葉の山の みねにおふる まつとしきかば 今かへりこむ

古今365、題知らず、行平

> 182 あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさの山に いでし月かも

古今406、「もろこしにて月を見てよみける」「この歌は、むかしなかまろをもろこしにものならはしにつかはしたりけるに、あまたのとしをへてえかへりまうてこさりけるを、このくにより又つかひまかりいたりけるにたくひてまうてきなむとていてたちけるに、めいしうといふ所のうみへにてかのくにの人むまのはなむけしけり、よるになりて月のいとおもしろくさしいてたりけるを見てよめるとなむかたりつたふる」安倍仲麿

> 183 おとは山 こだかくなきて 郭公 きみがよはひを をしむべらなり

古今384「おとはの山のほとりにて人をわかるとてよめる」貫之

> 184 ゆふづくよ おぼつかなきを たまくしげ ふたみのうらは あけてこそ見め

古今419「たじまのくにのゆへまかりける時に、ふたみのうらといふ所にとまりてゆふさりのかれいひたうべけるに、ともにありける人人のうたよみけるついてによめる」藤原兼輔

> 185 人やりの みちならなくに おほかたは いきうしといひて いざとまりなむ

古今388「山さきより神なひのもりまておくりに人人まかりて、かへりかてにしてわかれをしみけるによめる」源さね

> 186 わたのはら やそしまかけて こぎ出でぬと 人にはつげよ あまのつり舟

古今407「おきのくにになかされける時に舟にのりていてたつとて、京なる人のもとにつかはしける」小野篁

> 187 かつこえて わかれもゆくか あふ坂は 人だのめなる 名にこそ有りけれ

古今390「藤原のこれをかがむさしのすけにまかりける時に、おくりにあふさかをこゆとてよみける」貫之

> 188 都いでて けふみかのはら いづみがは 川かぜさむし ころもかせやま

古今408、題知らず、読み人知らず。

> 189 ゆふぐれの まがきはやまと みえななむ 夜はこえじと やどりとるべく

古今392「人の花山にまうてきて、ゆふさりつかたかへりなむとしける時によめる」遍昭。

> 190 かりくらし たなばたつめに やどからむ あまのかはせに 我はきにけり

古今418「これたかのみこのともにかりにまかりける時に、あまの河といふ所の河のほとりにおりゐてさけなどのみけるついでに、みこのいひけらく、かりしてあまのかはらにいたるといふ心をよみてさかづきはさせといひければよめる」業平

> 191 わかれをば やまのさくらに まかせてむ とめむとめじは 花のまにまに

古今393「山にのぼりてかへりまうできて、人人わかれけるついでによめる」幽仙法師

> 192 このたびは ぬさもとりあへず たむけ山 紅葉のにしき かみのまにまに

古今420「朱雀院のならにおはしましたりける時にたむけ山にてよみける」菅原道真

> 193 あかずして わかるるなみだ たきつせに いろまさるやと しもぞふるらむ

古今396「仁和のみかどみこにおはしましける時に、ふるのたき御覧じにおはしましてかへりたまひけるによめる」兼芸法師

> 194 名にしおはば いざこととはむ みやこ鳥 我が思ふ人は ありやなしやと

古今411「むさしのくにとしもつふさのくにとの中にあるすみだ河のほとりにいたりてみやこのいとこひしうおぼえければ、しばし河のほとりにおりゐて、思ひやればかぎりなくとほくもきにけるかなと思ひわびてながめをるに、わたしもりはや舟にのれ日くれぬといひければ舟にのりてわたらむとするに、みな人ものわびしくて京におもふ人なくしもあらず、さるをりにしろきとりのはしとあしとあかき河のほとりにあそびけり、京には見えぬとりなりければみな人見しらず、わたしもりにこれはなにどりぞととひければ、これなむみやこどりといひけるをききてよめる」業平

> 195 わかるれど うれしくもあるかな 今夜より あひ見ぬさきに なにを恋ひまし

古今399「かねみのおほきみにはしめて物かたりして、わかれける時によめる」躬恒

> 196 夜をさむみ おくはつしもを はらひつつ くさの枕に あまたたびねぬ

古今416「かひのくにへまかりける時みちにてよめる」躬恒

> 197 むすぶ手の しづくににごる やまの井の あかでも人に わかれぬるかな

古今404「しがの山ごえにて、いしゐのもとにてものいひける人のわかれけるをりによめる」貫之。
拾遺1228「しがの山ごえにて、女の山の井にてあらひむすびてのむを見て」

「あかでも」は閼伽?

> 198 から衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ

古今410「あづまの方へ友とする人ひとりふたりいざなひていきけり、みかはのくにやつはしといふ所にいたれりけるに、その河のほとりにかきつばたいとおもしろくさけりけるを見て、木のかげにおりゐて、かきつばたといふいつもじをくのかしらにすゑてたびの心をよまむとてよめる」業平

> 199 いのちだに こころにかなふ 物ならば なにかわかれの かなしからまし

古今387「源のさねかつくしへゆあみむとてまかりけるに、山さきにてわかれをしみける所にてよめる」しろめ

> 200 したおびの みちはかたがた わかるとも ゆきめぐりても あはむとぞ思ふ

古今405「みちにあへりける人のくるまにものをいひつきて、わかれける所にてよめる」友則

> 201 きたへゆく かりぞなくなる むれてこし かずはたらでぞ かへりつらなる

古今412「ある人、をとこ女もろともに人のくにへまかりけり、をとこまかりいたりてすなはち身まかりにければ、女ひとり京へかへりけるみちにかへるかりのなきけるをききてよめる」読み人知らず

「かへりつらなる」→「かへるべらなる」

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