> 161 わが君は 千代にましませ さざれ石の いはほとなりて こけのむすまで
> 162 なくなみだ 雨とふらなむ わたり川 みづまさりなば かへりくるがに
> 163 わたつ海の はまのまさごを かぞへつつ 君がいのちの ありかずにせむ
> 164 ちのなみだ おちてぞたぎつ しら川は 君が代までの 名にこそありけれ
> 165 しほのやま さしでのいそに すむ千鳥 君が御代をば や千代とぞなく
> 166 うつせみの からを見つつも なぐさめつ ふかくさのやま けぶりだにたて
古今831 僧都勝延(ほりかはのおほきおほいまうち君身まかりにける時に、深草の山にをさめてけるのちによみける、空蝉はからを見つつもなぐさめつ深草の山煙だにたて)。
> 167 かめのをの 山のいはねを とめておつる たきのしらたま 世世のかずかも
> 168 ねても見ゆ ねでもみえけり おほかたは うつせみのよぞ ゆめにはありける
> 169 いにしへに ありきあらずは しらねども ちとせのためし きみにはじめむ
> 170 あすしらぬ わが身なれども くれぬまも けふは人こそ こひしかりけれ
> 171 ふしておもひ おきてかぞふる よろづ代を 神ぞしるらむ 我が君のため
> 172 花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれをさきに こひむとか見し
> 173 わすれがたき よはひをのぶと きくの花 けさこそ露の おきてをりつれ
> 174 なき人の やどにかよはば 郭公 かくてねにのみ なくとつげなむ
> 175 かすが野に わかなつみつつ よろづ代を いはふ心を 神ぞしるらむ
> 176 かずかずに われをわすれぬ ものならば 山のかすみを あはれとは見よ
> 177 君がため おもふ心の 色にいでて 松のみどりを をりてけるかな
> 178 露をなど はかなきものとおもひけむ 我が身もくさに おかぬばかりを
> 179 見えわたる はるのまさごや あしたづの ちとせをのぶる かずとなるらむ
> 180 さきだたぬ くいのやちたび かなしきは ながるるみづの かへりこぬなり